マイスターです。
学園祭の季節ですね。
学生のエネルギーの「向かい先」を知る上で参考になると思いますので、高校生の皆さんはぜひ、気になる大学の学園祭に行ってみてください。
高校生に限らず、近所に大学があるという方は、普段はあまり接点がない各大学の研究・教育成果に触れられるという点で、ご近所の学園祭に行かれるのもオススメです。
学園祭に関するニュースの中で、↓こんな記事が目にとまりました。
来年度からの学生募集停止を発表している聖トマス大(兵庫県尼崎市若王寺)で11月3日、学園祭「起志回生祭」が行われる。「起死回生」をもじったタイトルには、大学を活気づける方向へ、学生らの志を向けたいとの思いを込めたといい、主催の大学祭実行委員会は「寂しく大学の歴史を終わらせるようなことはしたくない。学校のパワーを感じて」としている。(略)実行委によると、予算も例年より少ないといい「知恵を絞った内容で勝負する」という。
(「募集停止でも活気を!聖トマス大、起志回生祭 3日開催…兵庫・尼崎」(読売オンライン)記事より)
母校が無くなるという厳しい現実の下で、学生の皆さんが見せる意地。
「起志」の言葉が力強いです。
ここで得られた経験は、卒業後も活かされると思います。
今日も、ここ一週間ほどの教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【流行モノに集中?】
■「5大学7大学院の新設認可を答申 文科省審議会」(asahi.com)
文部科学省の大学設置・学校法人審議会は27日、来春の開設を目指す公私立の大学5校と大学院7校の新設を認めるよう川端達夫文科相に答申した。新たな学部の設置は12校13学部、新学科は大学が4校、短大が1校、通信教育は1校が認められた。
(上記記事より)
設置される学部学科、研究科の内訳は↓こちらに掲載されています。
■「平成22年度開設予定の大学の設置等に係る答申について」(文部科学省)
看護、医療、保健、栄養、子どもといった、流行の学部名が並びます。
こうした、その時々の「人気学部・人気学科」が一気に作られるのは、今や日本の大学業界の大きな特徴となっています。
好意的に見れば、業界の中でマーケティング的な手法の導入が進んだ結果だと言えます。
ただ、教育的な理念・信念よりも「とにかく大学を作りたい。だったら人気学部がいい」という発想が優先された結果なのではないか、という印象も。
↓開設ブームの後、6年制化された薬学部は、受験生集めに苦労されているようです。
■「6年制薬学部、人気低迷」(asahi.com)
看護、医療、子ども(教育)といった分野でも、同様のことが起きる可能生はゼロではありません。
そうなったときにどうするか、も考えた上で開設を検討された方が良いように思われます。
【国立大学、新型インフルに向けて救済措置の方針。】
■「国立大入試、追試は本試験の1週間後 新型インフル対策」(asahi.com)
新型インフルエンザにかかり、来年度の国立大学の2次試験を受けられない受験生への対応を検討していた国立大学協会は26日、各大学が本試験のおおむね1週間後に追試験を実施するなどの救済措置をとる方針を決めた。
10年度だけの特例措置で、基本的に新型インフルエンザ患者と疑われる人が対象。本試験の1週間前から当日までに診断書や追試験受験申請書を提出させるなどして認定する。ただ、方針に拘束力はなく、追試験を実施するかを含め、具体的な日程や方法は、各大学の判断にゆだねる。
(上記記事より)
猛威をふるう、新型インフルエンザ。
学級閉鎖などの対応をとった小中高校、幼稚園は、既に1万3千校を越えているそうです。
そんな中、国立大学も、追試の実施を含む救済措置をとる方向で調整している様子。
ただし、すべての大学がこの方針通りに対応するかはわかりません。
入試問題の作成にかかる労力は大きく、大学も対応には頭を悩ませるところだと思います。
ちなみに、新型インフルエンザに関連し、↓こんな話題もありました。
■「医学と獣医学を『融合』 宮崎大、研究科を来春開設へ」(asahi.com)
宮崎大学が、新型インフルエンザやエイズ、牛海綿状脳症(BSE)など、人間と動物に共通する感染症対策の研究など目的とし、日本初、医学と獣医学を融合させた研究科を開設するそうです。
ここ数年、動物の名前が入った感染症の流行をよく聞くようになりましたし、こうした研究機関の研究成果に期待がかかるところです。
【大スターも最初は大変。】
■「大学院卒でも年収180万円からスタート。超シビアな“ハリウッド給料事情”《ハリウッド・フィルムスクール研修記8》」(東洋経済)
日本の大学を卒業された後、アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI/米国映画協会)大学院にて、プロデュースを専攻されているという日本人の方の記事です。
ハリウッドの映画界には、USC(南カリフォルニア大学)やUCLAといった大学で映画について学び、活躍されている映画人の方も少なくないという印象があります(というか、マイスターは、勝手にそんなイメージを持っていました)。
……が、日本と同じく、ある意味では日本以上に、現実はなかなかシビアな様子。
アメリカのフィルム・スクールという、日本人にとってあまりなじみのない世界を垣間見られる記事で、面白かったので、ご紹介を。
この連載の、他の記事もオススメです。
【教え合って問題解決。】
■「『スクール・サポート』で教員採用試験合格者増へ――白鴎大学教育学部」(大学プレスセンター)
地元小山市の小・中学校に学生を派遣する「スクール・サポート」効果により、白鴎大学の教員採用試験の合格者が過去2年に比べ大幅に増加した。こうした中、同大では下野市(栃木県)および古河市(茨城県)でも同様の支援事業を始めるため、このたび各市の教育委員会と協定を締結した。
(上記記事より)
大学のプレスリリースから。
白鴎大学では、教育学部の学生を市内の小・中学校に派遣し、チーム・ティーチングの一員として授業担当の先生をサポートする「スクール・サポート」事業を展開。
授業だけではなく、給食や放課後学習、体験活動、部活動などの場でも様々な支援を行い、現場でも戦力として評価されているとのことです。
複数の指導者がクラスを担当する「チーム・ティーチング」は、学級崩壊などに悩む教育現場で注目されている手法ですが、ただでさえ人手不足の学校では、実現は困難。
予算にも限りがあるでしょうし、ボランティアを頼むにも、「誰だって良い」という訳にはいきません。
しかし大学から派遣される教育学部の学生であれば、そうした様々な問題をクリアできます。
学生にとっても、実践的な経験になるでしょう。
結果として、教員採用試験の合格者が大幅に増えたという事実も、それを証明しているようです。
児童生徒、学校、学生が支え合いながら、学び合っている訳ですね。
ふたつの事業を組み合わせることで、それぞれの悩みを解決し、お互いにメリットを生み出す。
他の大学にもぜひ取り入れてほしい、優れた取り組みだと個人的には思います。
【中国版アイビー・リーグ発足へ。】
■「中国版『アイビーリーグ』」、発足へ」(科学技術振興機構・研究開発戦略センター デイリーウォッチャー)
10月12日、北京大学、清華大学、浙江大学、哈爾濱(ハルビン)工業大学、復旦大学、上海交通大学、南京大学、中国科学技術大学、西安交通大学の9校(C9)は、相互協力・交流の強化、教育資源の相互補完、ハイレベル人材の育成等を図るため、「一流大学人材育成協力・交流協議書」を締結した。中国版の「アイビーリーグ」結成に向けて第一歩を踏み出した。
(略)中国版「アイビーリーグ」の結成は国内の著名な大学の悲願であり、上述の9大学(C9)は、2003年の「一流大学の構築」シンポジウムの合同開催から7年かけて議論を深めてきた。今回の協定は、「9校連盟」というプラットフォームを基にして、学長の遠隔シンポジウムの定期的な開催、教育資源の共有等も実現可能になる他、大学の自主イノベーション能力の向上、世界一流大学づくりの推進等にも重要な意義があると高く評価されている。
(上記記事より)
中国の有力大学の間で、上記のような計画が進められているそうです。
具体的には、単位の相互認定や、研究者の育成、通信教育プラットフォームの開発などが想定されています。
ちなみに、以前の記事でもご紹介しましたが、アメリカのPh.D取得者の出身校として多いのは、第3位のカリフォルニア大学バークレー校を抜いて、一位が清華大学、二番が北京大学となっています。
(過去の関連記事)
・アメリカ 博士号(Ph.D)取得者の出身校トップは清華大学、北京大学
アイビー・リーグを含むアメリカの博士課程は、清華大学や北京大学を卒業した中国人の学生を数多く送り出しているわけです。
そんな研究者達が母国に戻り、これから上記のような計画を支えていくのでしょう。
各種の国際的な大学ランキングでも、中国をはじめ、アジアの大学が存在感を増してきています。
(ちなみにアメリカのPh.D取得者の出身校、第4位は韓国の国立ソウル大学です)
そんな中、日本は高等教育・研究において、どのような国家戦略を描けるのか。
今が勝負どきです。
以上、ここしばらくのニュースクリップでした。
それでは今週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。