マイスターです。
およそ3年前の2006年9月7日に、↓こんな内容のニュース記事がありました。
「祝親王ご誕生」の看板が設置され、商店街の人たちが通行人に日本酒を振る舞った。午後7時には、よさこいや津軽三味線が披露され、祝賀ムードはさらにヒートアップ。用意された日本酒の一升瓶約20本は、あっという間にカラとなった。目白商業協同組合の青木滋理事長(57)は「目白としては町を挙げてお祝いします。また目白にお越しください」と祝意を表した。
(「『列島祝賀ムード一色!学習院大学の地元、目白では振舞酒』(サンスポ.COM)記事より)
そう、前日の6日、秋篠宮紀子妃殿下が親王殿下をご出産されたことを受けての、目白での出来事です。
記事のタイトルにある通り、目白と言えば、「学習院大学の地元」。
「また目白にお越しください」という目白商業協同組合理事長の方のコメントは、
<将来は、学習院にご進学される>
……という前提が、揺るぎないものであるということから発せられているものと思われます。
悠仁親王殿下は、皇位継承権第3位ということで、また特別な位置にいらっしゃるわけですが、そうでなくても皇族の方々は、暗黙の了解(?)で「学習院」(大学だけでなく、高校までも含む)で学ぶのが慣例とされていました。
「常識」になっていた、といっても良かったかもしれません。
学習院は、もともと華族の子弟のための学校として、文部省ではなく宮内省の管轄下に置かれ、「学習院学制」など、他とは異なる根拠法によって運営されていた学校。
皇族の方々が学習院に進学されるというより、「そういった方々のために学習院がつくられた」と言った方が正しいような、これまでの歴史があります。
現在はもちろん、学習院は一般に開かれており、大学もその学術研究水準の高さ、学究志向の学風で社会から高い評価を受けています。
ですが、今でも「御学友」なんて言葉がメディアに登場するような、ちょっと特別なニュアンスを保ち続けているのも事実。
そんな中、ちょっとずつ、「慣例」が変わってきているようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「眞子さまが国際基督教大に合格 AO入試、教養学部進学へ」(47NEWS)
宮内庁は5日付で、秋篠宮家の長女眞子さま(18)=学習院女子高等科3年=が国際基督教大(ICU、東京都三鷹市)の特別入学選考(AO=アドミッション・オフィス入試)に合格したと発表した。来年4月、教養学部アーツ・サイエンス学科に進学する予定で、皇族のICU入学は初めて。
ICUによると、書類審査やグループ討論で選考するAO入試は、同大を第1志望とする受験生が対象。志願者207人に対し合格者は59人だった。
宮内庁によると、ICUが幅広く一般教養や語学を学んだ後、専攻を決めるカリキュラムを採用していることから、秋篠宮ご夫妻と相談した上で受験を決めた。眞子さまの誕生日の10月23日に合格発表があったという。
ICUは「一般の受験生と同じ条件で選考した。教育理念に共感していただいたと受け止めている」としている。
(上記記事より)
■「眞子さま、国際基督教大学に入学へ」(TBS News i)
眞子さまは、現在、学習院女子高等科の3年生ですが、宮内庁によりますと、自身の希望で、先月、国際基督教大学の特別入学の選考枠を受験し、書類選考とグループディスカッションなどの面接試験に合格しました。
国際基督教大学は理系・文系の垣根なく幅広い分野を自由に学べるカリキュラムで、ハイレベルな英語教育でも知られています。
眞子さまは英語の勉強に力を入れ、専門を決めずに様々な一般教養を学びたいという考えから、学習院大学には進学せず、国際基督教大学への入学を希望していたということです。
(上記記事より)
「理系・文系の垣根なく幅広い分野を自由に学べるカリキュラムで、ハイレベルな英語教育」……と、紹介されているICU。
マイスターの認識では、ICUは、アメリカの伝統的なリベラルアーツ・カレッジの教育環境やシステムを、かなり早い段階から採り入れ、実践してきた「リベラルアーツ教育」の大学です。
1学年620名という小規模なサイズ。厳格なGPA制度。
学生1人あたりの年間貸出冊数は年間62.2冊で、全国平均8.6冊の約7.2倍(ICUのサイトより)。
これは、譜面貸し出しの多い音大などを除けば、他を大きく引き離して日本一の冊数です。
誰もが顔見知り、というコミュニティの中で、アメリカの大学生のようにがっつりと勉強。
ディスカッションなども多い授業で、広く物事を批判的に考察する能力を身につける大学。
記事に付け加えるICUの説明としては、こんなところになるのかなと思います。
さて、相手が皇族の方であるかどうかはさておき、
「英語の勉強に力を入れ、専門を決めずに様々な一般教養を学びたい」
……と受験生から聞かれたら、ICUの名を挙げる人は少なくないでしょう。
少なくとも「この質問内容」で、学習院大学や学習院女子大学を最初に挙げる方は、少数派だと思います(学習院も英語教育には力を入れていますが、大学の個性をどこに置くかという点で……)。
最近では、高円宮家の長女承子さまが留学の後、早稲田大学・国際教養学部に。
三女絢子さまが城西国際大学・福祉総合学部に進学されています。
学習院大学や学習院女子大学も良い大学ですが、上記の3大学もまた、学習院大学とは違った良さを持っています。
それぞれやりたいこと、学びたい内容、求める環境を選んだ結果、「違った良さ」を選ばれただけのことでしょう。
「大学は、やりたいことで選ぶ」。
この原則は、誰にとっても同じように大事だというだけの話ではないでしょうか。
マイスター個人としては、他の大学生の方々と同様に、応援したいです。
それに、学習院の学風も素敵ですが、皇族の方々が様々な環境の良さを体験されるのも、意味があることだと思いますし。
もっとも、皇族の方々が学習院以外の大学に進学される例が出てきても、学習院の特別な存在感や、長い歴史を通じて培われた魅力はまったく変わらないでしょうし、変える必要もないと思います。
そんなことを、多くの方が改めて考えるきっかけとなるニュースだったかもしれませんね。
蛇足かもしれませんが、もうひとつだけ……。
今回、眞子さまが「AO(アドミッションズ・オフィス)入試で合格された」ということで、その内容や難易度について色々と言及されているニュースやブログも少なくないようです。
難易度については、そもそも一般入試とAO入試では見ている学力の種類が違うので、単純に比較をすること自体、あまり意味はありません。
ただ、「AO入試は簡単だ」と思っている方がもしいらっしゃるなら、それは大きな間違いです、とだけは言っておきたいと思います。
特にICUのAO入試は、難しいです。
どんな選考をするのか、詳細が↓こちらのコラムにありますので、興味のある方はよろしければどうぞ。
■「国際基督教大学特別入学選考」(AO・推薦入試対策 志望理由書編 【早稲田塾】)
まず、評定平均が4.1以上ないと、出願すらできません。
(そういう意味では、一般教科の学力もしっかり見ているわけですね)
ちゃんと高校までしっかり勉強して、かつ普段から、身の回りのことや社会全体のことまで深く考察しており、自分の将来のことを見据えて、しかもそれをちゃんと他人に発信し、やりとりできる高校生でないと受からない、そんなAO入試です。
ICUは一般入試の方も、「入学後にICUで優秀な成績を修められる学生かどうか判断する」という観点で、かなり合理的につくられているのですが、AOも同じ観点で、良くできているのではないでしょうか。
「AO=簡単」というのは、一部のマスメディアがつくりだし、いまでも何かと便利に活用されている風説のようです。
確かに、AOを単なる学生集め、青田買いのようにしか使えていない大学も一部にあるのは事実だと思いますが、ICUのような大学の場合、全然、簡単じゃないですよ。
(もし簡単だったら、入学後にICUのハードな学習環境に対応できないと思います……)
いまだにAO入試って、誤解されているんだなぁ、と思います。
以上、様々な報道を見て、そんなあれこれを思ったマイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。