「博士は599$、カード決済なら5日で完成」 アメリカのディプロマ・ミル

マイスターです。

この数年で、日本でもかなり知られるようになってきたと思われる、ニセ学位問題。
主にアメリカに存在している、「ディプロマ・ミル(ディグリー・ミル)」です。

(過去の関連記事)
・アメリカで流通する「ニセ学位」(2005年10月04日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50064702.html
・「米博士号取得者の6.6%、非認証大学で取得」?(2007年08月24日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50336512.html

上記のように、本ブログでも何度かご紹介して参りましたが、実際の雰囲気を伝えるものとして、興味深い記事がありました。

↓韓国メディアの報道です。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「『博士は599$、カード決済なら5日で完成』虚偽学位業者、米に数百社」(東亜日報)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=060000&biid=2007082207638
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「クレジットカードで決済すれば5日以内に学位を送る。費用は学士号499ドル、修士号499ドル、博士号は599ドルだ。3種類の学位を一度にセットで注文すればディスカウントもできる。本来は1597ドルだが、1038ドルでできる」

米国ロチビル大学の入学相談官(advisor)は憚ることがなかった。20日に記者が電話をかけ「インターネットで学校のホームページを見たが信じられない」と尋ねると、彼は自信をもって話した。

「ホームページの内容通りだ。授業は聞く必要もない。ロチビル大学は『人生経験』を重視する。3年以上の職場での経歴さえあれば学士の学位を与える」

ロチビル大学は米国のほとんどの州政府教育部がウェブサイトに掲示した「学位非認可大学」731校の1つだ。米国高等教育認証協議会(CHEA)の認証が受けられなかったこれらの大学の学位使用は、テキサス、オレゴンなど多くの州で禁止されている。

(略)現在、米国内には数百社(一部では1000社以上と試算)の虚偽学位、または非認可学位授与業社が盛業中だ。

米会計監査院(GAO)が2004、2005年に実態調査を行った後、しばらくの間下火だった「学位製造所(diploma mill)」はインターネット、特に迷惑メールを強力な顧客誘致の手段とし、執拗に誘惑の手を伸ばしている。年間の売上高規模が5億ドルに達するという試算もある。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

というわけで、なかなかショッキングな書き出しです。

噂には聞いておりましたので、内容としては特に驚くことはないはずなのですが、こう堂々とビジネストークされると、やっぱりたじろぎますね。

迷惑メールを顧客誘致の手段にして……って、もはやなりふりなどかまっていられないという感じです。

ちなみに冒頭でご紹介した過去の記事にも掲載しましたが、マイスターのメールアドレスにも2年前の時点で、↓こんな迷惑メールが届いたりしておりました。

diploma

最近はあまり見かけませんが、それは単にパソコンの迷惑メールフィルタが良い仕事をしてくれているだけであって、きっと実際には世の中に、大量に流通しているのでしょう。
(面白いニセ学位勧誘メールを受け取った方は、教えてくださいな)

しかし、こうした学位って、一体どういう人が「買って」いるのでしょう。
気づかず取得した人もいるかもしれませんが、「偽物」と分かった上で購入している人も多いはず。
どのあたりに需要があるのでしょうか。

上記の記事では、↓このように述べられています。

これらの学位製造業者がねらう主な米国人顧客層は、学位がなくて昇進や転職に困っている会社員たちだ。しかし韓国、日本、台湾など経済的余裕のあるアジア圏の顧客たちも主なマーケットだと大学の関係者らは話す。

実際に、ロサンゼルス地域のハングル店電話帳には数十校の大学が載っている。留学生のためのビザ(I-20)書類を発給してくれる語学院形式の学校の他にも、有名大学と類似の名前で「米国大学の卒業証書」を販売する所が多い。オンライン教育を掲げるこれらの学校の中には、マンション何室かが大学のキャンパスという所もある。

ニューヨークの名門コロンビア大学(Columbia University)と似た名前のコロンビアステート大学(Columbia State University)の共同運営者で、2004年に詐欺の疑いで有罪判決を受けたロリエ・ジェラルド氏は法廷証言でこのように話した。

「教授も、教材も、カリキュラムも、教育施設もない。学士学位の過程は本1冊を読んで可能な分量の要約本を送ってくれば学位を与えた。修士課程はそれに6ページのレポート、博士課程は12ページのレポートさえ送ってくれば学位を与えた。うまくいくときは1学期に600万ドルを超える売上げを記録した」

(上記記事より)

うーん、なるほど。日本を含んだアジアも、優良顧客なのですね。

最近では日本でもこうした学位の問題が知られるようになってきましたが、数年前までは、「アメリカで学位を取りました!」と言えば、おぉ~と信じた人も多かったのではないかと想像します。
いつかはばれると思いますが、それでも購入した学位のおかげで「499ドル」以上のリターンを得た人はいるでしょう。
だから、こういう商売が無くならないのですね、きっと。

ディグリー・ミルを無くすには、やはり、こういったインチキ学位の存在を、世の中に広く周知させることが一番大事なのだと思います。
国際的にホワイト・リスト(認可を受けている、まっとうな大学のリスト)を制作する動きもあるようですし、地道にやっていくしかありません。

とは言え、そうしてニセ学位を警戒する人が増えてくると、こういったインチキ大学は、潜在顧客の数を確保するため、いっそうなりふり構わぬ顧客獲得行動に出ることでしょう。
迷惑メールを送られる方も大変です……。

以上、マイスターでした。