マイスターです。
同窓会やエクステンションセンターが、一般の方々や卒業生に向けた公開講座などを企画することは珍しくありません。
ただ、これだけ大がかりに実施されるケースはあまりないのでは。
【今日の大学関連ニュース】
■「大谷大学・同窓会 全国縦断夏季八十講」(大谷大学)
恒例の夏の巡回講演が、今年度より全国ツアーという位置づけで、「大谷大学・同窓会全国縦断夏季八十講」の新たな名のもとに開催されます。夏季八十講は、全国に80支部ある同窓会支部と、大谷大学とが協働して開催するもので、同窓生・在学生はもとより、一般市民にも公開され、地域社会の文化興隆に大きな役割を果しています。
特に、「静岡県支部」「福井支部」「神戸支部・阪神支部合同」「佐賀支部」の各支部は、今年度において同窓会を設立母体とするNPO法人「尋源舎(じんげんしゃ)」の共催で、「仏教公開セミナー」として広く市民に開かれて実施いたします。
(上記記事より)
大谷大学が実施する巡回講演なのですが、「全国80カ所」という点が目を引きます。
北海道だけで12カ所。本当に全国津々浦々です。
内容もさることながら、この企画を実施できるという点は、注目すべきところだと思います。
大谷大学は、学生数が4,000人に満たない大学で、専任教員の人数も100名強。
文学部だけの単科大学です。
小さくはありませんが、そんなに巨大なわけでもありません。
やはり、企画力は規模と関係ないんだなぁ……と思います。
全国に80支部ある同窓会支部との連携企画だとのこと。
ポイントは、これが同窓会の支部総会とセットになっている点ではないでしょうか。
大学にとって、同窓会とのつながりというのは、非常に重要です。
今後、大学のブランドを社会により広く認知してもらうためにも、受験生を集めるためにも、寄付などを獲得するためにも、卒業生が果たす役割が小さくないと考えている大学は、少なくありません。
ホームカミングデーを企画したり、同窓会誌を発行したり、様々な取り組みが行われています。
しかし、それなりに愛校心のある卒業生でも、同窓会の総会に出席される方というのはそう多くはないでしょう。
実施される会場も限られています。そもそも、卒業して何年も経ったいま、参加する必然性をあまり感じないという方もいらっしゃるのでは。仕事をされている方の場合、忙しかったり、お疲れだったりすることもあるでしょう。
(皆さんは、母校の同窓会の総会に参加されたこと、ありますか?)
本来なら、卒業生同士で旧交を温めたり、大学の新しい取り組みを知っていただいたりする良い機会なのですが、これはもったいない。
その点、大谷大学の取り組みは、実施会場も多く、「久しぶりに、先生達の話を聞いてみようかな」という参加の動機付けもされているように感じます。
こういった取り組みは、ほかの大学の方にとっても、参考になるかもしれません。
マスメディアなどはあまり取り上げないかもしれない、実直な企画ですが、継続することで着実に、一定の成果を出すと思います。
なお上記のリンク先に80カ所の講師と講題が掲載されているのですが、大谷大学らしく、宗教に関する話を中心に、哲学や死生観、歴史などをテーマにした回が多いです。
一般の方々にも公開されているようですが、こういったテーマに関心を持つ方は少なくないでしょうし、楽しみにされている市民の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご興味のある方は、お近くの会場で実施される回に、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
ちなみに大谷大学は、日常の中で学問を、ひいては大学を知ってもらうという取り組みを、かなり前から継続されています。
「今という時間(とき)」って、マイスターが学生のときに、『AERA』に掲載されていました。
ページの端に細長くレイアウトされた控えめなコラムだったのですが、現代の学生達についてなどの身近な話題から、少しずつ普遍的な考察へと話を進めていく文章が、理工学部生だったマイスターには新鮮でした。
数年前のコラムを印象深く覚えている人間が、実際ここに1人いるわけですから、ほかにも同じような人はいらっしゃるのでしょう。深い内容を含んだ文章というのは、短くても結構大きな力を持っているものです。
「生活の中の仏教用語」は、教員の方々が『文藝春秋』誌で連載されているエッセイ。
これって仏教用語だったんだ、という言葉が解説されていて、おもしろいです。
そして「きょうのことば」は、よくお寺の前に掲示されてあるアレ。
これをネットで(しかも大学のサイトで)まとめ読みするっていうのは、ちょっと新鮮です。
大学らしいのは、キルケゴール、ヴィトゲンシュタイン、ジャック・デリダなどの言葉が混じっているところでしょうか。
仏教系に限らず、文学部への進学を考えている方は、毎日読んでいると勉強になるかもしれません。
以上、今日は大谷大学の取り組みをご紹介させていただきました。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。