ニュースクリップ[-6/21] 「公欠扱い、追試験も 学生の裁判員選任で 各大学」ほか

マイスターです。

さて、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【もしも学生が裁判員に選ばれたら?】
■「公欠扱い、追試験も 学生の裁判員選任で 各大学」(神戸新聞)

5月21日から始まった裁判員制度で、学生が裁判員になり、公判日程が講義や試験と重なった場合、講義を欠席しても出席日数に影響しない公欠扱いにしたり、追試験を実施したりするなど特例を認める大学が相次いでいる。一方、「学生は学業優先」と、特別の対応を取らない大学もあり、学生裁判員に対する大学側の温度差が広がりつつある。
(上記記事より)

学生が裁判員に選ばれたときの対応が、各大学によって分かれているという記事です。

関西学院大学は今春から、制度に対応したガイドラインを履修要綱に明記。公判や裁判員の選任で裁判所に出向くために講義を欠席した場合、病気や身内の死亡、教育実習などと同様、出席日数に影響しない扱いにする。また定期試験を受けることができなければ、追試験を実施するという。同大は「もし裁判員になっても、学業で不利益にならないようにしたい」と話す。
関西大や立命館大も同じ対応を決めている。関西大は「法律実務家を兼ねる教員も多く、学生に安心してもらう環境づくりが必要」。京都産業大は、講義の公欠扱いを決めたほか、メンタル面での相談に応じるカウンセラーも配置している。担当者は「裁判員になれば、家族や友だちにも言いにくいことが出てくるかもしれない」と気を使う。
一方、姫路独協大は「基本的には学業が優先。そこまで配慮しなくても」と特例には慎重な姿勢。流通科学大も「裁判員だけを特別扱いする内規は準備できていない」。神戸女学院大学は「対策の必要性は分かるが、学生数もほかの私大と比べて少ないので、選任される確率は少ないはず」と静観の構えだ。
(上記記事より)

裁判員法によると、「学生・生徒」というのは、裁判員を辞退する理由になります。
ただ、裁判員の経験から学べることも多そうですし、支援する姿勢の大学も多いようですね。

一方、「学生数もほかの私大と比べて少ないので、選任される確率は少ないはず」といった理由で、まだ準備を進めていない大学も。
姫路独協大学には法科大学院もあるのですが、裁判員学生に対する配慮は特に考えていないようです。

ところで、学生もですが、教職員が選ばれるケースもありますね。

「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」によると、「学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授」は、裁判員の職務に就くことができないと定められています。
逆に言うと、法学部の教授、准教授でない方は、選ばれる可能性があります。

裁判員を辞退する理由として、

「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること」

……という項目があるのですが、「授業が休講になる」というのは果たして認められるのかどうか。
認められないと、それこそ何十人、何百人もの学生に影響が出たりする気がしますけれど。

【ノーベル賞引っ張りだこ。】
■「ノーベル化学賞の田中さん、東大の客員教授に就任」(IBTimes)

島津製作所は18日、2002年にノーベル化学賞を受賞した同社フェローの田中耕一さんが4月1日付けで東京大学医科学研究所の客員教授に就任することを発表した。
田中さんは、たんぱく質の質量分析に関して東大と共同研究を行う。就任期間は2年間の予定で、普段は京都に所在する島津製作所で研究を行い、東京の研究所には月1、2回通うようになるという。
(上記記事より)

■「ノーベル賞益川さん、母校名古屋大にも研究拠点」(Asahi.com)

昨年のノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さん(69)が、来春から母校の名古屋大学(名古屋市)にも研究拠点を構えることになった。名大は素粒子研究の新機構設立を計画中で、トップに益川さんを迎えたい意向だ。
(略)益川さんは現在、京都産業大(京都市)で定年のない終身教授を務める。同大でも来春から、「益川塾」を本格始動させ、研究者育成などを行う予定で、研究室も残る。益川さんは同大広報室を通じ、「元々、名古屋大学で研究活動を行いたいという思いはあった。両大学とのかかわりは変わらずに、研究活動を行っていく」とコメントした。
(上記記事より)

ノーベル賞受賞者が、各所で引っ張りだこになっています。

■「ノーベル賞・益川教授、名古屋大を研究拠点に…来年から」(読売オンライン)
■「益川敏英さん:来春、名大へ…素粒子研究拠点のトップに」(毎日jp)

↑現在、京都産業大学に所属されている益川教授ですが、いくつかの記事では、

研究拠点は京都産業大学から名古屋大学に移す。
京都産業大学では、「益川塾」など、研究者育成活動を中心とした関わりを続ける。

……といった説明がされていました。
「研究拠点を移す」という表現を使っているメディアも。

実際のところ、両校にどのくらい関わっていかれるのでしょう。
両校とも、できるかぎり自分の大学を中心にしてほしい、と思っているはずですが。

その点、田中耕一さんは、就任期間も限定され、島津製作所での研究を中心にするなど、条件が明確にされているのが印象的。
島津製作所にとっては手放したくない人材でしょうし、このブランド効果が会社に与えている影響も大きいのだろうと思います。

【移転先は……。】
■「近大高専:熊野から撤退へ 慢性的な定員割れ 移転、廃止10月までに /三重」(毎日jp)

学生不足から経営悪化が続いていた熊野市有馬町、近畿大学工業高等専門学校(近大高専、687人)の神野稔校長は17日、同高専の熊野市からの撤退を発表した。名張市の皇学館大名張学舎(10年度末で撤退)跡地か、兵庫県姫路市への移転、もしくは、廃止を検討するとしている。
近大高専は、経営状況を改善して熊野市で存続するため、県、市に対して債務に対する応分の負担▽高専の県、市への移管▽紀南地域の県立高校と共存するための学生生徒の定数配分--などを求めてきたが、理解を得られなかったという。
(上記記事より)

近畿大学工業高等専門学校(近大高専)が、慢性的な定員割れにより、1962年の設立時から活動してきた熊野市からの撤退を決めました。

少子化により受験生数が減っても、地元の公立高校が減らなかったということで、苦戦を強いられていたとのこと(高専ですから、中学生を、高校と奪い合うわけですね)。

この近大高専が、次の移転地として候補に挙げているのが、先日、皇學館大学社会福祉学部が撤退したばかりの、名張市。
それも、皇學館大学のキャンパス跡地なのだそうです。

(過去の関連記事)
■「皇學館大学社会福祉学部が募集停止・キャンパスも撤退」

皇學館大学は地域活性化を期待されて誘致されたものの、開学からわずか10年で、名張市から撤退。その跡地に移転するというのは、かなり大胆であるようにも思われますが……。

ちなみに名張市は皇學館大学誘致の際に多くの財政負担をしたため、現在、市民団体などから批判を集めています。
新たに近大高専が移転することになったとしても、市からの財政的な協力はあまり期待できないかもしれません。

建物があるとは言え、工業系の高専となると、実験・実習用の設備投資も必要でしょう。
失敗が許されない判断ですが、さて、どうなるのでしょうか。

【弁当持参の食育。】
■「毎月19日は『弁当の日』、学生が会食 静岡福祉大」(静岡新聞)

食育月間(6月)の食育の日(毎月19日)に合わせ、静岡福祉大(加藤一夫学長、焼津市)は19日、学生が手作り弁当で会食する食育活動をスタートさせた。食生活が偏りがちな大学生に、弁当作りを通じて栄養バランスへの意識を高めてもらうのが狙いだ。
毎月19日を「弁当の日」と位置付けた。初回は学生10人が集い、田崎裕美教授(家政学)の講話を聞きながら手作り弁当の昼食をとった。大学生世代に特に不足しやすい果物と乳製品を大学が用意した。
(上記記事より)

大学にも様々な食育活動がありますが、これは珍しい取り組みです。
果物などは大学が用意してくれるということなので、もともと弁当を自分で作ってくるような方にはいいかも。
家政学の教授による講話も聞けるということですし、ちょっとしたゼミだと考えれば、アリだと思います。

【オープンアクセス化が進む。】
■「北米:10の大学出版局がOA支持を表明」(情報管理Web)
■「英国、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ、全学部でオープンアクセス方針を導入」(情報管理Web)

アメリカ、カナダ、イギリスなどで、研究成果の「オープンアクセス」化が進められています。
日本でも、「My Open Archive」などの取り組みがあります。
これからは学術論文も、誰もが簡単にインターネットで、無料で全文読めるようになってくるのでしょうか。

(過去の関連記事)
■マサチューセッツ工科大学(MIT)、授業映像に加え、学術論文もWebで公開
■埋もれた研究成果を誰もが簡単に投稿・共有できるサイト 「My Open Archive」
■評議会で、研究成果のオープンアクセス化を否決した大学

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。