マイスターです。
さる6/21(日)、早稲田塾自由が丘校において、NASAが行う新プロジェクトについての特別公開授業が行われました。
【NASA宇宙開発の未来図と世界初の宇宙テザーロケット実験】
講師:NASAマーシャル宇宙飛行センター チャールス・レス・ジョンソン氏
首都大学東京大学院工学研究科 藤井裕矩 教授

2009年にNASAが打ち上げる予定の実験衛星に関する解説と、NASAの今後の宇宙開発の計画に関する授業。NASAの研究者による授業は、昨年に続き、2回目の開催となります。
様々な写真や映像もあり、エキサイティングな2時間。質疑応答の時間もかなり多くいただきましたが、高校生達からの質問が途絶えることはありませんでした。
早稲田塾ではいつも、大学の研究者の方をお招きしての「特別公開授業」を、全塾生のために企画しています。現役高校生である塾生達がなるべく参加できるよう、たいてい日曜日に実施されます。
例えば6/14(日)に秋葉原校で行われたのは、日本を代表する建築家で、東大工学部教授でもある隈 研吾氏による特別公開授業。
建築志望の塾生達が早くから列をつくって開場を待ち、終わった後も隈教授を質問ぜめにしていました。
この日はさらに、塾大連携の「スーパープログラム」も3本行われていたので、大学教授が4人、同じ校舎の中にいるという状況に。
こういった方々から、専門分野に関する講義を受けたり、リサーチをして議論したりしているわけで、一般的に考えたらあり得ない、贅沢な環境です。
マイスターはかつて大学で働いていたときに、新聞で早稲田塾が取り上げられているのを読んだのですが、そのときに画期的だなと思ったポイントの一つが、この「環境」でした。
人間は、日常的に接している人達から、多大な影響を受けます。
将来の夢や目標について悩み迷う高校生にとって、第一線で活躍する研究者の方々とアカデミックな議論をしたり、先端的な研究に関する講義を聴いたりできる環境は、刺激的です。
研究者の方々とのやりとりを通じて、早稲田塾の塾生達は、
「あぁ、大学ってつまりこういう問題と向き合う場所なんだ」
「大学には、こんなに面白いことを日々研究している人がたくさんいるんだ」
……といった気づきを得ている様子。
高校までの勉強内容は基盤固めとして大切ですが、大学での学びとは別物。進路について考えるにあたり、大学で取り組む「正解のない学び」に少しでも触れる体験って、大きいです。
日常的に様々な専門分野の研究者の話を聞くなかで、早稲田塾の高校生達は、世の中には正解のない問題があるということや、それに取り組んでいる人がいるということ、どのようなアプローチの方法があるかということなどを知るというわけです。
もちろん、話を聞いた結果、「まさにこんなことがやりたかったんだ!」と確信することもあれば、「自分が思っていたような学問じゃなかったな」と気づくこともあるでしょう。
でも、後者のようなケースも、貴重な気づき。むしろ、受験前に気づけたことは大きいです。「だとしたら、自分が本当にやりたいことは何だろう」と、より深い問いかけに入っていけるわけですから。
マイスターが高校生だったときにはこんな機会はほとんどありませんでしたから、塾生達がうらやましいです。
スーパープログラムのように、実際にリサーチなどの研究活動を行う機会もあります。
リサーチ結果をプレゼンし、研究者の方々の厳しい突っ込みで容赦なくボッコボコにされる(^_^;)という経験を経て、研究の厳しさと面白さを知ることができます。
(こう言っては大学の方々に申し訳ないのですが、一日だけのオープンキャンパスなんかじゃ、ここまで研究の魅力を伝えることは絶対に不可能です)
マイスターは当初、「わざわざ大学の方を塾に呼ばなくても、大学が主催するイベントに高校生が行けば問題はないのでは」と思っていました。
実際、多くの大学は、そのような機会を設けて、高校生達に来校を呼びかけていますよね。
確かに、そういったイベントに出ることにも、意義があります。
でも、実際に塾で高校生達を見ていて、気づきました。
ここでは「大学教授の講義」が、いっときだけの特別なイベントではなく、日常的な「環境」になっているのです。
大学教授の講義を選び、聴講することは、ここの高校生達にとって、特別ではありません。
周囲の友達も同じような感覚で、「来月の○○教授の話、絶対おもしろいって」みたいな会話を、高校生達がしていたりします。
大学教授の講義を受け、質問することは、特別な非日常ではなく「ちょっとわくわくする日常」くらいの感覚でしょうか。
ここまでの環境を構築すると、「環境」の持っている力が、高校生達を変えてくれるのです。
考えてみれば、大学生だって、社会人だって、同じです。
日常的に権威の研究者の話を聞き、ゼミで直に議論しているような大学生は、そうでない学生と比べて、語る言葉や視野の広さが違ってきます。
毎日、偉大なリーダーと一緒に仕事をしていると、自然と影響を受け、状況を分析する視点が身についたりします。
どんな環境に身を置いているかで、人間は大きく変わるのですね。
アカデミックな環境が身近にあることで、高校生がどれだけ大きな影響を受けていることか。
マイスターは最近、そんなことをよく考えます。
本当なら全国の高校生達に、こうした環境が提供されるのが理想です。
ただ実際には、高校や大学が単独でこうした取り組みをするというのは、相当な負担になりますし、難しい点も多いと思います。
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高校教員の方々が、こうした企画の運営に携わるというのは、非常に大変。
「高大連携」の取り組みが拡がるなど、歓迎すべき流れもあります。
ただ、継続して取り組み続けるとなると、高校側の担当者にかかる負担は小さくないだろうな、とマイスターはちょっと心配になったりもします。
「多様な大学、多様な専門分野、多様な研究者に触れる」という意味では、1高校につき、本来なら複数の大学が関わるのが理想だと思うのですが、そこまでいくと、平均的な高校では対応しきれなくなってくるかもしれません。
だからこそ逆に、民間の教育団体である早稲田塾のような組織が、柔軟性や機動力でこうした企画を実施していくというのは、お互いにできないことを補完し合うという点で、意義があるのかなと思ったりもします。
それに、当たり前ですが高大連携の取り組みは、通っている高校が連携していなかったらアウト。
高校によって、高校生が触れられる学びに、どうしても大きな差が出てきます。
その点でも塾というのは案外、学校間格差を埋めることに一役買っているのかな、なんて気もするのです。
生徒達と一緒にNASAの方の講義を受けながら、ふと、そんなことを思ったマイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。