マイスターです。
「R25」、最近、全然読まなくなりました。
創刊当時はあれだけ評判で、設置場所からすぐに無くなっていたのに、最近は置いてあっても取らずに通り過ぎていく人が多いような気が。
フリーペーパーである「R25」の本質は、読ませる工夫をした広告の集合体です。
次々に話題をつくることが使命なのですが、メディア自体の目新しさが無くなり、飽きられてしまったのかもしれません。
さて、今日はこんな話題をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「学生発 フリーペーパー、全国200以上」(Asahi.com)
大学生が作るフリーペーパーが続々と生まれている。全国で200以上あるとも言われる。学生自身が広告をとり、記事の取材や編集をし、配布まで行う。自分たちの書きたいことだけを書いて満足するのではなく、読者や広告主を満足させる誌面を目指している。
(略)なぜ、学生はフリーペーパーにひかれるのか。早大メディア文化研究所の森治郎客員教授によると、(1)学内や地域の情報(2)サークルや趣味(3)就職やキャリア形成、を扱うものが多い。「有料誌に見劣りしない質の高いものが増えた。特に(1)は学生が地元を歩くことで、地域活性化につながる可能性もある」と話す。
同人誌のようなミニコミ、学生新聞は昔からあった。
しかし、今の学生はフリーペーパーづくりを通じてビジネスを学んだり社会とつながったりしたいと考えているのが特徴という。誌面づくりのソフトの値段が安くなり操作も簡単になったことも、フリーペーパーを身近にした。
(上記記事より)
大学生がつくるフリーペーパーが増えている、という話題です。
全国で200以上というのは、かなりの数ではないでしょうか。
記事の中では、いくつかのフリーペーパーが実際に取り上げられています。
■「GIFT BLOG 」
美大生の皆さんによる「PARTNER」は、確かにデザインのクオリティが目を惹きます。
webサイトも、主要読者や発行部数、設置場所などの基本情報を始め、媒体に興味を持ってもらうための情報がきちんと盛り込まれていて、広告主の視点を意識している感じ。
誌面やwebでは、多くの人を巻き込む仕掛けも随時行われているようです。
フリーペーパーの中には、ただ発行することが目的になってしまっているものもあるように思いますが、「PARTNER」はビジュアルの良さだけではなく、ビジネスとして成功させるために細部まで目が行き届いている印象を受けます。
大学生によるフリーペーパーのコンテスト「Student Freepaper Forum2008」で優勝したのが、こ「PARTNER」。
ちなみに、他のエントリー作品は、↓こちらに並んでいます。
色々ありますね~。
■「エントリー団体一覧」(SFF2008)
↓全国のフリーペーパーの情報を掲載したポータルサイト「Unyo!」では、フリーペーパーの検索ができます。
■「フリーペーパー・タウン誌ネットワーク Unyo!」
こちらで、「大学」や、「学生」というワードで検索をすると……山ほど出てきます。
確かに、大学生の間に、フリーペーパー制作が浸透しているようですね。
冒頭の記事では、早稲田大学のフリーペーパー講座も紹介されています。
■講座発 早大有数の人気科目
フリーペーパーを学問として学ぶ大学も出てきている。
早稲田大では昨年度の後期から、全学共通科目として「フリーペーパー講座」を開設。定員50人に、400人以上が応募する人気科目となっている。実際にフリーペーパーを発行する会社関係者らを講師として招き、自社の戦略や国内外のフリーペーパーの歴史を語ってもらっている。
講座から生まれたフリーペーパーの一つが「Re:ALL(リアル)」だ。文化構想学部の学生が今月創刊した。創刊号の特集は「文構って何?」。同学部は07年にできたばかりで、同学部3年の西山武志編集長は「他学部の学生や企業に配ったり、受験生向けのイベントを開いたりして文化構想学部の知名度を上げたい」と意気込む。
(「学生発 フリーペーパー、全国200以上」(Asahi.com)記事より)
この講座によって誕生したのが、↓こちらの「Re:ALL」。
講座の受講生募集は、↓こちらです。
■「フリーペーパー講座 受講生募集」(早稲田大学 総合研究機構 プロジェクト研究所)
平成20年度の実績は、↓このように、50人の定員に対して400人以上の受講申し込みが殺到する人気ぶり。
■「プレスリリース:日本初の正規科目になった 『早稲田大学フリーペーパー講座』応募は驚異の411人(PDF)」(JAFNA日本生活情報紙協会)
フリーペーパーをつくりたいという人、世の中には結構、いらっしゃるのですね。
大学生がこうしたメディアの企画・制作を通じて学べることは、とても多いと思います。
マーケティングからデザイン、編集、営業、流通、そして全体のプロジェクト管理まで、多くの要素に触れられます。ビジネスの基本が一通り入っているかも知れません。
多くのメンバーによるチーム作業だという点も良いですよね。
何より、大変ですが、作っていて楽しいと思います。
大学生にフリーペーパー制作がひろがっているわけですが、学生によるフリーペーパーの多くには、共通点があります。
それは、対象とする読者層が「大学生」だということ。
美大生向けの「PARTNER」も含め、ターゲットは大抵、自分達の周りにいる大学生に設定されています。
例えば、高齢者向けのフリーペーパーをつくったりしているケースは、ほとんど見かけません。
フリーペーパーは、広告収入によって成立するビジネスです。
では、広告主から見た「広告を出したくなる良いメディア」とはどんなものかというと、
「自社の顧客層に、無駄なく効率的に、しかも確実に届くメディア」
です。
一般的に、発行部数の多いメディアは、広告掲載料も高いです。
しかし、自社の顧客層が全然読んでいない雑誌なら、どれだけたくさん発行されても、広告の効果はあがりません。
男性誌には、男性が欲しくなるような商品の広告ばかりが並んでいます。女性用商品の広告はまず掲載されていません。男性誌に女性向けの広告を出しても、お金がかかるだけで無駄だからです。
さらに「20歳の女性」と、「30歳の女性」では、普段の購買行動は違ってきます。
関心を持っているファッションのタイプや、既婚・未婚の違いなどによっても、興味を持つ商品は違ってきます。
実際に売られている雑誌は、はてしなく細分化されていますよね。
大学生を重要ターゲットにしているビジネスは、世の中に多いです。
旅行代理店や携帯キャリアなどがそうですね。
一番の典型例は、就職活動支援ビジネスでしょうか。
こうした大学生向けの事業を展開する企業は、大学生向けに確実に情報を届けるメディアに広告を出したいと思うもの。
そういう意味で、大学生向けフリーペーパーというのは、これらの企業にとっては魅力が大きい出稿媒体なのだと思います。
企画をする大学生の側にとっては、「学生に情報を届けられる」というのは、自分たちの最大のアドバンテージであり、ビジネス上の強みです。
それを良くわかっているからこそ、学生をターゲットにしたフリーペーパーにするのでしょう。
こうした企業からのニーズがある限り、大学生による、大学生向けのフリーペーパーはこれからも発行され続けると思います。
逆に言うと、学生向けのフリーペーパーは、こうした企業の動向によって収益を左右される部分が大きいかもしれません。
「学生だから」という点だけで勝負をしていると、長続きしません。
(特に、今のような経済状況のときには)
広告を集め続けられるようなフリーペーパーにするのは、なかなか大変です。
学生の皆さんにはぜひ、長く続くフリーペーパーづくりに挑戦していただきたいと思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。