教授は50代以上じゃなきゃダメ!? 公募の年齢制限

実年齢より相当、年上に見られるマイスターです。

前に勤めていた会社では、上司と一緒にお客さんのオフィスを訪問すると、
かなりの確率で上司より先に名刺を渡されていました。
実に、不名誉なことです。

ビジネスでは得する場面もありそうですが、マイスター、まだまだデリケートなお年頃なので、ショックを受けることの方が多いです。
「おいくつですか?」という質問に答えると、十中八、九は、
「…かなり、落ち着いてらっしゃいますよねぇ」というフォローが返されます。
もう慣れました。慣れたくないけど。

昨日、飛び級についての記事を書きました。
特に、アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官の経歴に驚いた!というメールをいただきました。

~コンドリーザ・ライス国務長官の経歴~

1974年、デンバー大学卒(政治学)。このとき19歳。
1975年、ノートルダム大学で修士号取得。
1981年、デンバー大学で博士号取得。
1981年、スタンフォード大学教授。26歳での教授就任。

下記のページには、さらに詳細な情報が載っています。

■「コンドリーザ・ライス国務長官」(駐日アメリカ大使館webサイト)
http://japan.usembassy.gov/j/info/tinfoj-rice.html

よく見ると、「優等で卒業」とか、
「2つの名誉ある優秀教授賞を受賞」とか、
さらに細かい修飾語がついてますね。

26歳で教授になってからも、成果を出し続けたのでしょう。
優秀教授賞のうちのひとつは、20代で受賞しています。

で。

話は変わりますが、たまたまwebを見ていて、気になる情報を見つけました。

それは、日本のとある大学の、「教員公募」の案内でした。

研究業績や、論文の提出など、様々な条件を求めているのですが、
気になったのは、「年齢制限」の欄。

————————————
<講師、助教授または教授1名>
博士の学位を有し、当該分野の教育、研究に顕著な業績と熱意のある人。年齢は30-50歳程度が望ましい。

<講師または助教授1名>
博士の学位を有し、当該分野の教育、研究に顕著な業績と熱意のある人。年齢は30-40歳程度が望ましい。
————————————

…ん?

教員の公募にも、年齢制限を設けるの?

なんだか、

 30代は講師
 40代は助教授
 50代以降は教授

っていう、年功序列というか、「年齢の壁」を前提としているような条件に見えるんですけど!?

「望ましい」っていう表現にはなっているけど、20代が望ましくない理由は何?

まだね、「○代以下」というのは、わかるのですよ。
今後も長く大学にとどまって、教育に研究に、活躍して欲しい!
という理由なのかな?と、想像つきますから。
(もちろん上限を決めるのも、あまり望ましいとは思いませんが)

でも、「○○歳以上は望ましくない」ってのはなぁ…。

こういうのって、一般的なのかな?

そこで、気になり始めたマイスター。

必殺の検索テクにて、

「教員の公募に、年齢の下限を設けている大学」

があるかどうか、調べてみました!

すると…おぉ、でるわでるわ!

<教員の公募に、年齢の下限を設けている大学の例>
————————————
<教授または助教授 1名>【私立】
着任時の年齢が教授の場合は46歳以上50歳未満、助教授の場合は36歳以上40歳未満であることが望ましい。
————————————
<特任教授1名>【私立】
55歳以上65歳以下
————————————
<教授または助教授 2名>【私立】
年齢45歳以上で博士の学位を有し、教育および研究に意欲的な方
————————————
<専任講師あるいは助教授 1名>【私立】
30歳以上35歳以下が望ましい
————————————
<教授>【私立】
おおむね50歳以上で博士の学位を有する者
————————————
<教授又は助教授 1名>【私立】
採用時に年齢45歳以上であること
————————————
<教 授 1名>【私立】
採用時に満44歳以上~55歳前後まで
————————————
<教授または助教授 1名>【県立】
採用時の年齢が45歳以上が望ましい。
————————————
<教授1名>【県立】
採用時の年齢が50歳以上60歳前後まで
————————————
<教授 1 名>【高専】
着任時における年齢が50歳以上,60歳未満の方
————————————
<教授  1名>【高専】
着任時、原則として45歳以上の方
————————————
<教 授  1名>【高専】
原則として50歳以上であること。
————————————
(以上、複数の大学のwebサイトから該当部分をコピー・ペーストして作成)

 :
 :

キリがないので、このへんにしておきます。
はぁ、はぁ。

実際には、ここに紹介しきれないくらいたくさんの情報がヒットしました。

「着任時の年齢が教授の場合は46歳以上50歳未満、助教授の場合は36歳以上40歳未満であることが望ましい。 」

なんて、「望ましい」という表現ではありますが、やたら細かい刻み方です!
この条件にヒットする人じゃなきゃダメなの? と、問いたい。

あと、一番ひどかったのが、これ↓。

————————————
<教授1名>【私立】
年齢60歳前後で博士の学位を有し、教育および研究指導に意欲的な方
————————————

60歳付近限定の新規募集。

…どんな意図だぁぁ!!

まぁ、なんとなく、

「国立大学を定年退官した学者をかき集める」

ための文言なんだろうなぁと想像はつくのですが、それにしても、
意味あるのかこの行為!

で、年齢の下限を設ける理由なんですが、私なりに考え付くのは、

「年功序列で働いている、他の教員に合わせるため」

というものです。

というか、これしか考え付きませんでした。

日本の大学教員というのは、年功序列です。

私立でも、公立でも、国立でも、それは基本的に変わりません。
年功序列、終身雇用主義を継続している大学が、一般的です。

■「<学長給与>法人化に伴い、国立大学間の格差広がる」(毎日新聞、Yahoo!JAPAN掲載)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050729-00000112-mai-soci

↑こんな記事も出ていますが、文科省webサイトに掲載されている学長給与一覧なんてものをみると、まだまだ「格差」なんていうレベルではありません。

■「国立大学役員報酬規程の概要(基本給)」(webサイト)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/001/04051801/006.pdf

この年功序列システムが想定しているのは、

 30代でなんとなく講師になり、
 40代でだいたい助教授になり、
 50代以降、ころあいをみて順に教授になっていく。

という人生なのですね。
実際、この「30-40-50」という年齢による階層分けは、一般的に日本の大学で使われている人事制度なのです。

上でご紹介した、公募の年齢制限を見てみてください。
ほぼ、この「30-40-50」を、なぞっているのがお分かりになると思います。

で、

給与システムも、基本的には年齢にあわせて上がっていくように設計されているわけですよ。

そりゃ、有名教授とサボり教授で、ちょっとは差がつくかも知れませんが、格差というほどではないのです。
(外部から取ってくる研究費などでは差がつきます)

なので、この制度の想定から著しく外れるような人は、組織に迎え入れたくないというわけです。

うーん。

これ、どうなの?

少なくとも、ライスさんのようなスーパー教授は、日本のほとんどの大学では誕生しませんねぇ。

大学は、教育でも、研究でも、競い合わなければならない時代であるはずですが、

ここまでがっちり年功序列では、本気の競争は期待できないかもしれませんね。

ただ、参考として、考えておきたいこともあります。

若くして成果をあげた人を、教授に取り立てるのは大賛成ですが、
アメリカのように、教員のヘッドハンティングが加熱しすぎると、
そのコストは学費に影響します。

■「学費が上がる理由」(アメリカの大学事情)
http://ameblo.jp/yanatake/entry-10003825466.html

上記のブログ「アメリカの大学事情」さんは、
実際にアメリカで、高等教育政策のための調査や研究に従事されている方が書かれています。

情報が充実しており、政策的な視点も、非常に参考になります。
私達がついお手本にしたくなる、アメリカの高等教育の知られざる問題点なども、よくわかります。
マイスターのオススメです。

その「アメリカの大学事情」さんの記事で、アメリカの教員獲得競争が熾烈化した結果、学費が跳ね上がったということが書かれています。

ぜひ、読んでみてください。

日本も、
特別な待遇を与えて優秀な若手の研究者を早くから獲得したり、
実力のある人を教授クラスに大抜擢するようなことがあっても、いいと思います。
また、そうなるべきだと、個人的には思います。

ただ、そうした競争も行き過ぎるとマネーゲーム化し、学生の負担をあげることになります。

身分や肩書きでも、報酬でも、同じ年齢ならまったく差がつかない日本と、
身分・肩書き・報酬すべてに格差をつけて、優秀な人材を求めるアメリカ。

個人的には、身分・肩書きには、能力にあわせて差をつけた方がいいんじゃないかな、なんて思っていますが、どうでしょうか。

これって日本の大学人が、何より先に考えなければならないことだよな、
と思うマイスターでした。