武蔵工大と東横女子短大が統合 総合大学に転換

マイスターです。

理工系の皆様にとって、大きなニュースです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「武蔵工大と東横女子短大、来春に統合へ」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0309/005.html
————————————————————

中堅私立大学の武蔵工業大(東京都世田谷区)と、3年制の保育学科を持つことなどで知られる東横学園女子短大(同)は9日、08年4月に統合する方針を明らかにした。両校を経営する学校法人「五島育英会」が16日に理事会を開き、正式決定する。理工系や短大が敬遠される傾向から、学生確保に苦心していた両校が、生き残りをかけて総合大学に生まれ変わる。

統合後は武蔵工大の3学部に、都市生活学部、人間科学部を加えた5学部になる予定。新大学の名称は16日以降に検討する。
(上記記事より)

中堅理工系私大として知られる武蔵工業大学が、短大と統合し、総合大学化の道を選択したようです。

東横女子短大「保育学科」および「ライフデザイン学科」が、武蔵工業大学人間科学部および都市生活学部の2学部として生まれ変わるということのようです。

■武蔵工業大学
http://www.musashi-tech.ac.jp/
■東横学園女子短期大学
http://toyoko.ac/
■学校法人 五島育英会
http://www.goto-ikuei.ac.jp/

両校は同じ学校法人(五島育英会)の経営ですので、系列校の関係にあたります。
ですので統合自体は、それほど予想外のものではなかったのかもしれません。
ただ、理工系の大学が女子短大を新学部として統合するというのは、時代を象徴しているようでもあり、なにか印象的な動きであるように感じます。

なお武蔵工大は、もともと2007年4月に1学部新設することを発表していましたので、2学部からいっきに5学部に増えることになります。
理工系単科大学というイメージだったのが、総合大学のそれへと変わっていくことになります。もう、「工業大学」ではなくなるのですね。

こうなると、「武蔵工業大学」という校名は正確ではなくなってきますね。
どうされるのかな……と思っていたら、武蔵工業大学の同窓会である「武蔵工業会」のwebサイトに、↓こんな文章が掲載されていました。

■「武蔵工業大学 大学改革案に対する中村学長の説明(抜粋)」(武蔵工業会)
http://www.ob.musashi-tech.ac.jp/daigakukaikaku070210.html

……その後一番の関心事である校名問題に触れた。
まず「大学名称変更の賛否両論」として、賛成意見では

① 広がった専門分野と名称は一致すべき、
② 女子学生など新規需要層を招じいれる名称に 、
③ 小・中・高を抱える総合学園として使える統一的な名称にすべき、
④ 呼び間違えられたり混同されたりする名称は好ましくない、
⑤ 名称変更が大学の一段の飛躍につながるのでは

等があり、反対意見では
 
① 歴史を持ち、すでに定着した名称は保持すべき、
② 武蔵工業大学に代わる良い名称はあるのか 、
③ 名称変更に大きな費用がかかる

との説明があった。
(上記ページより)

「武蔵」の文字が名称に含まれる大学はとても多いのです。武蔵工業大学のほか、武蔵大学、武蔵野大学、武蔵野美術大学、武蔵野音楽大学があります。「呼び間違えられたり混同されたりする名称」というのは、以前から同大関係者の悩みだったわけですね。

また「女子学生など新規需要層を招じいれる」というのも、理工系大学にとっては重要な関心事です。各種の報道にもあるように、現在全国的に工学部の受験生は減少する傾向にあります。新しいマーケットを開拓したいという危機感を覚えているところは少なくないでしょう。
武蔵工業大学は10年前に、いわゆる文系コースの高校生にも意識を向けた環境情報学部を設立しています。「脱・工科系単科大学」という思いは、他より強かったのかもしれません。

さて上記の同窓会のページによると、新しい大学名の候補は、

「武蔵都市大学」

であるそうです。完全に、工業大学であったことを感じさせない名称となっています。<脱・工科系>を標榜すれば当然の流れではあります。

ただ同大には、産業界に対してこれまで築き上げてきた優秀な技術者養成機関としてのイメージもあると思うのです。それを捨てることにつながりかねないだけに、この名称変更は結構大きな賭けだと個人的には思います。

学部を増設し顧客層を拡大することは、より多くの受験生を集めることにもつながりメリットが多いように思われます。しかし中堅理工系私大の強みの一つが、産業界での評価に裏打ちされた高い就職率であるのも事実です。
統合すれば、まず単純に、就職率全体のパーセンテージは下がります。また企業の採用担当者の側が持っている同大のブランドイメージも、希釈される方向に向かいかねません。

他の統合事例についても言えることですが、今後、同大は各ステークホルダーに対して「生まれ変わった」という部分と、「これまでと変わりません」という部分の両方を、うまく伝えていかなければなりません。難しいミッションだと思いますが、統合や合併のあるところ、必ず付きまとう課題です。避けては通れません。

今後、武蔵工大と同じ方向を選択する大学も出てくるでしょうが、今回のミッションを成功させた場合、武蔵工大はそのモデルになるかもしれません。

この統合がどのような結果をもたらすか。
「脱・工科系単科大学」という流れがここから生まれるのかどうか。
個人的には、なかなか気になる統合です。

以上、マイスターでした。

——————————————
※ちなみに武蔵工大は↓こんなグループを形成する一角でもあるのですが、こちらはどうなるのでしょう。

■東京4理工総合情報サイト
http://www.4rikou.com/

3 件のコメント

  • 「五島育英大学」
    「五島学園大学」
    「武蔵育英大学」
    「武蔵学園大学」
    「武蔵東横大学」
    「東横武蔵大学」
    「東横育英大学」
    「東武横蔵大学」
    ・・・ムニャムニャ

  • こんにちは。いつも興味深く拝見させていただいております。先日の慶大は学部としての統合合併でしたが、今回のものは「工業」という言葉がネックになるのだと思います。工学系の学部の人は外せないと思うでしょうし、その他の学部の方は古くさいと思うでしょうから、そのバランスが難しいと思います。

  • 武蔵工大・東横短大合併延期→学生が集まりすぎなのが理由とは、少々羨ましい。お気の毒ですが・・。
    ——————————————
    =定員「1人超過」で基準満たさず
     学校法人五島育英会(東京都渋谷区)は22日、経営する武蔵工業大(世田谷区)と東横学園女子短大(同)の統合時期を、当初予定の来年4月から1年延期し、2009年4月にすると発表した。
      文科省は教育の質を維持するため、既設学部の学生数が過去4年間平均で定員の1.3倍未満であることを認可の条件としている。武蔵工大によると、今年度新設した知識工学部の定員超過率が1.302倍となり、基準に抵触した。仮に入学者が1人少なければ、1.297倍でクリアできていたという。
    ——————————————