自分マネジメントや投資教育をどのように進めるか(1)

マイスターです。

・社会人同士の、「勉強を前提としたルームシェア」を流行らせたい
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50198018.html
・「マネーゲーム」という言葉を安易に使うのは、子供の教育上マイナスでは?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50197614.html

先日、上記のような記事を2つ、書かせて頂きました。
これらの記事では、

「社会にとって非常に重要な「投資」という概念を、子供が教わる機会がない」

「何かしなくちゃ!という意識を持っていても、なかなか実行に移せないのが、普通の生活者。しかし、学校では『真面目にやれ』というばかりで、『ダメな自分をいかにマネジメントするか』ということを教えてこなかった」

…といったことを申し上げました。それぞれ、現代の教育の盲点になっているテーマではないかとマイスターは思うのですね。
特に、学校の体制がこれまで、こうしたテーマに対応できていなかったのかな、と。

ただ現実問題として、現在の学校の体制で、こうしたことを教えるのは容易ではありません。
小学校から大学まで、教員というのは基本的に多忙で、教育や研究、学内業務など、本来やるべき仕事をぎっしり持っています。この上、さらなる仕事を追加するというのはおそらく、現実的な解決法ではないのでしょう。

内容面から言っても、すべての教員にこうした領域のことを熟知させて、生徒・学生に教えるというのは、難しい面が多いです。いきなり、「来年から、中学校では投資術を教えることにするから、全教員に投資に関する研修を行うこと」なんて言っても、やはり無理がありますよね。自分マネジメントの相談はともかく、特に「投資教育」の方は、やはりそれ相応の知識や経験がある方が教育にあたるべきなのでしょう。

ブログを読んでくださった方々からも、これらのテーマについては、様々なご意見を頂戴致しました。中でも「考えさせられた」とおっしゃってくださった方から、このようなご質問を頂きましたので、ご紹介させていただきますね。

○実際、こうした問題を解決するにはどうすればいいだろうか?
こうした本来の学問以外の部分について、「学校や教員が対応できていない」ということでしばしば(メディアなどから)お叱りを受けたりしているけれど、実際問題、困難なことも多い。
また、対応方法として、「学校として対応する」という場合と、「それぞれの教員が個別に対応する」という場合が考えられるが、前者でも後者でも、難しい面はある。

以上が、ご質問の要旨かなと思います。ご自身も、どうにかしたいと思いつつ、でも現実にどう対応すべきか、迷っておられるとのことでした。
(これで内容は合っていますでしょうか? 違っていたらすみません、そのときはすみませんが、ご指摘いただければ助かります)

こういうご質問をいただけると、とてもうれしいです!
書いている方も、「学校の皆様はどうお考えなんだろうか? どういう点にお悩みなんだろうか」ということが気になっていますので、直接こうしてコメント頂けると助かります。参考にさせていただきます!

さて、この方に限らずきっと、小学校から大学まで、多くの教員の皆様方が、同様の悩みを持っておられるのだと思います。マイスターも、確かに「学校で対応できていない!」とは書いたものの、じゃあ一体どうすればいいのか、ということに全く言及していませんでした。マイスターは記者ではなく学校関係者ですから、「問題を指摘しっ放し」ではいけませんよね。

本来なら投資教育や学習サポートをバックグラウンドにされている方のご意見を伺った方が良いのでしょう。もしそういう方がこのブログを読んでくださっていたらいらしたら、ぜひご意見をいただたいと思います。

ここでは、あくまでもマイスター個人の考えとして、と前置きした上で、思うことを述べさせていただこうかと思います。マイスターもプロフェッショナルではありませんので、こうした考え方が正しいかどうかはわかりませんが、ひとつの意見としてご参考になればと。

まず、

「学校として対応すべきか、それとも教員が個別に対応すべきか」

という点について。
「学校として対応する」というのはつまり、「学校の教育の中に、きちんと公式に位置づけて、システムとして対応する」という意味ですね。教えるべき標準ラインを設定し、誰がいつどのように教えるかをちゃんと学校として位置づける。そういう意味です。

マイスターも、世の中のあらゆる物事を学校で教えるべきだとは思いません。学校は万能ではないです。

でも、今回のテーマである「自分マネジメント」と「投資教育」に限定して言えば、これはちゃんと学校で教えられるようにしていくべきテーマだと考えています。家庭でできること、家庭ですべきこともありますから、全部を学校が担う必要はありませんが、学校でも対応して、しっかり生徒・学生に身につけさせるべきです。

まず「自分マネジメント」ですが、マイスターが思うに、これがこれまで学校で教えられてこなかった背景には、

「一生のうち、勉強するのは、学校に通っている間だけ」

という前提があったのではないでしょうか。

一度社会に出て新人として研修を受けた後は、(仕事上必要な知識を仕入れるということはあっても)じっくり腰を据えて体系的な学問を学び直すということは、あまりありませんでした。なぜなら、ちゃんと学び直す必要が、そこまでなかったからです。なんとか学校を卒業して入社さえすれば、年功序列&終身雇用で定年まで会社にいられましたから、困ることがそれほど、なかったのだと思います。

思えば、「自分マネジメントができなくてもなんとなかる」というのは、日本社会が求めた労働スタイルと、セットになっているのですね。毎朝、同じ時間にオフィスに出勤して、会社が指示した仕事を忠実にこなし、夜遅くに帰宅する。残業した分だけ残業代が出る。そうして転職なども経験ことなく、定年を迎える。この生活だと、働きながら自分の学習時間をマネジメントするスキルは、そんなに要りません。

しかし、この前提は、少しずつ崩れはじめていっていますよね。
会社内の業務をこなしているだけでは、これまでのような昇給が保証されないという時代になりました。リストラされたり転職したりということも、増えてきました。
こうした世の中を生きるために、一生勉強するということが、今では普通のこととして認識され始めてきています。

社会環境が変わって、「自分マネジメント」が広く国民に必要なスキルになってきた以上、やっぱり学校で教えておくべきだと思うのです。

でも考えてみれば、これまで学校は基本的に、「真面目にやれ」という指導しかしてこなかったわけですよね。授業をさぼったり、授業中寝たりしないように、教師が見張っている、というのが、これまでの対応方法のベースでした。
よく、国際比較データを元に、「日本の生徒・学生は、自宅ではほとんど勉強しない」ということが問題にされたりしますけれど、マイスターが思うに、今までの指導法を考えれば、そういう結果が出るのは、ある程度予測がついたのではないでしょうか。日本ではもう、勉強することが、よりよい生活を保障する術ではなくなっていますから、生徒や学生の側では、勉強に対する直接的な動機付けがしにくくなってきています。なのに、自分をマネジメントする術も身につけていないのですから、「勉強しなきゃ」と思っていても、なかなかそれを実行に移せない人が多く出るのは、当たり前と言えば当たり前です。だから試験前を除けば、勉強するのは、学校にいる間だけ、ということになるのではないでしょうか。

(もちろん、このようなスキルを自然に身につけていける人はいますし、学ぶ動機をしっかり設定して、学業に打ち込める人もいます。でも、昨今の学力低下傾向や、ニート問題を見ていると、このあたりにも原因の一端があるような気がするのです。学業の意義を説くという従来のアプローチがある一方で、「学びをマネジメントするスキルを身につけさせる」という、技術面のアプローチも大事なのではないかと、最近とみに思うのです)

本当は、経済が悪化する以前から、学校で早めに、自分のマネジメント方法を教えておくべきだったのかも知れません。

もう一点、投資教育についてですが、これは社会の運営に直結する話です。
投資という概念には、大きく「自分の資産を自分で運用する」「社会の資産を社会で運用する」という2種類があるようにマイスターは思うのですが、考えてみれば、日本の初等中等教育では、どっちも教えていません。
例えばODAなどの途上国開発援助は、後者に含まれると思いますが、
「どのくらい日本が投資を行って、その結果、どの地域に、どのような社会価値が創出されたか」
なんて感覚は、私達日本人はほとんど持ち合わせていないのではないでしょうか。

ヒト、モノ、カネという資源を投資し、なにかしらのリターンを得る。

こうしたメカニズムに関する知識やスキルを我々が身につけるのは、ようやく会社に入ってからです。だから、大抵の社会人は、自分の会社の投資プロジェクトについてはある程度、コストがどうだ、リターンがどうだと分析できるのです。でも、自分の資産運用については「銀行に預けていればいいさ」くらいしか語れないし、住んでいる街の開発計画については「税金の無駄遣いはやめてほしいよね」くらいしか言えないのではないでしょうか。

マイスターが思うに、これらはみんな「投資」という点では同じはずです。

経済が右肩上がりで、政治家と官僚が考えた投資計画をやっておけばなんとかなった時代は、終わりました。ついでに、銀行に預金を預けておけば人生なんとかなった時代も、終わりました。
今後は、「投資」に関する最低限のことはちゃんと学校で国民全員に教育しておかないと、一般生活者が、社会発展のビジョンを描けないと思うのです。

というわけでマイスターは、この2テーマについては、ちゃんと学校教育に組み入れていくべきだと考えます。

じゃあ、どういう人が、どういう方法で教えていけばいいのか。

それは例えば……と書こうと思ったら、そろそろ文章が長くなって参りました…。
すみませんが、この続きは次回にさせてください。
(以前の記事の補足として書いた文章が、複数回にまたがるって、あんまり良くないですよね……すみません、短くまとめられなくて)

以上、マイスターでした。
(自分マネジメントと投資教育についてのプロの方がいらしたら、ぜひご意見頂ければと思います。ひきつづき、お待ちしています)

2 件のコメント

  • まずは、ブログの中の本筋以外の一部分に意見を述べさせて頂き、かつ各氏からご意見を頂き、感謝しています。
    私の理解を端的に申し上げますと、教育を受けるモチベーションを向上させる重要なファクターとして、投資教育や自己理解教育が必要なのだろうと、意見を共有させて頂くことができました。それらを、システム化することは私も期待するところです。システム外のところでは、機会が許せば金八先生のように今後も語り続けたいと思います。
    マイスターさん曰く「どういう人がどういう方法で教えればよいか」。個人的には、システムが構築できれば、適切に進展すると楽観視しています。システム化は、首相・大臣級の一言があれば早いとは思いますが、そうでなければなかなか困難と考えています。ただ、小学校~大学が連携して子供の意識を高める教育を、各学校組織がやる気になれば、できることもあると思います。