マイスターです。
今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【官主導の、産学官連携拠点。】
■「求む、地域活性化の知恵 文科省、全都道府県に産学官拠点」(47NEWS)
文部科学省は22日までに、都道府県と大学、産業界が共同で科学技術分野の研究開発を進め、成果を地域経済の活性化につなげるための産学官連携拠点を全都道府県に1カ所ずつ整備する方針を固めた。
地方の産業構造に変革をもたらす狙いで、国はいわゆるハコものを整備し、実際に地域経済の発展に生かすための運用策は都道府県側の知恵とやる気に委ねる。政府、与党の追加経済対策の一環で、2009年度補正予算案に695億円を計上する。
(略)文科省所管の科学技術振興機構が施設を建て、実験などに必要な装置を配備する。規模は1カ所最大30億円。各都道府県に、どの大学や企業と組むか、何をテーマに活動するかのシナリオの提案を募り、各拠点の運用を担ってもらう。
施設は大学内に設置する方向で検討。新築でも、既にある施設の増築でもよく、文科省や経済産業省などが以前から進める産学官連携事業の拠点としても使える。
(上記記事より)
「国はいわゆるハコものを整備し、実際に地域経済の発展に生かすための運用策は都道府県側の知恵とやる気に委ねる。」
……という一文が、なんだかバラマキを連想させ、不穏な雰囲気をかもし出しています。
「かかった投資額以上のリターンを出せる施設がどれだけ生まれるか、という点は国のあずかり知るところではない」という意味だったら、どうしましょう。
施設は大学内に設置し、既にある施設の増築でもよく、「産学官連携事業の拠点としても使える」らしいですが、いずれにしても大変な投資額になりそうです。
この拠点、すべての都道府県に設けるのでしょうか。
悪いアイディアではないでしょうし、成功するケースもいくつか出てくるだろうとは思いますが、全国でこれを実現させることの費用対効果がどれほどなのか、個人的にはちょっと疑問も覚えます。
本当に必要なところにだけ、つくればいいのでは……。
【ちょっとずつ浸透する、大学発の野菜。】
■「味付き野菜、無限の可能性 『調味料要らずの新顔』人気上昇」(MSN産経ニュース)
「塩味が効いた野菜」として人気が高まりつつあるのが、南アフリカ原産のアイスプラントだ。日本では「バラフ」「ソルトリーフ」などの商品名で出回っている。
葉や茎の表面がキラキラと光る水泡に覆われ、食べるとシャキッ、プチッと、今までにない食感に驚かされる。肉厚でゴツい見た目からくる印象とは異なり、えぐみや渋みはなく、ほのかな塩味が口の中に広がる。
しょっぱさの秘密は、根から地中の塩分を吸い上げて蓄えるというアイスプラント特有の性質にある。この新顔野菜を特産品にしようと、佐賀大学発のベンチャー企業「農研堂」(同県神埼(かんざき)市)が力を入れている。
「実はアイスプラントの習性を塩害地域の土壌の修復に役立てられないかと10年前から研究を進めていたんです」と代表の北原良太さんは説明する。
一方、味が良く、欧州では食用に使われていたことから、野菜化に向けての取り組みも。スワヒリ語で「水晶」や「氷」を意味するバラフと名付け、3年前に本格出荷を始めた。目新しさから、いち早くプロの料理人が注目し、栄養価の高さが知られるようになると、人気は家庭へと広まった。現在は、地元の農家7軒で栽培されている。
(上記記事より)
■『大学は美味しい!!』 フェア(2) 大学はやっぱり美味しかった!
↑以前、「大学は美味しい!!」フェアに出品されていた「バラフ」が、少しずつ浸透してきているようです。
実はマイスターも最近、都内で食事をした際、料理の上にちょこんとバラフが載っていているのを発見し、「バラフだ!」と、驚いたところでした。
数年後にはポピュラーな食材として、家庭の食卓に登場しているかもしれませんね。
【法学部ショック?】
■「関東学園大、10年度から法学部の募集停止 定員割れ理由 群馬」(Asahi.com)
関東学園大(太田市藤阿久町)は、10年度から法学部の募集を停止、12年度いっぱいで廃止することを決めた。これで県内に法学部を置く大学はなくなる。
同大広報課によると、法学部は定員200人で90年度に設置。しかし近年、定員割れが続いたことから、今年度から定員を75人まで減らした。それでも今年度の入学者は約40人だけ。法学部を目指す学生は国公立、首都圏志向が強く、地方大学の法学部には集まりにくいという。
(上記記事より)
法科大学院の激しい競争について、本ブログでも何度かご紹介してきましたが、このニュースも無関係ではなさそうです。
「県内に法学部を置く大学はなくなる」という一文が、司法制度改革の是非について、色々と考えさせます。
【毎年恒例、知事によるリレー講座。】
■「立命館大でリレー講座340人参加」(読売オンライン)
全国の知事らが地方行政の現状や課題を語る「第4期全国知事リレー講座」(立命館大、読売新聞社主催、総務省、文部科学省、全国知事会後援、大学コンソーシアム京都協賛)が23日、京都市の立命館大衣笠キャンパスで開かれ、野呂昭彦知事が「『文化力』による三重発世直しモデル」と題して340人の学生の前で講演した。
(上記記事より)
立命館大学による、知事のリレー講座。ここ数年、メディアで見かけます。
これを受講できる学生さんがうらやましいですし、協力をする知事の方々の懐の深さもいいですね。
政策を学ぶ方々はもちろん、広い専攻の学生さんにとって刺激になる企画だと思います。
記事の中の、
受講した政策科学部2年今岡真人さん(20)は「格差が広がる社会の中で、三重が持つ魅力的な地域文化を生かした政策は、理念としては素晴らしいと感じた。ただ、具体的な政策がどういったものなのか見えなかったのは残念」と話していた。
(上記記事より)
……というコメントが良いなと思いました。
政策を学ぶ学生達に話すとなると、普段の選挙演説とはまた違ったアプローチが求められるようです。
知事の皆様にとっても、参考になる企画なのではないでしょうか。
【広く報道される、学内の出来事。】
■「慶応塾長交代 背景に『理工学部出身』への反発?」(MSN産経ニュース)
「創立150年の節目に当たってさまざまな事業を立ち上げてきた。これから清家君が立派にやってくれると思っている」。慶応義塾の清家篤新塾長を紹介する安西祐一郎塾長のあいさつには、“未練”がにじんだ。会見では150年記念事業中の「塾長交代」について明確な理由は示されなかった。慶応大の関係者には「歴代塾長はほとんどが人文系出身で、理工学部出身の安西塾長への学内の反発が『3選』を阻んだ」との見方が強い。
安西塾長は北海道大助教授などを経て、平成13年に塾長に就任。20年4月に共立薬科大との合併を実現するなど、積極的な経営を進める一方、「ガバナンス委員会」(委員長・瀬戸雄三アサヒビール相談役)を学内に設けて運営組織の見直しに着手した。対象は各学部長の選任方式にもおよび、大学関係者は「ここ1年は安西氏に対し学内の反発が高まっていた」という。
(上記記事より)
慶應義塾の塾長選挙があったようで、様々なメディアが取り上げていました。
大学トップの交代は、しばしばニュースになります。
特に早慶や旧帝大などで、しばしばこういった報道を見かけます。
地方の国立大学の学長選挙の結果が、地元紙に掲載されることも多いようです。
ただ、上記の記事や、憶測のような週刊誌の記事も含め、こうして「政治的な動き」として学長の交代劇が取り上げられるケースは、そう多くはないでしょう。
政策に影響力のある面々であるとは言え、一大学の学内選挙が何度も報じられるのは、ちょっと不思議な気もします。
それだけ社会に与える影響が大きいということなのかもしれませんが、こうした報道に違和感を覚える方も多そう。
知の殿堂たる大学の、「らしからぬ一面」が見え隠れするからでしょうか。
この報道を読んで一般の方々、特に企業の最前線の方々がどういった感想を持たれるのか、気になるところです。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
>官主導の、産学官連携拠点
本日の国会で、この件について民主党の細野議員が突っ込んでましたね。経済産業省でも同じ様な期間が既に整備済みだったり、文科省にしても既に設置済みだったり・・・・・ハコモノという批判は矢張り当たっていたそうです。
そもそも、産学官連携と単に言っても地方ではそれが既に当たり前になっていたりしていて、それで巧くいっていないのが現実なのではって気がするんですよ。人材の偏在の問題
や情報のオープンさに欠けていると言う問題もある訳だし。