マイスターです。
ブログでご紹介した内容について、雑誌や新聞などから質問をいただくことがあります。
最近、圧倒的に多いのが、「お金」に関する話。
具体的には学費の値下げや、奨学金関連。大学の資産運用や、寄付金広報戦略なども関わってきます。
やはりこの不況ですから、大学を語るにも、お金のことを切り離すわけにはいかないようです。
(過去の関連記事)
■この不況に対して大学が用意している経済支援策あれこれ
↑以前の記事で、大学の経済支援策の事例をご紹介させていただきましたが、各大学とも非常に熱心。こうしたところにメディアも、そして読者も注目しているということでしょうか。
さて、今日はこんな報道をご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「大学の授業料滞納や中退者数を緊急調査 文科省」(Asahi.com)
文部科学省は、全国約1200の国公私立大・短大すべてを対象に、授業料の滞納状況や経済的な理由で中退した学生数を聞く緊急調査を始めた。昨年来の経済情勢の厳しさをふまえ、文科省は学費を払えず学業断念に追い込まれた学生や、その懸念がある学生が増えている可能性があるとみている。
支援策を考えるうえで、まず実態把握が必要だと判断した。調査では、授業料滞納者数と中退者数、中退の理由を聞くほか、奨学金など学生を支援する各種制度がきちんと学生に知らされているか、大学側の対応も尋ねている。現在、大学から回答を集計中。
(上記記事より)
高校では、学費滞納者の増加が以前から話題になっています。
そこで日本私立中学高等学校連合会が、私立高校の学費滞納状況を調査。
結果が文部科学省のサイトに掲載されています。
■「平成20年12月31日時点での私立高等学校における授業料滞納の状況について」(文部科学省)
913,830人の回答者の内、滞納者は24,490人。
割合で言うと2.7%で、これは前年の3倍にあたります。
高校でこれですから、大学でも学費滞納者が大幅に増えている可能性は否定できません。
そんなわけで文部科学省が、全国の実態調査に乗り出しました。
これは、とても重要なデータです。
できるなら今回限りではなく、毎年集計した方がいいのではないか、というくらいです。
文部科学省が調査をするということは、結果はすべて公表されるのかと思います。
公的な支援策を考える上での参考資料になるのはもちろんですが、これから大学選びの時期を迎えるご家庭にとっても、これは気になるデータでしょう。
通っている学生の家庭環境にも差があるでしょうから、単純な比較はできませんが、それでも大学ごとの経済支援策の充実度を判断する参考材料のひとつにはなると思います。
経済的な理由で大学を去っている学生があまりにも多い大学と、あまりいない大学……といった感じで差が出るようであれば、この不況下、多くの方は前者を選択するでしょうし。
(他の部分にあまり差がなければ、ですけれど)
実際、冒頭の記事には、↓こんなことも書かれています。
すでに回答した大学では、意外な結果も出ている。
(略)早大も同傾向で、08年度の中退者総数と経済的理由による中退者数は、いずれも07年度より少なかった。広報課は「奨学金制度の効果かもしれないが、理由ははっきりしない」という。
(上記記事より)
いわゆる有名大学になればなるほど、教育に投資できる家庭の出身者が増える、みたいな要因もあるでしょうから、一概には言えませんが、奨学金の充実により中退者が減った可能性はあります。
例えば、経済的な支援策の充実度と、経済的理由による中退者の少なさの両方を打ち出し、
「○○大学は、意欲がある学生には、学ぶ機会を提供します!」
……みたいなコピーで広告を出したら、なんて良い大学なんだと思う保護者の方も出てくるのでは。
大学の宣伝にはイメージ重視のものも多いようですが、これくらい具体的なものがあっても良いように思います。
ちなみに「中退理由」って、どうやって調べているのでしょうか。
たいていは、学生本人の自己申告のようです。
大学には、学生課や教務課などに、退学関連の申請を受け付ける窓口があります。
学生はそこに行って、中退したい旨を伝え、規定の用紙を職員の方から受け取ります。
窓口で受け取った用紙に、理由を書く欄がありますので、そこに学生本人が記入をします。
これで理由がわかるわけです。
いくつかの選択肢になっていることもあれば、自由記述の場合もあるでしょう。
文科省に言われるまでもなく、自校の状況を把握するために普通はデータを集計しますから、選択肢が多いでしょうか。
ただ、実際に窓口でこうした書類を受け取っていたことがあるマイスターの経験で言うと、適当に回答する学生も少なくないと思います。
学生の立場になってみればわかります。「成績がふるわないから」とか、「面倒くさくなったから」とか、「やりたいことが見つからないから」みたいな回答をするのは、やっぱり抵抗ありませんか?
それでなくとも、教務課や学生課の職員は、学生を教え諭したり、注意をしたりする「教育者」の一面を持っています。
「本人のせい」ではなく、「家庭の事情」にしないと、何を言われるか分からない。面倒くさい。
……そんな風に考えて、「経済的理由」にマルをつける学生も、きっと少なからずいるはず。
これですと、職員の側も、あまり込み入ったことは聞けませんから。
大学によっては、中退をする際、必ず所属学科の教員と面談をさせるところもあります。
本人の事情や考えを聞き取り、適切なケアをするための仕組みなのですが、学生にとっては職員と同様に、「あまり突っ込まれるのは嫌だ」と考える人もいるでしょう。
そんなわけで、本当に「経済的理由」で大学を去っているのかどうかは、アンケートだけでは分からないんじゃないか……なんてマイスターは思っていました。
その点、文科省の今回の調査では学費の滞納状況もあわせて調べていますから、より正確な実態が把握できると思います。
学費滞納者が極めて多く、中退者の総数も増えているのに、経済的な理由で中退した学生はほとんどいない、みたいな大学があったら逆に怪しい……みたいなこともわかりますし。
もしかすると、当の大学関係者ですら、
「えぇ!? ウチってこんなに、滞納者多かったの!?」
……と、驚く結果になるかもわかりません。
ちなみに、「中退」にも色々あります。
マイスターが知っている大学だと、「退学」と「除籍」の2種類がありました。
既に学費を滞納している状態で中退を申し出てきた場合、在籍タームまでの学費を納めない限り「退学」はできません。一方「除籍」なら、滞納している学費を納めずに大学をやめることができます。
実質的には、違いはそれだけなのですが、証明書の類に「除籍」と書かれると、気にする人もいますから、滞納分の学費を払ってでも「退学」を選ぶという方は少なくないようです。
経済的に困窮しているご家庭が増えているのだとしたら、「除籍」が多くなるかもしれません。
そんなわけで、文部科学省の調査結果が気になる、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
私はバブル期に大学生でしたが、今の学生をうらやましく思いますね。大学時代、アルバイト(家庭教師)で20万を稼ぎ、家庭にほぼすべてを入れながら学んでいましたが、当時は好景気だったため教授陣の理解が全くなく、8年かかって卒業しました。学費免除,奨学金も基準が厳しかったです。・・・実家が農業の学生には甘かったですが・・・
まだ今現在(不景気)の方がましだと思いますよ。