マイスターです。
大学の役割は、教育、研究、地域貢献だと言われます。
教育や研究の重要性はもちろんですが、近年、最後の「地域貢献」に注目が集まっています。
地域性や、各大学の個性が出やすいこともあってか、ユニークな取り組みも多いです。
そんな話題を、ここしばらくのニュースからいくつか拾ってみました。
【今日の大学関連ニュース】
■「地域に貢献、環境大ヤギ部 新たに2匹仲間入り」(日本海新聞)
ヤギを通して環境問題に取り組む鳥取環境大学(鳥取市若葉台北一丁目)のヤギ部。開学時から続く活動は本年度で九年目を迎え、地域の除草やアニマルセラピーに一役買ってきた。今月から二匹の仲間が加わり、やんちゃ盛りのヤギは計五匹。部員たちは「活動の幅を広げることができる」と張り切っている。
ヤギ部は、地域住民や自治体などから除草の依頼を受けてヤギを派遣、ムシャムシャと雑草を食べる働きぶりが好評だ。幼稚園や福祉施設を訪ね、お年寄りと園児がヤギと触れ合ってきた。ポストカード、カレンダーなどのヤギグッズを開発、販売している。
部員たちは、毎日欠かさず学内にあるヤギ小屋を訪ね、干し草を与えたり、掃除したり。部長の西ノ薗大生さん(22)=三年=は「世話をするうちに動物を愛する心がはぐくまれていく」と話す。
部員は現在十五人。「動物が好き」「珍しい部活動」。入部の動機はさまざまだ。昆虫にさわることもできなかったという田中耕平さん(22)=四年=は「動物への苦手意識を克服するために入った。ヤギはもちろん、大嫌いだった犬も好きになりました」。
(上記記事より)
「環境」を扱う鳥取環境大学では、もともと地域貢献につながる教育・研究活動が活発に行われています。
そんな中、学生達が主導するこの「ヤギ部」も個性的な存在。
地域の方々のための除草やアニマルセラピーに、大活躍です。
↓こんな活動もされている様子。
■「ヤギでイノシシ出没防げ!! 環境大ヤギ部が実験 」(日本海新聞)
イノシシ被害で苦しむ中山間地域の集落にヤギを放し、イノシシが出没しにくい環境を作る試みが、今月から鳥取市鹿野町鬼入道(きにゅうどう)で始まった。鳥取環境大学ヤギ部の学生が飼育しているヤギの母子二匹が県道沿いの耕作放棄地に放たれ、ムシャムシャと生い茂っている雑草を食べる働きぶりに、地元住民や大学生たちのさまざまな期待が膨らんでいる。
高齢化が進む鬼入道は二十世帯の小さな集落。イノシシ被害は大きな悩みの種で、今年三月から鳥獣被害総合対策事業に集落全体で取り組むモデル地区となっている。
六月には侵入防止柵を住民やボランティアによって設置したが、柵の部分には草刈り機が使えず、生い茂る草に手を焼く場合も。そこで、小回りがきき、草を食べるヤギを放すことによる効果を調べることにした。
(略)同集落は、今回の効果次第で本格的なヤギの導入を計画する。
(上記記事より)
「草を食べる」という、ヤギ達にとっては当たり前の行為が、色々な問題を解決するのですね。
こうした試験的な活動から、様々な研究成果も生まれそう。
教育・研究・地域貢献の3つをカバーする、ユニークな活動です。
ちなみに、同大の受験生向けサイトには、ヤギの写真が掲載されています。
■鳥取環境大学 受験生向けサイト TUES Campus Guide
名実共に、大学の「顔」になりつつあるヤギ達。
地域に、そして学生の皆さんに、愛されています。
■「竹あかりで幻想ムード、新潟」(新潟日報)
新潟市美術館はこのほど、夜間に開館し、竹を使ったオブジェに明かりをともすイベントを同館中庭で開いた。水中に立てたり、波形に組み合わせたりした竹のオブジェが光で照らし出され、来館者は幻想的な雰囲気に酔いしれた。
同館で開かれている「ヨーロッパ・アジア―パシフィック建築の新潮流2008―2010新潟展」の関連イベント。
新潟大学工学部建設学科建築学コースの学生有志約20人と市内の建築士が共同で制作。設計から、竹の切り出し、組み立てまで1カ月ほどかけて完成させた。
(略)制作に参加した同大3年の伊井政樹さん(20)は「大変だったけど、今は充実感がある。学生の間に建築士の方と一緒に制作でき、貴重な体験になった」と話していた。
(上記記事より)
学生の皆さんが、自分の専攻で学んだことを駆使して街の活性化に貢献する。
双方にとってメリットがあり、地域の多くの方々も楽しめるような活動は、とても素敵です。
そんなわけで上記は、新潟大学工学部、建設学科建築学コースの学生さん達による活動。
リンク元の記事には写真も掲載されていますので、ご覧ください。
建築系の学生は、ある意味、街を活性化させるような仕事に一生関わるような部分がありますし、専門の勉強でも、そうしたことを学んでいます。
学生生活とこうした活動とが、結びつきやすい例かもしれませんね。
■「『神仏』で地域興し 遠山郷 愛大協力」(Asahi.com)
愛知大学(愛知県豊橋市)の研究者らが、飯田市の遠山郷で、地元に伝わる多様な信仰の歴史を活用した地域振興に協力している。「神様王国」と銘打ち、案内板を整備したり、ガイド付きのツアーを計画したり。地元では「広域観光の一環になれば」との期待が広がっている。
(略)地元には四国や関東にルーツのあるものを含め、様々な神仏をまつった、ほこらや塚などが集中している。各地から訪れた行者らが様々な信仰をもたらしたり、地元から遠方に出向いた商人らが神仏を勧請(かん・じょう)したりした歴史が背景にあると考えられている。
地元で10年来フィールドワークなどをしている愛知大の藤田佳久教授が、「こうした神仏を、歴史や文化を示す資源として活用し、この地域を一種の『癒やしの空間』にできないか」と発案。地元商工会などと話し合う中で、取り組みが具体化し、昨年、「遠山郷神様王国建設実行委員会」を立ち上げた。
藤田教授ら愛知大の関係者らは今月26、27日にも遠山郷を訪れ、今後の展開などを地元の人たちと話し合う。
すでに、33カ所の神仏を回る「三十三霊場めぐり」と題した散策路(約4キロ)を設けた。無くなった物が見つかる御利益があるという「愛宕様」など、伝承やいわれを案内板で紹介している。藤田教授らが研究成果を提供し、資料作りを手助けしている。
地元住民を対象にガイドの養成講座も始め、ガイド付きの散策ツアーを試行。体験・滞在型観光に役立つ講座の開設準備も進めている。
遠山郷への観光旅行を企画してほしいと、今年度は旅行業者の商品企画担当者らを招いたモニターツアーを2回ほど開きたい考えだ。
(上記記事より)
こちらは、人文科学系の研究成果が活かされた例。
↓サイトも立ち上がっています。
地域と一体になって、こうした文化的な資源を活用する。
こんな地域貢献の形もあるわけですね。
工学系や政策系、経営学系などだけが地域産業に貢献できるというわけではありません。
地元の大学だからこそ、その地域の文化的背景に関する研究成果もかなり蓄積されていることと思います。
その大学にしかできない、地域貢献のあり方です。
以上、3点ほど、ここ最近のニュースからご紹介しました。
この他にも全国で、様々な取り組みが行われていると思います。
ユニークな事例がありましたら、ぜひマイスターにお知らせください。
本ブログでも、できる限り紹介させていただきたいと思います。
でも、「地域貢献」と一口に言っても、そのあり方は本当に様々です。
余所の事例にとらわれることなく、その大学、その地域にあった方法をゼロから考えた方が、こうしたものはうまくいくのかもしれない、なんてことも思ったマイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。