マイスターです。
すべての講義をインターネットで行う「サイバー大学」。
通学せずに学士号が取れるというふれこみが話題となりました。
■サイバー大学の単位認定報道 問題は?
↑その分、単位認定の方法などで様々な報道がされたり、何かと注目されています。
さて、そのサイバー大学に関して、こんな話題を見つけました。
【今日の大学関連ニュース】
■「サイバー大、足で学生集め 開学2年 定員充足3割 営業マン1400校へ」(西日本新聞)
全講義をインターネットで行い、通学せずに学士号を取得できる「サイバー大学」(本部・福岡市東区)が、学生の確保に苦心している。現在の定員充足率は3割程度とあって、来年度の新入生獲得に向け、担当者が全国約1400高校に“営業”に出向くなどアナクロ的な取り組みも展開中。設置を認可した文部科学省も、無事に軌道に乗るか注視している。
同大は「IT総合」「世界遺産」の2学部を置き、定員は年各600人。2年目の現在は最大二1400人が在籍できるが、実際はそれぞれ501人、307人の計808人にとどまる。
学生獲得へ「まず考えられるのは認知度を上げること」と、同大広報部の岩永公就部長(32)。現役学生の24%はネットユーザーが多い東京在住で、次いで多いのが地元・福岡で2割弱。福岡以外の九州・沖縄、中国、北陸などは1割に満たない。この数字が、各地域における認知度を物語る。
大学側は昨年、インターネットや新聞に広告を出し、全国で約80回の大学説明会を開催したが、手応えが得られないまま、本年度の入学者は初年度を下回った。
そこで、今春から打って出たのが高校への直接攻勢。全国の1400校をターゲットに、飛び込みなどで大学売り込みを図ろうと、営業マンは奮闘の日々だ。
訪れたある高校の進路指導室前で営業の順番待ちをし、やっと自分の番となって入室しようとしたら、応対した教諭は「ここ(立ち話)でいいです。卒業生もいない大学に生徒を送り込むことなどあり得ない」と門前払い。担当教諭に会えても「大学のスタイルが市場ニーズに合っていない。ろくに調査もしなかったのでは」などと1時間にわたり意見され、結局はダメ出し。高校側の下す評価は芳しくない。(上記記事より)
……というわけで、入学者が定員を大きく下回っているというサイバー大学。
学生獲得に向け、高校教員に対する営業まわりなど、様々な努力をしているという内容の記事です。
現在の定員充足率は3割程度ということですから、普通の大学で考えれば、かなり深刻な事態ではあります。キャンパスを維持できず、廃校も覚悟しなければならないところでしょうが、サイバー大学の場合は、そのあたりどうなのでしょうか。
マイスターが思うに、サイバー大学の場合は、
「正課の学生定員2400人に対し、808人しか在籍はしていない。
が、科目等履修生が200,000人いる」
……みたいなモデルでも事業として成立しそうですし、またそういう方向を目指した方が成功しそうな気がします。
個人的には、ロングテールよろしく、「マニアックな講義だけど、日本中を探せば、それを学びたい人が30人はいる」みたいな授業をたくさんラインナップしてくれる大学になったら楽しいのに、と勝手に期待していたりします。
世の中には、マイナーだけど貴重な技術や知識を持っている隠れたプロフェッショナルがたくさんいると思います(例えば非常に特殊な条件下でしか使われない情報技術の専門家とか、日本ではあまり知られていない文明の研究者とか)。
例えばそんな人達の技術や知識を体系化・組織化し、授業の形で世に広く送りだせたなら、素敵です。
そして、そんな大学のあり方を成立させられるのであれば、サイバー大学は、他には真似できない存在意義を獲得できると思うのです……が、やはり正課の学生にこだわりたいのでしょうか。
また仮に正課の学生を増やすにしても、「高校を卒業してすぐにサイバー大学に入学」という学生にこだわる必要はないように思えます。
サイバー大学は、「地域や年齢、時間、ハンディキャップの有無を問わず幅広い学びの場を提供し、教育格差の解消」を謳っている、完全通信制の大学です。
開講されている授業を見ても、展開されている教育スタイルも、高校生というよりは、どちらかといえば何らかの職を持っている人や、逆に定年を向かえた方など、「キャンパスに毎日通うのは難しいが、学ぶ意欲は旺盛な方々」がターゲットのように思えます。
高校まわりをして、システムや学習内容などを高校教員の方々に認知してもらったとしても、生徒達にこのシステムを勧めようと思うかどうかは、ちょっとマイスターにはわかりません。
■「IT総合学部」(サイバー大学)
■「世界遺産学部」(サイバー大学)
↑実際、サイバー大学のサイトに掲載されている「学生の声」に登場するのも、職を持って働いている方々ばかりですし。
この路線をさらに追求したらいいのではと思うのですが、どうなのでしょうか。
ちなみに、どうしても高校生にPRをしたいのでしたら、普通の高校卒業生として普通に入学し、大学レベルの自学自習を身につけ、議論や表現の力を身につけてきた……といった、高校生のモデルになるような在学生をサイトなどで取り上げていくと良いように、個人的には思います。
以上、報道を見ながら、そんなことを思ったマイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。