マイクロソフト 大学革新のためのIT戦略

マイスターです。

前から書こう書こうと思っていながら、先延ばしにしてしまっているトピックがありましたので、この機会にご紹介しておきたいと思います。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「企業市民活動ニュース:アカデミック関連」(Microsoft)
http://www.microsoft.com/japan/presspass/archives/citizenship.aspx#01

■「大学人材育成支援プログラム」(Microsoft)
http://www.microsoft.com/japan/education/univ_partnership/default.mspx
————————————————————

ともに、ご存知マイクロソフト社のサイトです。
同社は、大学との連携をけっこう活発に行っているのですね。

一つめのリンクは、同社のアカデミック関連活動についてのプレスリリースをまとめたページです。
リリースを見てみると、情報技術者の育成や、先進的な教育環境の構築に関する研究、情報のアクセシビリティ研究などの切り口で、大学と連携しているようです。
なるほど、いずれも同社にとっては、将来的に非常に重要になってくるテーマ。
中長期的な計画として、大学とじっくり研究を進めているということでしょう。

(マイスターも、東大のTREEMEETといったプロジェクトに個人的に関心があるので、サイトをたまに見ています)

二つめのリンクは、マイクロソフトの「大学人材育成支援プログラム」の案内ページです。

高度 IT 人材の育成という社会的なニーズに応えるため、マイクロソフトが最先端のスキルと実社会の経験をもった社員講師の派遣やカリキュラム、教材の提供などを通じて、大学における IT 関連講座等の開設や運営を支援するプログラムです。(上記リンクより)

先ほどのリリースに掲載されていた活動も、このプログラムによるものがいくつかあるようですね。

このように、自社のコア分野で産学連携を進めているマイクロソフト。
ただ、程度や分野の差はあれ、他の大手電機メーカーなどもこういったことはおそらく行っているでしょう。

マイクロソフト社の取り組みで特に「おぉっ!?」と思わせるのは、↓このあたりの動きなんです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学CIOフォーラム」(Microsoft)
http://www.microsoft.com/japan/education/univ_cio/default.mspx
————————————————————

マイクロソフト社は「大学のトップ」向けに、何度かフォーラムを開催しています。
その名も、大学CIOフォーラム。

少子化、国際化など大学を取り巻く環境の変化に対応するため、大学の CIO、情報担当理事、情報関連機構/センターの責任者が継続的に参加し、IT に関する大学共通の課題についての情報共有や今後の方向性の議論を通じて、大学における IT 戦略の策定や IT ガバナンスの確立を支援するフォーラムです。
(上記リンクより)

「大学の CIO、情報担当理事、情報関連機構/センターの責任者が継続的に参加し」
「大学における IT 戦略の策定」「ITガバナンスの確立を支援する」
……というのがポイントです。

ITベンダーと大学……という組み合わせからは、「どかんとシステムを組んで、サーバーやら教育用インターフェースをごっそり受注! 各社の入札合戦!」みたいな構図を想像してしまいがちです。

もちろんマイクロソフトも、そういう従来型のビジネスモデルを持ってはいるでしょう。でもこのCIOフォーラムの活動記録を見てみると、同社の、何か遠大な戦略を感じます。

「自社のソリューションを採用してもらおう」とか、
「大学と協力して、いいソリューションを開発しよう」とかいうレベルではなく、

「大学の新しいガバナンスを、自らが主導して作ってしまおう」

という戦略が見え隠れしているように思えます。

それを端的に示しているのが、↓こちらではないでしょうか。

■「大学革新のためのIT戦略(提言書)」
http://www.microsoft.com/japan/education/univ_cio/summary.mspx

提言自体が作成されたのは6月頃ですから、既にご覧になった方も多数おられるのではないでしょうか。

この提言書、マイクロソフトではなく、同社が事務局を務める「大学CIOフォーラム」が発行した、という体裁になっています。そのためか、他のITベンダーがプレゼンで提示するような資料と一見似ているようですが、現状分析だけにとどまらず、「将来のあるべき大学組織は何か」という構想を入れ込んでいるのが特徴かと思います。冒頭でご紹介したマイクロソフトのリリースにある、同社と各大学との研究プロジェクトにおける「実践成果」も随所に盛り込まれていて、読んでいるとけっこう面白いです。

企業コンソーシアムの活動成果報告書みたいな感じでしょうか。広く読んでもらうことを前提に作ってあるので、読みやすいです。
もっとも具体的な提言が随所にあるとはいえ、全体としてはあくまでも各分野の「方向性を示す」ガイドライン程度の記述がほとんど。それゆえ現場レベルのプロフェッショナルな担当者にとってはもしかすると、やや総花的で内容のつっこみが浅いかな、と感じられるかもしれません。

しかしそれは裏を返せば、様々な大学で広く参考にしてもらえる可能性がある、ということでもあります。
狭い意味でのIT分野の話に限らず、大学の管理運営組織のあり方と結びついた内容にしようという姿勢も見受けられます。これを、大学業界の「責任者層」達を巻き込んで作る体制にしたあたり、マイクロソフトの「本気度」を感じるマイスターです。
本気で乗り出したら各方面への影響力が大きい企業なだけに、今後の動きからも目が離せません。

この「大学革新のためのIT戦略(提言書)」、マイスターの手元に一冊あるのですが、大学のIT環境構築を考えるための参考資料としては、とてもよくまとまっていると思います。上述したリンクからダウンロードもできるようですから、大学のIT環境構築やガバナンス設計に関わる方なら、「提言」をそのまま採用するかどうかはともかくとして、試しに読まれてみるのはいいんじゃないかな、と思います。

以上、マイスターでした。