マイスターです。
昨日、サイバー大学定員割れという話題をご紹介したばかりですが、ほぼ同時にこんな報道がされていました。
【今日の大学関連ニュース】
■「株式会社大学の大阪・LCA大、経営難で募集停止へ」(読売オンライン)
構造改革特区制度を利用して株式会社が設立した大阪市の「LCA大学院大学」(学長・山崎正和中央教育審議会会長)が、来年度の学生募集を停止する方針であることが17日、明らかになった。学生が定員を大幅に割り込み経営難が続いているためで、廃校を視野に入れた対応だ。
LCA大は、2006年に経営コンサルティング会社「日本エル・シー・エー」(東京・東上野)の子会社が開校した。大卒者を対象に2年間、平日夜や土日に講義を行い、実践的な企業経営を教えている。定員は140人で、学生には会社員が多い。ただ、学生数は開校以来、定員に届かず、現在は24人だ。また、7月には親会社が債務超過を公表、経営陣の交代を機に事業見直しを進めていた。
LCA大は「廃校を決めたわけではない」とし、在学生が卒業する10年3月末までは講義を続ける方針。しかし、この時期までに資金が調達できなければ廃校とする方向で検討している。大学では「親会社の経営悪化や学生の集まりの悪さについて読みが甘かった」としている。
(上記記事より)
■「株式会社大学のLCA、2009年度の学生を募集せず──在学生卒業後に閉校も検討」(NIKKEI NET)
LCA大学院大によると、現在の学生数は2学年合わせて25人。06年4月の開校以来、1学年70人の定員は一度も満たさず、新入生は06年度の19人から08年度は8人に減少。授業料収入などでは必要な教職員を維持できなくなった。
教職員の給与を引き下げるなどコスト削減を進めたが、親会社でコンサルティング業の日本エル・シー・エーの経営状況が悪化。金融機関から学校運営に必要な資金の融資を受けにくくなっていることも影響したという。文科省には今年10月末に募集停止を報告。11月には在学生や教職員に説明した。
(上記記事より)
株式会社立大学として設立された「LCA大学院大学」が募集停止。
まだ廃校すると決まったわけではないとのことですが、可能性は高いと思われます。
廃校になった場合、株式会社立大学としては初のケースになります。
文部科学省は18日、特区内の規制緩和の全国拡大を検討する政府の「評価・調査委員会」に、こうした状況を報告する予定だ。
(「株式会社大学の大阪・LCA大、経営難で募集停止へ」(読売オンライン)より)
……とあります。
「ほら、だから言わないこっちゃない。株式会社じゃ大学は運営できないんだよ」
という批判が、文科省を始め、色々なところから出てきそうです。
もっとも、学校法人として運営されている大学の方でも募集停止や廃校が相次いでいるので、株式会社だからどうというわけでもないような気もしますが。
引き際の決断の早さも目をひきます。
ただこれも、70人の定員に対して入学者は十数人、なんていう状態が2年も3年も続けば、普通の学校法人でも何らかの決断を迫られるでしょう。
しいて言えば、「株式会社立大学だから、学校法人に比べて募集停止の決断がしやすい」という要素は、ちょっとあるような気はしました。
【学校法人として(つまり国が決めたルールに従って)大学を開く場合】
→校地・校舎の準備や書類の整備、各種ルールの設定などに莫大な時間と資金を投じなければならない。
→定員割れが数年続いたとしても、そんなに簡単には廃校にできない。
【特区による株式会社立大学の場合】
→校舎はリースでも可。開校までに、必ずしもあまり大規模な投資を必要としない。
→あまり投資をしていない分、(学校法人に比べれば)廃校しても失うものが少ない。
……という印象です。
卒業生や在学生の立場から考えれば、簡単に募集停止をしてしまうような大学は、困った存在以外の何者でもありません。社会的にも、あまり信用はされないでしょう。
例えば仮に廃校になったとしても、LCA大学院大学はちゃんと卒業生達の成績などを管理保存し、証明書などを発行する体制を整備するのか、ちょっと気になります(これは、ちゃんとやってほしいです)。
気になる点は、山ほどあります。
一方、見方を180度変えると、以下のような考え方もできると書きながら今、気づきました。
「ひどい定員割れを起こし、再起の可能性は低い状況にもかかわらず、各種の制度で国から優遇され、公的な助成金を得ながら生きながらえ、廃校を決断できない大学」
……も、学校法人が運営する大学の中には、少なからずあるのではないか。
そういった学校が、引き際を決めずに助成金を受け続けているのは、果たして社会的に良いことなのか、悪いことなのか。
そんなことを考えると、株式会社立大学と、学校法人による大学と、どっちが社会にとって良いとは、必ずしも言えないような気もしてきました。
うーむ。
ただ、
<LCA大学院大学が構想した大学は、学生を集められなかった。つまり、社会的に必要だと思われなかった>
ということが、今回の募集停止の原因であり、これは株式会社とか、学校法人とかいったこととは、直接的には関係がないことのように思います。
個人的には、誰がどんな形でつくろうと、良い大学であるのなら大歓迎です。
こんな事例が出てくると、大学を設立しようという企業は今後、減るかも知れませんが、チャレンジするという企業が出てくるのであれば、見守りたいです。
ところで話は変わりますが、今、LCA大学院大学のwebサイトは、こんな状況です。
■「LCA大学院大学」
「It works!」という文字が、12/18の時点では表示されています。
これは、「サーバーは落ちずにちゃんと稼働しています」という意味で、サーバーアプリケーションのデフォルト画面です。
具体的に言うと、おそらく管理者サイドが、「LCA大学院大学」のwebサイトの画面のHTMLファイルをすべて削除したか何かの理由で、こんな画面が出ているのですね。
(アクセスが集中してサーバーが落ちたのであれば、そもそもこの画面も出ません)
大学側が、サイトの情報をすべて意図的に消したのだとしたら、ちょっといかがなものでしょうか。
学生や卒業生など、関係者は不安がっていると思います。報道を否定するにも、肯定するにも、ちゃんとリリース文を出すべきなのでは。
少なくとも、「サイトを削除する」というのは、解決になっていないように思います。
これじゃ、まるで夜逃げみたいです。
(「もう入学者は必要ないのだから、サイトも無くたっていいだろう」、という意味でしょうか……うーむ)
■「経営コンサルティングの日本エル・シー・エー」
■「昨日の報道記事について(PDF)」(日本エル・シー・エー)
↑運営元の企業のサイトのIRコンテンツには、「昨日の報道記事について」という、なんだか、敢えてわかりにくくしたようにマイスターには感じられるタイトルのリリース文が掲載されています。
こういったところは、大学云々にかかわらず、あんまり良い対応だとは思いませんでした。
経営側からの続報を期待したいところです。
あと、経営コンサルティング会社にとって、経営に失敗するというのは致命的なことのような気がするのですが、どうなんでしょう。
……と思って株価を調べてみたところ、
■「(株)日本エル・シー・エー」(NIKKEI NET 株価サーチ)
……とこのように、現時点では特に大きな動きはないようでした。
「どうせメインの事業じゃない」
「本体にあまりダメージは与えないだろう」
……と株主は判断したということでしょうか。
あるいは大学事業に関しては、もともとあまり期待をしていなかったのか。
それはそれで、どうなのかという気もしますけれど。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。