マイスターです。
■大学のキャラクター活用(1):キャラクターを使う理由って?
■大学のキャラクター活用(2):「あらゆる場面で使える」キャラクターをつくろう
せっかくデザインした大学の公式キャラクターも、あまり活用されないようではもったいない!
webサイトから大学案内など、いたるところで使い倒そう!
……ということを書かせていただきました。
では、徹底的にキャラクターを使い倒している大学の例をご紹介したいと思います。
■「武庫川女子大学」
兵庫県にある武庫川女子大学です。
その公式キャラクターは、うさぎの「Lavy」。
■「Lavyのページ」(武庫川女子大学)
名前:Lavy(ラビー)
愛情あふれる優しい女性に育ってほしいと、ウサギ(Rabbit)と愛(Love)から名付けられました。
特長:何も持たず、シンプルな白いワンピースを着ているLavyはピュアな女の子です。
これからの時代を生きる利発な女性の感性を、黒うさぎは表しています。
何にもとらわれず自由で、無限の可能性を持ち、成長している学生のイメージです。
(上記ページより)
……という設定のこのキャラクターは、学院創立70周年記念事業の一環として生まれました。
■「Lavyが誕生するまで」(武庫川女子大学)
キャラクター制作は、2009年の学院創立70周年記念事業の一環として行っています。
武庫川女子大学・短期大学部の学生や附属中高生、附属幼稚園児はもちろん、卒業生や教職員にも親しめ、長く愛されるキャラクターを制作するため、学生・生徒・卒業生・教職員のアイデアを基に、プロのデザイナーがイラストを仕上げるコラボレーション方式で企画しました。
(上記ページより)
誕生の過程は、↑こちらのページにまとめられていますので、ご興味のある方はご覧下さい。
採用された作品以外の案も掲載されています。
マイスターが「おぉ」と思ったのは、このLavyの使われ方。
まずこのLavy、2008年4月に誕生したばかりのキャラクターなのですが、さっそく4月の新入生ガイダンスに、着ぐるみが登場しています。
↓こちらの「4月」のムービーで、その様子が紹介されています。
■「武庫川女子大学 動画ニュース」(武庫川女子大学)
公式キャラクターの着ぐるみをつくっている大学はけっこうあると思いますが、こういう形でお披露目する例はあんまり聞きません。
ちなみに「8月」のムービーは、卒業生が北京オリンピックのカヌー種目で入賞したことを報じる映像なのですが、カヌーを漕ぐLavyのイラストがちゃんと入っていることに注目です。
大学サイト内にも、とにかくたくさんのLavy。
↑まずTOPページにも、さっそく目に入るところにLavyがいます。
複数の画像リンクに使われているので、TOPページだけでも、かなり印象に残りそう。
■「武庫嬢たちのキャンパスライフ」(武庫川女子大学)
↑こちらでは、たくさんのLavyがアイコンのように使われています。
■「受験生を応援するためのメールマガジン「Lavy Club」開始。武庫川女子大学のキャラクター・Lavyが受験Lifeを応援します。」(武庫川女子大学)
↑もちろん受験生向けの案内にも。
受験生向けメールマガジンの名称が「Lavyクラブ」。案内にも、大きなイラストが載っています。
受験生向けの「武庫川女子大学」のイメージとして、Lavyを使っていこうということなのかなと思います。
■「売店・ブックセンター/食堂・カフェ(中央キャンパス)」(武庫川女子大学)
↑売店や学食の案内にもLavy。
さっそく大学オリジナルグッズにもなっているようで、キャンパス内の売店で販売されているようです。
■「キャラクター「Lavy」のクリアーホルダー (黄色、水玉) 100円 」
■「Lavy刺しゅう入り ミニタオルハンカチ (ホワイト、グリーン、イエロー、ブルー、ピンク) 150円」
プロが最終的にデザインしたということもあり、まったく違和感がありません。学生さんにも人気が出そうです。
(各大学も公式キャラクターを持っていると思いますが、グッズにしてみたときに学生さんは欲しがるだろうか……と考えてみてください)
ここまででも公式キャラクターの活用っぷりとしては目立つ方だと思いますが、このLavy、さらに大きな展開を見せました。
【今日の大学関連ニュース】
■「大学キャラ・黒ウサギ 絵本に…武庫川女 学院70周年で 」(読売オンライン)
武庫川女子大(兵庫県西宮市)の学生らが、大学のPRキャラクターの黒ウサギ「Lavy(ラビー)」を主人公にした絵本「うさぎのラビーといろきりばさみ」(A4変形判、16ページ)を出版、30日から販売する。大学を運営する武庫川学院創立70周年記念事業の一つで、絵本の制作は初めて。3000部を制作し、西宮市内の全幼稚園に寄贈する。
同大学には付属幼稚園があり、幼児教育に力を入れている特徴をアピールすることにもつながると出版を決めた。ラビーが色を切り取る不思議な「いろきりばさみ」を使い、青空や虹などを切り取っていくストーリー。豊かな色彩で、幼い子どもにも読みやすい構成になっている。
物語は学生や教職員から寄せられた77点から、大学院薬学研究科2年の鄭婀美(ていあみ)さん(25)(神戸市長田区)の作品が選ばれた。絵はイラストレーターの舩引亜樹さん(38)(同市中央区)が描いた。
鄭さんは「ささやかな日常の光景から、きれいな色を切り取りワンピースが作れたらと空想したことを、ラビーにかなえてもらった。自分の文章が本になってうれしい」と喜ぶ。舩引さんは「文章を引き立てる絵が描けた。多くの人に読んでほしい」と話した。
(上記記事より)
ぶっちゃけ今回、大学のキャラクター活用などという記事を書きたくなったのも、元はと言えばこのニュースを見かけたからです。
■「Lavyの絵本プロットアイディアコンペ 結果発表」(武庫川女子大学)
大学のPRキャラクターとして生まれたLavyが、学生さんのストーリーをもとに、絵本化されました。
市内の全幼稚園に寄贈すると同時に、市販もされます。
↓すでに、Amazonで買えます。
武庫川女子大学には附属幼稚園があります。
教育学科では幼稚園教諭一種や、保育士の資格を得ることもできますし、短大には幼児教育学科もあります。その意味では、大学として絵本を制作するというのは、確かにイメージにぴったり。
市内の全幼稚園に寄贈というのも、地域貢献になるでしょう。
それに、この「Lavy」の絵本を大学がシリーズ化し、長く愛される作品にまで育てられたら、大学のイメージにもかなり良い影響を与えると思います。
小さい頃に読んだ絵本って、結構、覚えていますし。
大学のキャラクターと知らずにLavyの絵本を読んで育った高校生が、オープンキャンパスで武庫川女子大学を訪れ、「Lavyだぁ! ……しかしなぜLavyがここに!?」と驚くようなシチュエーションができたら、ちょっと楽しいです。
学生さんの公募で毎年一冊、Lavyの絵本シリーズが刊行されたりしたら、素敵ですね。
大学の新たな特徴・個性になりそうです。
もちろん大学も、サイトでこの絵本を紹介しています。
売店でも購入できるみたいですね。
■「学内公募で制作したラビーの絵本「うさぎのラビーといろきりばさみ」が刊行!」(武庫川女子大学)
■「ラビーの絵本が誕生! 学内公募で制作した「うさぎのラビーといろきりばさみ」が刊行、作者の学生らが記者会見し、新聞記事にもなりました。」(武庫川女子大学)
しかも、
鮮やかな色彩と詩的な文章でつづる、子供から大人まで楽しめる絵本に仕上がっています。絵本は西宮市内の全ての幼稚園に寄贈し、今後は点訳絵本、目の不自由な子供が触れて楽しめる「さわる絵本」、英訳本なども発行。さらには、音楽学部の畑儀文教授が考案した絵本オペラにもして公演する予定。絵本オペラは大きな絵本を見せながら、少人数の歌手がピアノと打楽器の伴奏に合わせて歌うオペラです。
(上記記事より)
……と、さらなるメディアミックスが行われる模様。
教授の考案した「絵本オペラ」(!)にも登場するそうです。
「大きな絵本を見せながら、少人数の歌手がピアノと打楽器の伴奏に合わせて歌うオペラ」って、想像するとなんだか楽しそうです。
4月にデビューしたオリジナルキャラクターが、年内にもうここまで展開されているという点が、企業ならともかく、大学業界ではとても珍しいと思います。
最初からこれらの企画がある程度織り込み済みで、同時並行で準備が進められたのか、それとも4月以降に続々と企画が立ち上がったのかは分かりません。
いずれにしても、ここまでやれば、学内にも学外にも、徐々に認知されていくでしょう。
大学のPRキャラクターとしてはかなり効果的だと思います。
大学側が企画をうまく主導し、学生や教員が創作に関わりながら、プロジェクトを波及させていくという流れも見事だなぁ、と感心させられました。
絵本のように目に見える成果として外部から取り上げられれば、参加した方々の意欲もあがるでしょうし、「自分も関わりたい!」という方も増えるのではないでしょうか。
それでこそ、キャラクターも学園関係者から、長く愛されるものに育っていくのかな、と思います。
企業も大学も、とかく「つくった」という事実だけで満足してしまいがちな、キャラクター。
しかし考えてみれば、キャラクターは、使うためにつくるわけです。
徹底的に使わなければ、キャラクターに命が吹き込まれません。
そしてもうひとつ。キャラクターは、「育てる」ものでもあるのですね。
学園関係者が愛し育ててあげることで、キャラクターは活き活きと個性を発揮していくのかなと思います。
特に大学は、長く存続する組織ですし、学生や教職員、受験生や卒業生、地域の方々などなど、関わる方も多いですから、なおさら、キャラクターを長く大事にしていくことが大切なのかなと思います。
武庫川女子大学の「Lavy」から、改めてそんなことを考えさせられました。
大学を考える上で参考になる事例だと思いますが、いかがでしょうか。
以上、3回にわたって大学のキャラクター活用をご紹介して参りました。
今後も、こういった取り組みがあれば、ぜひご紹介していきたいと思います。
情報がありましたら、教えていただければと思います。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。