美しい建築を見に行くのが趣味の、マイスターです。
建築学科卒ですが、現在やっている仕事には今のところあまり建築は関係しておりません。
しかしこれでも、建築家を目指して高校3年生から建築を分析して模型を作りはじめ、大学院までみっちり、環境デザイン演習の授業をとっておりました。
仕事には活かせていませんが、面白い建築や美しい建築には「おっ」と体が反応してくれますし、多少遠くても、見に行きたいなぁと思います。
そんなマイスターにとって、↓こういった記事は、二重に興味深いです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「『名所』で学生奪え 大学のユニーク建物」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/university/zennyu/TKY200708270220.html
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施設のデザインに凝る大学が増えている。宇宙を思わせる図書館、文化遺産を生かしたレトロ調の教室、自然の息吹を感じさせるアート空間……。少子化に伴って学生争奪戦が激しくなっているだけに、「名所」づくりに腐心する大学が後を絶たない。各地で話題のユニークな建築物を上、下の2回にわたって紹介する。
(上記記事より)
というわけで、「ユニークな空間」や「美しい環境」を構築することで、差別化を図ろうとする大学が増えている……という特集です。
……と記事にはありますが、個人的には、別に大学がユニークな建築を作ったからといって、そのすべてが「受験生獲得」を目的にしたものではないと思います。
むしろ、キャンパス内の環境を構築する際には、そこで学ぶ学生のために、いかに良い学習体験を準備できるか……という、教学上の思惑の方が大きく働いているんじゃないか、と考えます。
ですから、「『名所』で学生奪え」という、冒頭の記事のタイトルは、若干言い過ぎかな、という気もします。
ただ。
そうは言っても、キャンパス内の物理的な環境というのは、受験生にとっては非常にわかりやすい「見どころ」です。
素敵なキャンパスに憧れて志望校を決めるという受験生は、今も昔も少なからずいることでしょう。
マイスター自身、建築学科の学生の頃、建築ガイド雑誌の記事を書くバイトで某女子短大のキャンパスを取材し、ものすごく広報の方にもてなされた経験があります。
(↓そのときの体験談はここに!)
(過去の関連記事)
・建築ガイド本で、女子短大キャンパスを紹介するという体験(2006年06月01日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50203347.html
そう考えると、やはりキャンパスが素敵であるに越したことはないのです。
そして素敵な環境を整備したら、「これを受験生にアピールしたい」と思うのは当然です。
キャンパスの環境をキレイにした翌年は、大学パンフレットの表紙や公式webサイトのトップページなど、広報物が全部その建物の写真、なんてこともよくあることなのではないでしょうか。
というわけで、前置きが長くなりましたが、冒頭の記事では最近の「ユニーク建物」が紹介されています。
成蹊大(東京都武蔵野市)で昨秋にオープンした情報図書館。中央がガラス張りの吹き抜けで、明るく開放的な空間が目に飛び込んでくる。その吹き抜け部分に、ポッカリと浮かぶようにグループ閲覧室が五つ置かれている。「プラネット(惑星)」と呼ばれ、学生たちの勉強会やゼミに使われている。
系列の成蹊高校の卒業生で、国内外に知られる建築家、坂茂(ばん・しげる)氏らが設計した。各階の窓沿いにはガラス張りの個室閲覧室が計266室ある。インターネットで外界につながるのを除くと私的な空間となり、照明も空調もお好み次第。図書館全体が、交流エリアから静かな学習エリアへと次第につながる構造だ。
(上記記事より)
坂氏は9.11で崩落したワールド・トレード・センターの再建コンペにおいて、最終候補案2点に残ったというほどの建築家です(残念ながらWTCでは次点でしたが……)。
というわけで実を言うと、既に先日、この図書館は見てきました。
外からガラス越しに見ても非常にユニークな建築で、しかも、成蹊大学の正門を通ってすぐのところにあるのです。誰もが必ず目にする場所です。
図書館としても非常に便利でしょうが、PRの上でもおいしい存在です。
■「情報図書館のご案内」(成蹊大学)
http://www.seikei.ac.jp/gakuen/100th/jigyo/info_lib-2.html
詳細は↑こちらをどうぞ。
もちろんただデザイン的に美しいというだけではなく、活発な活動を誘発するといった機能的、教育的な面からも考えた上での、この形なのでしょう。
いいなぁ、うらやましいなぁ。
キャンパスにこんな空間があったら、デザイン系の学生さんだったらきっと、大喜びでしょう。
……と思っていたら、冒頭の記事では↓こんな例も紹介されているではありませんか!
武庫川女子大(兵庫県西宮市)は昨春、女子大で初の建築学科を設けた。その学生が学ぶ上甲子園キャンパスの校舎は、旧甲子園ホテルだ。
昭和初期にできたこの名門ホテルは、20世紀建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライトのまな弟子、遠藤新(51年没)が手がけた。「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と並び称され、政財界人や軍人の社交場としてにぎわった後、同女子大の創設者が戦後に買い取った。
畳1畳ほどもある製図机とコンピューターが並ぶスタジオは、かつて食堂だった。シャンデリアや天井の形に「ライト調」が見て取れる。「洋式に和の要素を巧みに融合させた建物は壁、かわら、彫刻に至るまで丸ごと芸術品。生きた教材です」と、榊原潤教授。
(上記記事より)
学生時代のマイスターが聞いたら、「うらやまし死」しそうなくらい、うらやましい話です。
■「甲子園会館」(武庫川女子大学 建築学科・建築学専攻)
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~arch/education/concept/contents/educationHist00.html
■「甲子園会館 諸室紹介」(武庫川女子大学 建築学科・建築学専攻)
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~arch/education/concept/contents/educationRoom01.html
建築を学ぶには、優れた空間を体験することが必要不可欠。
その点で、教育的にも最高に贅沢な環境です。
ディテールのデザインをするときも、教室にメジャーあてたら、そのまま参考になるではありませんか……。
それに、面積が余っているのか、ものすごく空間の使い方が贅沢みたいです。
同大ではこの恵まれた環境を活かし、学部1年生から一人一人占有のデスクを持てるそうです。しかも↓こんな空間で、ですよ。
■「武庫川女子大学建築学科の欧米型スタジオ教育」(武庫川女子大学 建築学科・建築学専攻)
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~arch/education/concept/contents/educationSt01.html
このように、これらの建築はいずれも単なる「受験生集めのための飛び道具」ではなく、教育的にも目玉になるような環境です。
こういう建築を整備して、かつうまくPRできれば、本当の意味で受験生が集まるかも知れませんね。
(ついでに建築好きのブロガーも……)
冒頭の記事は、二回にわたって掲載されるようです。
個人的に、後半も楽しみです。
以上、マイスターでした。