『ウェブ進化論』は大学関係者にとっても刺激的だ

そう言えば、最近読んだ本をブログでご紹介できていないな、と思ったマイスターです。

最近読んだ中でも、いくつか興味深い本がありました。
やはりそうした情報は、どんどんwebで公開していかないとなぁ、と反省。

マイスターもwebをうろついていて、他の方がブログやAmazonのレビューでほめているのを見つけて気になって、実際に買って読んでみる、ということをよくします。
世の中の本すべてを自分で読むことは不可能ですが、ネットユーザーがweb上で、読んだ本の情報をコメント付きで公開してくれているおかげで、私達が良書に巡り会う可能性は(ネット登場以前と比べて)飛躍的に高まっていますよね。

大新聞の書評欄などでも、「どの本が、どういう方にオススメか」という情報は得ることはできますし、それはそれで価値のある便利な情報に違いありません。
一方、検索エンジンによって、こうしいてweb上で多くの人々が言及した本を見つけるという行為も、現代においては、面白い本と出会える一つの方法ですよね。

というわけで、↓ご紹介します。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

著者の梅田望夫氏は、94年からシリコンバレーを拠点に活躍されているコンサルタントです。自らコンサルティング会社やベンチャー・キャピタルを創業し、現在は「株式会社はてな」の取締役でもあります。

自らのブログや、ネットメディアを中心にした連載記事などを執筆して来られていたので、ご存じの方も多いかも知れません。
教育業界ではなじみが薄いかも知れませんが、IT産業、情報産業などで働く人達の間では、かなりの有名人です。

■mochioumeda.com
http://www.mochioumeda.com/

■My Life Between Silicon Valley and Japan
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/

■英語で読むITトレンド
http://blog.japan.cnet.com/umeda/

今回ご紹介する『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』は、梅田氏がこれまでに発信してきたような内容を、IT関係者以外の方にも読みやすいように、一冊の本に整理してまとめた本です。

95年頃から爆発的に普及してきたインターネットは、山ほどの企業サイトや個人webサイトを産みだしました。
その後、Yahoo!やAmazon.comはwebを使って新しいメディア、新しい市場を作り出そうとし、97年に登場したGoogleは検索エンジン技術で世界の「知」の再編成をもくろみだしました。今ではブログやSNSなど、自由に表現活動に参加できる仕組みがwebによって個人個人の間に拡がってきている…。

そんなこれまでのwebの歴史と、今後のwebの「進化」を論じた本です。

Google Maps、ロングテール現象、Web2.0、wikipediaなどといったキーワードが、「これから、webがどうなっていくか」「今後、我々人間の産業や、社会生活がどうなっていくか」という視点で整理され、非常にわかりやすく解説されています。

マイスターも、メディアについて大学院で学び、ITを使った産業で働いておりましたから、こうしたキーワードはすべて理解していたつもりだったのですが、この『ウェブ進化論』はそれでも刺激的で、面白かったです。

大学関係者にとっても、オススメです。

この本のメインテーマの一つである、「『情報を適切に整理し、人々の元に届ける技術』が、どれだけ我々の文明をドラスティックに変えるか」ということがわかります。

大学というのは、古来より脈々と続く、歴史ある組織形態ですよね。
研究者がこつこつと研究して知を生み出す。
「権威」としての大学教授が、学校に通う学生一人一人にその知を授ける。
社会から、「知」の権威として認められることで成立している事業、それが大学です。

ところがこの本が示唆しているのは、その「知」の在り方が今後、webと、web上で展開される数々の情報整理・編集技術によって変わっていく、変えられていくのではないかという可能性です。

マイスターなどは、「そのうちいつか大学の在り方とか、社会での役目とかは変わっていくんだろうなぁ」なんてのんきに考えていましたが(これでも、「ずっと変わらないだろう」と思っている人よりはマシですが)、その「いつか」は、40~50年くらい後だと、漠然と思っていました。

でもこの本を読むと、10年後くらいから、大学は少しずつ自分達の在り方を考え直さざるを得なくなるんじゃないかな、なんて思えてきます。

この本で言及されている、現代から今後に続くweb社会の在り方はどこをとっても、大学と、そこで行われる「知」の生産、発信行為に大いに影響がありそうなのです。

というか、大学に限らず、あらゆる知識産業の在り方を揺るがす動きが起こる可能性を、この本は指摘しています。

そんな、刺激的な内容であることが知られてきたのでしょう。最初はネット業界だけで話題になっていたこの本ですが、最近では、書店に行くと売れ筋本コーナーに平積みになってます。

梅田氏の書かれた文章は、上述した個人ブログだけでなく、ちょっと検索するだけでいっぱい出てきます。

■「ウェブ進化論」著者、梅田望夫さん(45)に聞く(上)
http://www.asahi.com/digital/column/column03_1.html

■ブロガーと梅田望夫が語る「どうなる? マスとネットの力関係」 (1/3)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/08/news070.html

■「ウェブ進化論」の梅田望夫氏が語る“Googleという隕石”(前編)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060301/231341/

こうした文章を読まれて、「あ、おもしろそう」と思われた方は、ぜひ手にとっていただければと思います。読んで損はしません。

本当なら、組織のトップで大学を動かしているエスタブリッシュな方々に読んでいただきたい内容なのですが、そういった方々は、工学系の研究者でもない限り、なかなかこうした本を読まれないのでは…と想像します。

この本には、情報や知識を世間に広める従来型の「権威」として活動されている方々を不快にさせるような内容も含まれている気がしますから、仮に読まれたとしても、梅田氏の描くビジョンをあんまり本気にされないかも知れません。

それでも、一読の価値有り!とマイスターはオススメします。

よろしければ、どうぞ、

以上、本の内容はぜひご自身で確認してみてください、なマイスターでした。

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参考:
・「ロングテール」を捕まえろ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50093005.html

※最近、ブログのアップ予約がうまくいかないなぁ…?