夏休みの自由研究にも役立つ? 大学の理科・科学教室イベント

マイスターです。

気がつけば8月。学校は、夏休みの真っ最中です。
小中学校のときの、夏休みの宿題と言えば、自由研究ですね。

最近では、企業や博物館、公共団体などが、親子向けの夏休み理科体験イベントや工作教室などを開いていることも多いです。
いくつかテーマが用意されていて、その中のどれかに参加するというスタイルが基本。一日で複数のテーマを体験できるイベントも見かけます。

そんな体験イベントの主催者として多いのは、大学。
理学系や工学系、生命科学系などの大学が中心となって、こうしたイベントをよく行っています。
社会貢献として、あるいは大学生の教育の場として、何年も継続的に取り組んでいるところもあります。

ちょっと調べてみただけでも、たくさんのイベント案内が見つかります。

■「工学院大学わくわくサイエンス祭 理科教室」(工学院大学)

■「東北大『夏休み子ども科学キャンパス』-小学生180人が科学に挑戦」(仙台経済新聞)

■「桐蔭横浜大学が『おもしろ理科教室2008』開催」(大学プレスセンター)

■「夏休み理科教室(高校生対象) 」(東邦大学理学部)

■「生研公開 2008 : 理科教室」(東京大学生産技術研究所)

■「おもしろ理科教室」(桐蔭横浜大学)

■「 第11回 リフレッシュ理科教室(三重大学会場)開催のお知らせ」(三重大学)

■「大阪大学産業科学研究所:阪大複合機能ナノファウンダリ『夏休みナノテク理科教室』」(大阪大学)

■「東海大学サマーセミナー『理科教室ボランティア講座』」(東海大学)
※↑こちらのページは、ボランティア希望の学生向け

小学生から中学生、高校生まで、イベントの対象は多種多様。親子で楽しめるように配慮されたものも多いです。
「理科離れ」が問題とされている昨今、教育・研究機関として、子ども達に理科の面白さや楽しさを知ってもらおうという意識が、こういった大学にはあるようです。

子ども向けのイベントにあわせて、学校の先生(小学校の教員や、中・高の理科教員)を対象にした講演などを企画している大学もありました。それも非常に大事ですよね。

こういったイベントでは、大学の教職員はもちろんですが、大学生や大学院生達も大活躍。
イベントの告知ビラなどでも、「だいがくせいのおにいさんやおねえさんが教えてくれるよ!」みたいな文言を何度か見かけました。

子どもに対して内容をわかりやすく説明し、安全に気を配りながら実験や工作を行うというのは、簡単ではありません。担当する学生の側にとっても、教育的にかなり意義のある経験になるはずです。

実際、工学院大学に至っては、夏休み理科教室の運営を学生の教育の一環として位置づけて全学で継続的に取り組み、「特色GP」に採択されているくらいです。

■「特色GP・理科教室の展開と支援学生への教育波及効果」(工学院大学)

子どもに科学を体験させる機会として、あるいは夏休みの思い出作りとして、保護者にとってもこういったイベントはありがたいでしょう。
地域への貢献にもなりますし、良いことづくめです。

さて、このように意義の大きい理科・工作イベントですが、とは言え、これを大学単位で企画・運営するのはなかなか大変です。
やるのなら、集客の告知などもそれなりにやらないと、お客さんは来ませんし、キャンパス単位で行おうとすると、全学的な協力を取り付けるのが大変です。

そこで、日本学術振興会が、↓こんな取り組みを行っているようです。

■「ひらめき☆ときめき サイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~ KAKENHI」(日本学術振興会)

【「ひらめき☆ときめき サイエンス ~ようこそ大学の研究室へ~ KAKENHI」とは?】
現在、活躍している研究者と大学の最先端の研究成果の一端を小学校5・6年生、中学生、高校生が見る、聞く、触れることで、学術と日常生活との関わりや、科学(学術)がもつ意味を理解してもらうプログラムです。
大学でみんなどんなことをしているの?
○○教授ってどんなことを考えているの?
どうしたら学者になれるの?
研究員の人は普段どんな研究をしているの?
   ・・・・・・
研究者がプロデュースする体験・実験・講演などを通して、そんな疑問に答えます。
普段はめったに見ることができない大学の研究や研究者との対話などから、科学の楽しさ、難しさ、不思議に触れてみましょう。全国の大学が、いろいろなプログラムを用意して、大学で行う研究に興味と関心のある小学5・6年生・中学生・高校生のご参加をお待ちしております。
(上記ページより)

日本学術振興会がこのような催しをやるというのは、なかなか意義のあることだと思います。

■「ひらめき☆ときめき サイエンス:実施プログラム一覧」(日本学術振興会)

↑こちらにプログラムの一覧があります。
全国からたくさんの大学が参加し、充実したプログラム構成になっています。

もちろん、実際にはひとりの参加者が全国の大学をまわってすべてのプログラムを受けることは不可能ですが、「地元で参加できるプログラムはないかな?」と、保護者の方が調べるのには便利ですよね。

ところで、気になるのが、タイトルの中の「KAKENHI」の文字。
小学生相手に「KAKENHI」って……と違和感を覚える方もいると思います。

その謎は、個別のプログラム紹介ページを見てみると判明します。

(例)
■「北海道大学:生命のミステリー ~生き物のかたちと働き~」

上記のページをご覧ください。下にスクロールしていくと、実験担当となる教員の名前から始まり、内容やスケジュールなどの紹介が掲載されていますね。

その先、ページの一番下をご覧ください。

「KAKENHI(テーマのもととなる科学研究費補助金)」

なんて項目がありますね。
実は、すべてのプログラム紹介に、この情報がついています。

そう、この「ひらめき☆ときめき サイエンス」は、

「科研費による研究成果を、世の中に還元しましょう」

ということを目的としたイベントなのです。

だから、タイトルに「KAKENHI」なんて、とってつけたような文字が入っているわけです。
おそらく、科研費の意義を社会にPRするためのキャンペーンイベント、という意味合いも持っているのではないでしょうか。

逆に言うと、科研費に関係するプログラムでなければ、このサイトでは紹介してもらえないということになります。プログラム一覧に、国立大学が多い理由も、その辺にあるのかなと思います。

でも、これはこれで意義のあることです。
科研費をとって行われている研究の成果に、普段大学に関わりのない一般の方々が触れられる機会、大切ですよね。夏休みの自由研究ネタ提供、という形で、研究成果が還元されるというのは、なかなか面白いと思います。

このように様々な方々によって運営される、大学の夏の科学イベント。

対象者に「高校生」というのが入っているあたり、大学にとっては地域貢献に加え、将来の顧客に対する大学PRという意味合いもあるのだと思います。
でも、高校生にとっても、気になっている大学や、そこにいる研究者に触れられるチャンスですから、大いにメリットがあるでしょう。

夏休みの宿題のテーマに困っている方も、大学の様子に興味がある方も、せっかくですから、こういったイベントを積極的に活用してみてはいかがでしょうか。。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。