<産業人×大学人>で、大学改革を目指す組織

マイスターです。

昨日に引き続き、大学職員に関する、ちょっと異色なネットワーク作りの動きを。

発足は2003年なので、既にご存じの方も多いかもしれませんが。

■21世紀大学経営協会
http://www.u-ma21.com/

先日の記事

・「早稲田再生」 大学の財務改革ケーススタディ
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50064384.html

↑でご紹介した、「早稲田大学のゴーン」こと、關昭太郎氏が関わっている組織です。

大学に関する研究会や学会、勉強会などは、いまや山ほどあります。
研究者による大学研究会もあれば、大学職員が中心の勉強会もあります。

そんな中で、この「21世紀大学経営協会」が異色なのは、「産業人が中心となって運営している、大学経営研究の組織」であるということ。

・役員一覧
http://www.u-ma21.com/gaiyo/yakuin.html

理事長の宮内義彦氏(オリックス株式会社会長)はその象徴とも言える存在。
「規制改革・民間開放推進会議」の議長でもありますね。

宮内氏をはじめ、その他にも、企業経営者の方が多いように思います。
その内訳に関しても、
「やみくもに大企業のトップに名を連ねてもらったのではないんだな」
なんて、マイスターはなんとなく感じました。

また、政治家も多いですね。

「産+官+学」

のキャッチフレーズを、トップの顔ぶれで既に示しているような組織です。

その目的も、特徴的です。
「設立趣旨と目的」で、以下のような内容に、特に目を引かれました。

○高等教育界の改革・発展は国公私立を問わず、教育研究内容の向上と経営的側面(財務基盤、経営管理体制)の安定性・健全性の両輪が相俟って成立するものである。この認識に立ち、これまで軽視されがちであった「経営的側面についての評価方法及び評価システム」を策定し提言していく

そう、この会は「大学の経営的側面」を支えることに特に重きを置いているのです。
だから、企業の方が多いのですね。

こうした会が作られる背景には、産業界が大学業界に対して持っている、
「不信感」があると思います。

少子化が確実に進んでおり、定員割れも多くの大学で見られている。

かつてほどの経済成長を見込めそうにない社会では、学費の負担が大きくなる。

社会の情報化がいっそう進んでいくのも確実。

大学サービスの国際化も、今後の日本は無関心ではいられなくなるだろう。

大学を客観的に評価し、それによって大学が選ばれる日も遠くはないだろう。

社会人になってから大学に通う人々も、今後は増えるだろうし、増やさなければならない。

国立大学は、独立行政法人としての経営を求められるようになっている。

などなど、具体的な問題がこれだけ山積しているのに、大学人は、自分で動く気配がまったくない!

今すぐ手を打っても不安でしょうがないような深刻な問題ばかり、であるにも関わらず、大学人が行う「改革(自称)」は、遅々として進まない。
いや、本気で進める気がないのではないか。

そんな風に、少なくとも産業界は、思っているのだと思います。
すくなくともこの「21世紀大学経営協会」の関係者達は、みなそう考えているのでしょう。

実際、「設立趣旨と目的」に、こんな表現が踊っています。

○現代の高等教育経営を取り巻く環境の変化や諸問題に対して、大学改革は、往々にして内輪の議論にとどまり、具体的に目に見える形で進捗しているとはいえない

○日本の大学の閉鎖性を打破し、新しい風を吹き込むため、大学関係者以外の方々にも参画していただき、まさに「開かれた双方向性をもつ場」とする。また法人のみならず個人の参加を歓迎する。

いかがでしょうか。
まさに「しびれをきらした!」という雰囲気が漂っているように思われませんか。

委員会構成も、特徴的です。

○ガバナンス委員会

○人事報酬制度委員会

○財務戦略委員会

○大学評価委員会

○知材事業化委員会

現在、上記の5つの委員会があるのですが、見事に、
大学人が、本気で取り組んでいないと思われる分野ばっかりです。

産業界が現在の大学のどこに不満をもっているのか一目瞭然、そんな風に思うのは私だけでしょうか。

何だか、産業界から大学業界への「最後通牒」、もしくは「挑戦状」のように、マイスターには受け取れるのですよ。

大学人が、産業人と比べてまったくの能なし、とまでは言えないと思います。

ただ現実として産業界は、血と汗と涙を流して構造改革をし、不況を乗り切りつつありますし、今現在も労働人口の減少などの新たな問題と向かい合って格闘しています。
そうしないと生きていけないということを、みな、知っているからです。

それに対し大学人は、高等教育の改革といえるほどの成果は、残念ながらほとんど何もあげていません。
細かな工夫や、良い取り組みはしばしば耳にしますが、自ら血を流すような本当の組織改革、構造改革は、ほとんど聞くことがありません。

「(主に教員が中心となって)ほら、こんなことをやってみたよ、そしたら、学生がちょっと元気になった気がするよ、すごいでしょ?」

というレベルの話は、頻繁に聞きます。
これはこれで、ひとつひとつ非常に有意義で、大切な取り組みです。
評価できることです。

でも、本当に大学を変えようと思ったら、なごやかに業界雑誌でご報告できるような次元じゃない、ってことも起きるはずなのです。

「おまえは価値がない」という烙印を押されて職を失ったり、

それまでの仕事の仕方を全否定され、位置から勉強し直すことを求められたり、

民間企業の派遣社員と、人材としてのコストパフォーマンスを争ったり、

福利厚生が目に見えて悪くなったり、

同僚がどんどん辞めていって、自分の業務量が大きく増加したり、

あまりの環境変化のため、病院に通うハメになったり、

そんな人が、少なからず見られるようになるはずなんです。
企業が「V字回復!」なんて雑誌でもてはやされている時、その裏には、必ずこうした人たちが大量にいます

もちろん、こんなひどい状態にならないように改革をするのが理想ですが、
そんな理想を、理想のまま実現できる人は、そうはいません。
それに、ここまでのショック療法でないと、大学は変わっていけないところに来ていると思います。

大学を取り巻く少子化、国際化、そのほか上記でご紹介した諸々の問題は、
一見、長期的ですぐに影響が出ないことばかりのように見えますがそのくせ実は、
今すぐ手を打っておかないと、取り返しがつかないことになるものばかりでもあるのです。

企業はそれをわかっていたから、すぐに自分たちの血を流す決断をしたのです。
それに比べると、大学は問題を解決しようとするどころかむしろ傍観し、先送りし、逃げているのではないでしょうか。
これらの問題の「締め切り」はもうすぐそこか、もしくは過ぎてしまっていると思いますが、こうした崖っぷち感が、いまひとつ感じられません。
非常に、非常にマズイことです。

大学人が主体的に行う問題解決、実力向上のための勉強会は非常に大事ですが、
産業人から学ぶことも、今は特に、大きいのではないでしょうかね。

マイスターは、やっぱり産業人としての問題意識と、大学人としての問題意識を自分としては両方持っているつもりなので、両方から得られる知見を大切にしたいです。

「21世紀大学経営協会」、個人的には特に「ガバナンス委員会」が興味深いです。

興味がある方は、ぜひ、ご入会されてみてはいかがでしょうか。

昔お世話になっていたIT業界の皆様方に、今の日本の高等教育について色々とご意見を伺いたくなった、マイスターでした。