大都市圏の大規模校に、学生が集まる傾向

マイスターです。

すっかり、毎年の定番になってしまったような気がする、この報道。
皆さんもご覧になったと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「4年制私大の47%、定員割れ…淘汰の時代迎える」(読売オンライン)

今春の入試で、定員割れを起こした4年制の私立大学は昨年比7・4ポイント増の47・1%に上り、過去最悪になったことが、日本私立学校振興・共済事業団の調査でわかった。
東京の有名私大など大規模大学では、志願者が増えていることも判明した。少子化による「大学全入時代」を目前に控え、小中規模の私立大を中心に、大学も淘汰(とうた)の時代を迎えている実態が浮き彫りになった。
(上記記事より)

「四年制私立大学の半分近くが定員割れ」
といった見出しで、各メディアとも、大きく報じています。

「定員割れ」という言葉のインパクトは大きいのですが、ただ、これだけでは現状はイメージしきれません。
定員の97%を入学させた大学でも、定員の30%に満たなかった大学でも、同じ「定員割れ」。でも、この二校が置かれている状況は大きく異なりますよね。
「多くの受験生を集めたにも関わらず辞退者の人数を読み誤り、入学者が数人だけ定員に足りなくなってしまった」なんてケースでも、言葉の上では定員割れです。

●受験生は多く集まったが、合格者数を少し抑えた結果、思ったよりも入学者がおらず、定員を割ってしまった
  :
  :
●定員以上の受験生を集められなかった

↑この両者のどちらに近いのかを調べないと、その大学の実態はわかりません。

ところで前者に関してですが、立命館大学のケースからもわかるように、定員を上回り過ぎてしまうと、それはそれでペナルティが課せられます。
最近は入試の多様化や、各大学の新学部設立ラッシュにより、歩留まり率が読みづらくなっています。
数名分の学生の学費よりも、公的な補助金の額の方がはるかに大きいですから、「数名程度なら割っても構わない、とにかく読み違えで多くなりすぎるのは避けよう」、と考え、合格者数を少なめに抑えた大学が増えているということもあるのかな、と、ちょっと思ったりします。

さて、あくまでも参考程度とは言え、やはり気になる数字もあります。

各メディアの報道から拾ってみました。

定員の半分に満たない大学も5.1%(29校)で、昨年度(17校)の1.7倍に急増して過去最多。定員割れが進むと補助金の削減率が上がるため、文部科学省は「経営難に陥る大学が増える危険性がかなり高い」と懸念している。
「私立大:47%が定員割れ…今年度、半数未満も29校」(毎日jp)より)

定員の50%の入学者を確保できていないというのは、明らかに学生募集が機能していないケース。
50%を割ると、事業団からの補助金はゼロになりますから、経営破綻の危機に直面している大学だと言って差し支えないでしょう。
29校の大学が、そういった状況にあるとのことです。

志願者数は、一度の入試で複数学部を受験できる制度を各大学が導入するようになったことなどから、昨年比1・3%増の306万3000人。特に、入学生定員3000人以上の大規模校23校の志願者は151万2500人と昨年を5・2%上回ったが、定員800人未満の小中規模校409校は41万8800人で、6・3%も減少した。
「4年制私大の47%、定員割れ…淘汰の時代迎える」(読売オンライン)より)

全体の志願者数はのべ306万2825人と前年度より約4万人増えたが、入学者の定員充足率は、定員800人以上の私大の平均値が100%を超えたのに対し、800人未満の平均値は100%を割った。
「定員割れの私大、過去最多の47% 事業団調べ」(Asahi.com)より)

↑大規模校に入学者が集中し、その分、小中規模校が入学者を減らしているという傾向が報じられています。「二極化」と表現しているメディアもありました。
大規模校には、昔からの有名大学も少なくありません。そういった大学が生き残りをかけて次々と新学部を作ったり、複数学部を受験できる入試制度を取り入れたりしていることで、他の大学が影響を受けているということは確かにあるでしょう。

地域別では全国13ブロックのうち、北海道、南関東、甲信越、北陸、東海、京都・大阪、中国、四国の8ブロックが志願者を減らし、東北、北関東、東京、近畿、九州では志願者が増えた。中でも東京の志願者は3・7%増の128万2000人となり、全志願者の42%を占めた。
「4年制私大の47%、定員割れ…淘汰の時代迎える」(読売オンライン)より)

定員に占める入学者の割合を示す「入学定員充足率」は全体が107%で前年度比2ポイント減。東京が116%で最も高く、南関東と京都・大阪が109%、近畿103%。
「私大のほぼ半数定員割れ 08年春の入学調査」(47NEWS)より)

地域別では、四国(82.7%)が最低で、中国(89.1%)、北関東(92.0%)が続いた。
「私大、半数が定員割れ=過去最多、50%未満も29校-少子化で危機的状況」(時事ドットコム)より)

↑「地域間格差」についても、大きく取り上げられていました。
入学定員充足率の高い順に、東京、南関東、京都・大阪、近畿と続きます。大都市圏に集中する傾向が顕著です。
逆に、エリア全体の充足率が8割程度という四国など、全体的に地盤沈下が起こっている地域もあるようです。

……とこのように、全体的な「傾向」としては、大都市圏の大規模校に入学者が集中する傾向が明らかです。大学に関わる方々は、意識しておくべきデータだと思います。

ただ、「皆さんの大学」がこういった傾向通りに行くかどうかは、わかりません。
地方の単科大学でも頑張っているところはありますし、東京の総合大学だからといって油断はできません。
こういった数字はあくまでも、経営に役立てるためのデータ。
過度に絶望的になったり、油断したりすることなく、うまく使っていきたいところです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。