マイスターです。
中曽根内閣(当時)が掲げた「留学生受け入れ10万人計画」。
その後、留学生数は順調に伸び、平成15年には109,508人を記録しました。
しかしその後は、11~12万人の間で横ばいの状況です。
(参考)■「2.大学院・大学(学部)・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・準備教育課程における留学生数の推移(各年5月1日現在)」(日本学生支援機構)
さて、「留学生30万人計画」を打ち出した福田政権。
少しずつ、その計画がまとまりはじめているようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「海外に留学生の相談窓口『留学生30万人計画』」(読売オンライン)
政府は29日午前、福田首相が提唱した「留学生30万人計画」の骨子を発表した。海外から日本に来る留学生を現在の約12万人から2020年をメドに30万人に増やすため、在外公館や大学の海外事務所など関係機関が協力して、日本への留学希望者のために一元的な相談窓口を海外に設置することなどを盛り込んだ。
骨子を基に関係省庁が09年度の関連予算の概算要求を行い、計画の詳細について検討を進める。
(略)骨子は、「日本留学への誘い」から、「卒業後の社会の受け入れ推進」までの5項目で構成。日本留学の魅力はどこにあるのかという日本の「ナショナル・ブランド」を確立することが重要と指摘。日本への留学希望者の一元的な相談窓口の設置は、英国が世界各国に「ブリティッシュ・カウンシル」を設け、英国留学セミナーなどを開催していることを参考にした。さらに、留学生活を円滑に進めるため、在留期間の更新申請など審査の簡素化や審査期間の短縮を掲げた。
受け入れる大学側の態勢整備として、拠点になる国内の30大学を選定して支援するとともに、それらの大学では、英語のみのコースを大幅に増加して、日本語が出来なくても英語だけで学位の取得を可能にする。
卒業後の日本での就職を支援するため、就職活動の期間中は在留期間の延長を検討する。
(上記記事より)
施策には、いくつかの柱があるようです。
イギリスの「ブリティッシュ・カウンシル」を参考に、「在外公館や大学の海外事務所など関係機関が協力して、日本への留学希望者のために一元的な相談窓口を海外に設置する」とのこと。
「学びに行く場所」としての日本のイメージは、以前よりは知られるようになってきたのかと思いますが、まだまだ遠い国という印象を持っている方々も多いでしょう。
日本への留学窓口が、自分の行ける範囲にあるというのは、重要なことだと思います。
ところで、「在外公館や大学の海外事務所など関係機関が協力」とのこと。こういった場所で留学希望者に対応される方々の役割が極めて重要になるわけですね。
どんなキャリアを積み、どんな知識・スキルを持った方に、どのような業務を行ってもらえばいいのか。そのあたりをしっかり詰めていかないと、単なる「資料配布所」や、お役所の受付窓口状態にもなってしまいかねません。
はるか遠く離れた国まで一人で学びに行くというのは、相当、大きな決断。
最終的に、背中を後押しできるのは、熱意を持った人間だと思います。
「これはもう日本に行くしかない!」……と相手に思わせられるような話ができる人を、世界中にどれだけ配置できるかが、この計画のキモであるように思います。
受け入れ側として、重点校のような大学をいくつかつくるというのも、最初はアリなのではと思います。
大学それぞれでミッションは異なりますから、日本中のすべての大学が留学生を受け入れる必要があるわけではないのですし。
それと、現在の計画ではまだ言及されていないようですが、どこの国から30万人を連れてくるのでしょうか。
(参考)■「4.出身国(地域)別留学生数」(日本学生支援機構)
↑こちらに、平成19年度の、留学者の出身国がまとめられています。
ご覧の通り、中国、韓国の二カ国で全体の3/4を占める状況。
この構成を変えずに、全体の数を30万人に増やすのか、それとも、これまであまり留学者がいなかった国への対応を強化するのか。
例えば、アメリカに留学する日本人に対し、アメリカから日本に留学する方の数は非常に少ないです。
こういったバランスをなるべく均等に近づけていく、というのも一つの考え方ですよね。
留学事業には、国家の戦略に関わる一面もあるでしょう。
ですから個人的には、単に母数を増やせばいいというものでもないように思います。
公式に打ち出すかどうかはともかく、そういった戦略的な視点も、誰かが持っておく必要はあるように思います。
こういった政策を受け、これから、どういった大学が動き出してくるのでしょうか。
楽しみです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。