一人暮らしをするカネがなく、片道3時間かけて通っていました。
往復で6時間。電車の中で寝ていたら、家で寝る必要ないじゃん、っていうアホな状況。
キャンパスにシャワーや仮眠スペースなどが多かったので、しょっちゅう泊まり込んでいました。
家から近い大学は、学業にいい環境だと言えますが、
家からとんでもなく遠い大学も、学業に打ち込めるぞ。
と、体験者は語る。
(でも、もう一度やれといわれたら、体がついてくるかどうか、自信がありません)
さて、このブログにとってはなんとなく「鬼門」である気がするので、避けてきたネタですが、今日はいい記事があったので軽く、試しに触れてみたいと思います。
「大学アドミニストレーション専攻」
という専門職大学院が、あります。
(軽く触れるだけのつもりが、いきなり大文字に…)
このブログを見てくださるような大学職員の方であれば、とっくにご存じではないかと思います。
簡単に言えば、大学経営のプロフェッショナル養成をめざす大学院ですね。
大学の管理経営には非常に高度な知識とスキルが要求される、ということで、こうした専攻が生まれたわけです。
研究者養成というよりは、高度職業人の育成を目指しているところがほとんどです。
日本で最初にこの課程を開設したのは、桜美林大学です。
○桜美林大学大学院 国際学研究科 大学アドミニストレーション専攻
http://www.obirin.ac.jp/graduateschool/330/312r.html
現在、東大も大学経営に関するコースを持っています。
○東京大学大学院 教育学研究科 大学経営・政策コース
(PDFのパンフレット冊子)
また、
○筑波大学大学研究センター:大学事務職員養成試行プログラム
http://130.158.176.12/j_index.html
○立命館大学:大学行政研究・研修センター
(プレスリリース)
など、大学職員の体系的な研修を行っている大学も、こうしたアドミニストレータ養成大学院開設への動きを見せています。
(ちゃんと広報用のwebサイトを持っている大学が少ない…)
で、だ。
問題は、これらが業界でどう評価されるのかってことです。
マイスター、こうした大学院を、とても応援しています。
で、少なからず、そこで展開される教育の内容にも興味があります。
某ゼミにもぐらせていただいたこともあるくらいです。
しかし。
この専攻を出たら、職場で
「よし、君には責任ある仕事を任せるようにしよう」
って言われるようになるか?ということになると、ちょっと考え込んでしまう。
いや、行われている教育は、非常に充実していて、申し分ないのです。
ただ不安は、卒業生を受け入れる、「職場(=大学)」の側にあるのですよ。
桜美林大や筑波大、立命館大では、きっとある程度、これらの学位を「能力の証」として扱ってくれるのでしょう。
もちろん、
「実際のスキルはともかく、専門の知識はそれなりにあるのだろう」
というくらいかもしれませんが、でも、ちっとは考慮してくれるのでしょう。
しかし、
自分の勤める大学では、まず、そんな考慮はされなぁい!
と、マイスター個人は自信を持って言える。悲しいことに。
大学教員はとうぜん、研究者ですから、まず学位、の世界です。当たり前です。
しかしこれが職員となると、
「ハァ?博士号持ってるって?
それがどうした。まずは電話番からだ。
例外はいっさい認めん」
みたいな、「全員丁稚奉公」というスタートになるのが、なんとも極端です。
多分、MBAを持っていたとしても、あまり事態は変わらないです。
はい、極端な話です。
それくらい、(少なくとも本学は)学位は見ません。
「若者が何を言う。大学で学んできたことが役に立つか。
学位なんてアテにならんわ!」
という姿勢を、大学を経営している当人達が堅持しているという、面白い状況になっています。
(これって大学だけでなく、日本の大企業でも未だに見られる傾向な気もしますけど)
そんなわけで、
「大学アドミニストレーション専攻を出た人には、大きな仕事で活躍して欲しい!」
と強く応援しつつも、実際のところが気になるのです。
しかも。
マイスター、この「大学アドミニストレーター養成大学院」って、アメリカのシステムを輸入したものだと思っていたのね。
アメリカの大学には、こうした専攻を卒業した方がそれなりにいて、それなりに全米で、大学経営の中心として活躍していると思っていたのね。
ところが、おなじみ「アメリカの大学事情」さんの記事で、実は案外そうでもないことを知ってしまったのですよ。
アメリカの大学事情さん、
「僕の意見では、アメリカには、大学アドミニストレーター養成大学院は、ほとんど存在しません。0とは言いませんが、限りなく0に近いです。」
と書いておられます。
■「大学アドミニストレーター養成大学院」(アメリカの大学事情)
http://ameblo.jp/yanatake/entry-10004664884.html
上記の記事を読んで…
なんとー!
と、ちょいショック。
そうなんですか…。
でも、考えてみれば、そりゃそうですよね。
ぜんぶ、納得ですよ。
アメリカの大学院のhigher education専攻は、結果的にゼネラリストを育成していて、大学の業務に関する専門家を育成できているわけではない、と。
たしかに、財務とかなら、実際ビジネスの世界で会計をやっていた人とか、MBAを持っている人を採用しますよね。
学生部門なら、心理学を学んできたような人に、仕事を任せますよね。
「大学でアドミニストレーターとして働いている人には、Ph.Dとか、博士号を持っている方が多い」
みたいな話は耳にしていたのですが、別にそこで、higher educationを学んでいたってことが威力を発揮するわけでもないようです。
マイスター、ちょっと誤解していました。
ううむ、また、学んでしまった。
となると、いよいよ、
「アメリカの大学経営では、その道のプロが活躍しているんだ。
そうした人材は、専門職大学院で育成されているんだ。
日本も、そうしたシステムを確立させよう!」
というロジックが成立しなくなりますね。
いや、それどころかひょっとしてそのうち、
「プロの大学経営職員を育成する目的で作られた大学院」
って日本が一番、数多くなっちゃったりするかも…?
こうなるともう、日本版・大学アドミニストレーター養成大学院が今後成功していくかどうかは、卒業生達の方にどかんとかかってくるわけですね。
大学院で学んでいる人、責任が大きいですよ。
がんばってくださいっ!
と、無責任にプレッシャーをかけてみるマイスターでした。
(大学アドミニストレーター養成大学院については、今後もちょくちょく取り上げていくつもりです。
今日は、とりあえず、気づいたことだけ。
実際に大学院に通われている方からのお便りも、お待ちしています)
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※注:
ただ、最後まで記事を書いて気づいたのですが、
日本での「大学アドミニストレーター」という言葉がどういった職種、業務を指して使われているのか、実は世間的によく知られていない気がします。
アメリカでの「アドミニストレーター」というのは、結構多様ですよね。
教学部門のアドミニストレーターだったり、
学生担当アドミニストレーターだったり、
管理経営担当のアドミニストレーターだったり、色々です。
自分自身が学んでいるわけではないので詳しくは知らないのですが、
対して、日本の「大学アドミニストレーション専攻」が指しているアドミニストレーターは、経営管理分野を主に指しているように思われるのです。
このあたり、どうなのでしょうか?
たとえば、「学生サポートのアドミニストレーター」も、こうした大学院で養成されるのでしょうか?
でも、それならアメリカと同じで、心理学の専門家の方にアドバンテージがありますよね…。
財務だけなら、早稲田の關昭太郎さんのように企業で長年財務に携わっていた本当のプロで、かつ、教育や研究に対する理解を持っている人を大学に引き入れることも、積極的に考えていいと思います。
多分、日本での「アドミニストレーター」という言葉は、経営管理スタッフとか、そういった分野での専門家を特に指しているのでは?と、マイスターは勝手に想像しているのですが…どうなんでしょう?
この辺の言葉の使い方がどうも、アメリカのアドミニストレータ教育と、日本のそれとを比較するときに、事態をごちゃごちゃにする原因になっているような気がするんです。
あんまり安易に比較に使うと、誤解を招く言葉かも知れませんよ。むむむ
マイスター、この「大学アドミニストレーター養成大学院」って、アメリカのシステムを輸入したものだと思っていたのね。
アメリカの大学には、こうした専攻を卒業した方がそれなりにいて、それなりに全米で、大学経営の中心として活躍していると思っていたのね。
ところが、おなじみ「アメリカの大学事情」さんの記事で、実は案外そうでもないことを知ってしまったのですよ。