映画館を教室に 「立命館大学×京都シネマ」の取り組み

マイスターです。

ちょっと前の報道ですが、おっと思うニュースがありましたので、忘れないうちにご紹介させてください。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「学生就業体験や講義に映画館使用 京都シネマと立命大が提携」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006120500037&genre=G1&area=K1C
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立命館大(京都市中京区)と、京都シネマを経営する如月社(下京区)が4日、学術交流協定を締結した。来春開設する同大学映像学部について、学生のインターンシップ(就業体験)の受け入れや講義での映画館の使用などを行う。

協定は、学生に映画を興行するまでの過程や広報・宣伝ノウハウを実践で学んでもらうねらい。京都シネマは2004年12月に下京区の「COCON烏丸」内で開業、3つのスクリーンを備えたアート系映画館として知られる。

主な取り組みは、3年生を対象にした2カ月間のインターンシップや上映される映画をテキストにした講義、学生が制作した作品の上映や企画、市民を対象にした映像学部教員による公開講座などの実施。多くの映画を鑑賞してもらうため、同学部の学生を対象に料金の割引サービスもする。
(京都新聞記事より)

この通り、大学と映画館のコラボレーションが京都で始まるみたいです。

「京都シネマ」は、全国津々浦々にあるシネコンとは一線を画した「アートシアター」を標榜する映画館です。いわゆる単館映画を上映する映画館ですね。大手配給会社が全国に提供する映画とは一味違った、独自の作品セレクションが売り物です。
自分の住んでいる街にもこんな映画館があったらいいなぁ……と思わせる素敵な映画館ですね。

でも、注目すべきはその上映タイトルだけではありません。この「京都シネマ」は映画の上映のみならず、京都から映画文化を発信するために、様々な事業を展開しているのです。

[主な事業内容]

(1) 映画上映
・3つのスクリーンで、日本映画の新作を上映しつつ、アジア、ヨーロッパをはじめ世界の映画を紹介。また、ドキュメンタリー、実験映画、学生映画、監督特集など新しい映像世界を紹介。
・ホワイエを活用し、京都の新しいアートシーンを紹介。(ポスター展、陶芸展等)

(2) 大学、行政などとの提携、学生映画の支援
・映画、映像研究を進めている大学などとの提携、研究発表及び作品発表の場の提供。大学コンソーシアム京都、立命館大学国際平和ミュージアムとの共同企画の実施。
・学生などの映像作品の定期的上映の場の提供。
・アニメーション、ドキュメンタリーなども含め、京都、関西を中心に新しい監督に作品は発表の場を提供。京都国際学生映画祭支援。

(3) 放送分野との連携

・すぐれたテレビドキュメンタリー作品の定期上映など。

(4) 地域との連携
・京都の映画資産としての撮影所などとの協力関係を強める等。
(「劇場について」(京都シネマ)より)

ご覧の通り、大学との提携や学生映画の支援なども、事業の柱として位置づけられているのですね。

この「京都シネマ」を運営しているのは、如月社という会社です。

■株式会社如月社
http://www.kisaragisha.co.jp/

如月社は、03年に設立されました。かつて「京都朝日シネマ」の支配人を務めていた神谷雅子社長が、「京都朝日シネマ」の閉鎖を機に独立して立ち上げた会社です。

神谷社長は当初から、学生を映画館で育てたい、学生に映画の魅力を伝えたいという想いを抱いておられたようで、以前から「京都シネマ」と立命館大学国際平和ミュージアムが連携してのイベントなどに取り組まれていたわけです。
社長ご自身も同大で教壇に立たれていたとのこと。

※その辺りについては、↓以下のリンクも参考になりますので、よろしければどうぞ。
■「京都シネマ開館への道:006 学生映画のこと」(如月社)
http://www.kisaragisha.co.jp/Road_to_KC/006.html
■「地方企業人 第10回 シネコンブームのなかでアートシアターを開業」(NextOne)
http://www.nextone.jp/no050127/hi/hi07.html

そんな背景もあり、今回、立命館大学が「映像学部」を新設するにあたって、京都シネマと同大がさらに本格的な交流を行うことになったというわけです。

■「株式会社如月社(京都シネマ)と立命館大学との学術交流協定の締結について」(立命館大学)
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/koho/headline/info/2006/12/kyoto-cinema.htm

これらの取り組みは京都から発信する映像文化、地域に根ざした映像文化を担う人材の育成という、映像学部の設置趣旨、人材育成方針と合致するものであり、両者は「映画館を教室」と位置づけた取り組みを、映像学部の学生に「自身の作品を世に問う」「映画興行をマネジメントする」場を提供することで合意した。    

【取り組みの主な内容】

(1)長期・短期インターンシップの受け入れ
株式会社如月社への映像学部学生のインターンシップ(長期型・・・3回生対象/短期型・・・2回生以上対象・夏期休暇期間もしくは週1回型など)を実施する。学生は劇場運営の新規事業の開発や映画興行の企画実施を行う。

(2)授業での劇場の利用
映像学部の「映像文化研究」の講義において、前後期セメスター各1~2回程度、京都シネマを利用する特別上映や、通常の上映ラインナップ作品を授業テキストとして鑑賞指定対象とする。

(3)映像学部特別料金の設定
映像学部の学生が授業の一環として映画鑑賞を行う場合、特別料金を適用する。

(4)学生作品発表の場としての劇場の使用
学生の卒業制作を中心とした作品の発表の場として劇場を利用する。学生主体の企画として企画・執行マネジメント、宣伝を含めた発表会を行い、一般に公開する。

(5)社会に開かれた上映会の企画
一般に開かれた講座として、映像学部の教員による解説付きの上映会を行う。
(上記ニュースリリースより)

リリースを見ただけで、これは面白い取り組みになりそう! とマイスターは思ったのですが、いかがでしょうか?

大学のある街にこんな映画館があって、しかもそこでインターンシップをしたり、授業の一環として映画を見たり、自分たちで撮影した映画を上映する場として使わせてもらったりできるなんて……!
あぁ、学生さんがうらやましいです。
この提携は、何よりも学生さんにとってうれしい知らせでありましょう。

もちろん立命館大学にとっても、魅力的な教育環境を手に入れることができ、また他大学との差別化をはかることもできて、多大なメリットがある提携だと思います。

「京都シネマ」にとっても、以前から構想していた大学との連携を、ほぼ理想通りの形(いや、それ以上?)で実現できるわけですから、万々歳です。

そしてさらに、こういった活動が街の中で行われるのは、映画好きの京都市民にとっても良いことではないかと思います。市民に愛されていながら、一度は閉鎖されたアートシアター。それが学生によって息吹を吹き返すのだとしたら、こんなに素敵なことはありません。
それに学生によるこういった活動は街全体を活性化させます。京都シネマは文化を享受するだけの場所ではなく、生産もする場になるわけですよね。いわゆる行政による「ハコモノ」とは違う、生きた映画館として、京都地域の芸術創作活動を刺激する存在になるかもしれません。

さらにさらに、いずれここから将来の名監督や名プロデューサーが巣立っていったりするのもしれませんよね。そう考えると、関わる人達に「夢」を与えてくれる場所でもあるわけです。

いやぁ~これはすごい。いいことづくめではないですか。

でもこういった取り組みって、どこででもできるわけではありません。
京都市内という好立地もさることながら、神谷社長のような、プロデューサー的な働きかけを多方面に行える人材がいるということも非常に大きいはずです。
やはり最後は「人」ですよね。こういった人が関わることで、大学の教育もひと味違った活力を得ることができるのだろうなぁと、改めて思います。

そんなわけで、個人的にもちょっと気になる、立命館大学と京都シネマの取り組みをご紹介させていただきました。

京都にお住まいの方は、ぜひ今度、映画館をのぞいてみてはいかがでしょうか。

以上、マイスターでした。

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(参考)
■「CLARK THEATER(クラーク・シアター)」(北大映画館プロジェクト実行委員会)
http://circle.cc.hokudai.ac.jp/theater/

こちらは、学内の施設を一時的に映画館にしてしまうプロジェクト。これはこれでまた、立命館大学とは違ったおもしろさがありますね。興味を持たれた方は、自分の大学でもこういった取り組みをされてみてはいかがでしょうか。