マイスターです。
先週の話題ですが、気になったのでご紹介いたします。
【今日の大学関連ニュース】
■「大阪大学:新設の研究棟を閉鎖 シックハウス症候群診断で」(MSN毎日インタラクティブ)
大阪大学は21日、豊中キャンパス(大阪府豊中市)に新設した「文系総合研究棟」を、25日から全面立ち入り禁止とすることを決めた。今月から本格利用を始めたばかりだが、棟内で働く職員ら2人がシックハウス症候群と診断され、気分不良を訴える学生も相次いだため。大学側は「想定外の事態だ」と困惑している。
(略)3月中旬ごろ、高等司法研究科の女性職員ら2人が「部屋に入ると違和感がある」などと体調不良を訴えた。
阪大は棟内の空気を分析し、健康被害をもたらすおそれがある揮発性有機化合物の濃度を測ったが、値が低かったため、そのまま様子を見た。
しかし症状はおさまらず、今月中旬には2人とも病院でシックハウス症候群と診断された。さらに今月から授業に使い始めると、学生数人も頭痛や鼻水などを訴えた。
このため阪大は「学生の安全を優先したい」として18日、学生に電子メールを送るなどし、棟内にはできる限り立ち入らないよう呼び掛けた。やむなく入る場合は、空調での換気を24時間行い、窓を開放するように注意した。
さらに21日には、25日からの正式な立ち入り禁止を決めた。予定されていた授業は他の建物に分散して行い、教員室は他の建物に移すなどしている。
立ち入り禁止の期間は未定で、阪大は「原因が判明して除去できるまで建物を閉鎖する」と話している。
(上記記事より)
そんなわけで、大阪大学の新しい研究棟を使った方々が、シックハウス症候群の診断を受けたというニュース。
シックハウス症候群は一般に、家の中の化学物質が原因で健康に悪い影響が出る症状のことを指します。
小中高校を中心に、学校に関しては、「シックスクール」という言葉も使うようになってきていますね。
子供は大人よりも化学物質の影響を受けやすいということもあり、新築・増改築した学校に通う子供達にシックハウス症候群の症状が発生することが何件も起きたため、こんな言葉が使われるようになりました。
例えば、学校校舎の新築・改修・外壁塗装などの際に発生する塗装剤などの化学物質などが原因になることが多いようです。
工事の直後は、空気中に、こういった化学物質がかなりの濃度で存在しています。工事をした後、窓を開けて十分な換気をする期間をしっかりとれば、こうした化学物質の濃度は落ちていくのですが、濃度が十分に落ちきる前に、「そろそろ大丈夫だろう」といって教室を使わせてしまったため、シックスクールの問題が起きたというケースが多いようです。
(小学生くらいの子供の場合はこれに加え、清掃時に使用するワックス、トイレの芳香剤、除草剤などの化学物質、家具や新しい教科書、のり、油性マジックなどの文具類、資料プリントのインク等に使用されている化学物質、さらには合成洗剤で洗った衣類や、教員のタバコ臭や整髪料、化粧品などなど、身近にあるようなものからも影響を受けることがあります)
大学生は、身体年齢的には十分に大人ですから、小学校などで起きるシックスクールのケースほど、被害は深刻ではないかも知れません。
ただ学校という場所の性質上、大勢の方々に被害が出ますし、発生した場合の影響はやはり無視できません。
それに大学では現在、学部改編などの動きに伴い、小中高校以上に校舎の新築、増改築が活発に行われています。
中には、学部の増設などを見越して、急ピッチで工事が進められている物もあるでしょう。
一刻も早く工事を終え、すぐに建物を使い始めたい、なんて事情もおありかもしれません。
しかしそんなときこそ、シックスクールの問題が発生しやすいので、注意が必要です。
前述したように、十分な換気期間を設けず、工事直後からすぐに校舎を使用したりするのは非常に危険。
しかし校舎や研究棟の新築や増改築というのは、たいてい、学部学科の再編や新しい研究センターの開設など、大学にとって目玉となるような、華々しい改革と同時に行われるものです。
仮に空気中の化学物質の濃度が十分に落ちていなかったとしても、既に各種メディアにリリースを打ったり、内部で様々な手続きを踏んでいったりという「手続き」が数多く存在している中で、今さら校舎が使えませんでしたとは言えない、なんていう事情も関係者の間には当然、あるでしょう。
実際、小中学校や高校で深刻なシックスクール問題を引き起こしたケースの中には、行政が鳴り物入りで開設させたような新設校もあります。
現在の建築基準法は、クロルピリホス及びホルムアルデヒドといった化学物質の許容濃度を規定しているのですが、本来なら窓を閉めた状態で濃度測定するところを、窓を開け放った状態で行い、「規定以内です」と偽って強引に開校したなんて事例もあります。
大学の皆様はもちろんそんなことはされないと思いますが、例えば建物を施工する立場の業者の中には、そういったことを考え、強引に引き渡しを完了させようとする悪質なところだってあるかもしれません。
かならず、大学側で安全を確認してからオープンするようにすることをオススメします。
大阪大学のように、調査の結果、数値には表れなかったとしても、影響が出るというケースもあるようです。大阪大学は建物への立ち入りを禁止し、原因が判明して除去できるまで建物を閉鎖するという対応をされたようですが、適切だと思います。
新築の建物一棟分の活動を他の校舎に振り分けたわけですから、調整は大変だっただろうと想像しますが、このように問題が表れた場合は、建物の使用をすぐに中止することが何よりも大事です。
学生や教職員の方々など、大学関係者の皆様にとってシックスクールの問題は他人事ではありません。
最終的に学生を守るのは、大学の皆様です。
工事直後の建物内の空気環境には、くれぐれもご注意を。
以上、マイスターでした
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
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