大学に関係するニュースを日々、自分に可能な範囲でチェックしているマイスターです。
大学の素晴らしい取り組みを紹介するニュースはたくさんあります。
しかしその一方で、お金の扱いに関する不正や、医療ミス、教職員の不祥事、そのほか不正の隠匿行為などなど、大学の疑わしい行いを指摘するようなニュースもあります。
ときには文部科学省の官僚や、そのOBが天下っている公益法人などが関わってくることもあり、がっかりさせられることも少なくありません。
もちろん、報道されたものすべてが、大学の不正事件だとは限りません。
中には、大学組織に対するメディアの側の理解が不足しているために、ものすごく表面的な解釈をもとにした、誤解を招くような報道がなされることもあります。
さて、ではこの報道はどうなのでしょうか?
【今日の大学関連ニュース】
■「国立大病院の店舗、OB財団が“独占”」(MSN産経ニュース)
医学部付属病院を持つ全国43の国立大学法人が、いずれも入札を行わずに、病院内の売店やレストランなどの運営を、大学関係者らの財団法人に任せていることが分かった。文部科学省OBが天下った財団もあり、ほとんどは売店などの経営を民間に再委託しているが、建物使用料は格安になっているケースが多い。財団による病院関連業務の民間への再委託をめぐっては、会計検査院から「不透明」と改善を要求された例もあり、検証が必要だ。
病院を持つ全国の国立大学法人は、いずれも大学職員OBや文科省OBを理事に迎えた財団法人を設立しており、レストランや喫茶店、売店、理容店などの運営は、ほとんどが財団に任せている。入札を行っている大学はゼロだ。
(上記記事より)
この通り、衝撃的な書き出し。
詳しい内容については、元記事をご覧ください。
書かれている内容がすべて事実だとしたら、なかなかよく調べられていると思います。
例えば、滋賀医科大学付属病院の事例。
付属病院内のレストラン、売店、喫茶店、理容店を運営するのは、大学関係者が理事長を務める財団法人「和仁会」(大津市)。
大学によると、病院建物のうち約441平方メートルと土地約3・2平方メートルを財団が使っているが、使用料は国立大学法人になった平成16年から3年間は無償だった。19年度から有償に切り替えたものの、坪単価で年間約3万円という破格の安さだ。
しかも、病院で和仁会が経営するレストランの賃料が発生するのは厨房(ちゆうぼう)のみ。客が座る部分は「共用スペースなので福利厚生扱いとなる」といい、現在も無償のまま。こうした扱いは各地の国立大学法人でも同様だ。
登記簿によると、和仁会の理事は大学職員OBの理事長以下6人いるが、常勤は理事長と事務職員の2人だけ。売店やレストランの実際の業務は、地元企業や大手レストランチェーンに再委託しており、従業員はいずれもそれぞれの会社が雇用している。店に財団の看板を掲げるだけで、売り上げの一部が財団に納められる仕組みだ。
(上記記事より)
いかがでしょうか。
この記事だけ読んでいると、限りなく「丸投げ」に近い業務実態であるようにも思えますが……。
というか、この財団を通す意味がよくわかりませんよね。
賃料の設定も、確かになんだか、透明性に欠ける感じ。
加えて、入札もまったく実施していないとのこと。
うーむ……と、思わずうなってしまう内容です。
財団による病院関連業務の民間委託をめぐっては、東京医科歯科大(東京都文京区)が18年度、会計検査院から「実際は下請け先に大半の業務を実施させている」と改善指導を受けた例がある。
同大学付属病院の場合、白衣の洗濯や寝具の取り換えなどを、財団法人「和同会」が随意契約で請け負い、さらに民間に再委託していたが、検査院は「財団職員は下請け先との調整、請求書の発行などをしているにすぎない」と指摘した。
(上記記事より)
東京医科歯科大学についての記述も、やはり「丸投げ」を思わせる内容で、穏やかではありません。
こちらは、会計検査院から、「実際は下請け先に大半の業務を実施させている」と指摘された経緯もあるので、なおさらです。
競争入札無しの随意契約によって受けた仕事を、下請けに「再委託」してやらせるという「手法」は、先ほどの事例と変わりません。
■財団法人 和同会
上記の財団サイトには、理事や監事の方々のお名前が掲載されています。
なお、こちらの官報には、この方々がかつて東京医科歯科大学で務めておられた最終職名が掲載されているのですが、これが
元歯学部事務部長
元附属図書館事務長
元経理部主計課長補佐
元歯学部事務部長
……なんてラインナップだったりします。
この記事を書かれた方は、
「関係者を潤わせるためだけの、仲間内で甘い汁を吸うためだけの財団なんじゃないか?」
「もしかして、大学関係者の、大学関係者による、大学関係者のための財団法人なんじゃないか?」
……と、遠回しに主張されているように思いますが、そう考えるのも無理はないでしょう。
財団の方々は、どのように反論されるのでしょうね。
そのロジックが、ちょっと気になるところです。
ところで、文科省の方々はこういった実態に対し、どう考えているのでしょうか。
文科省は、今回の報道の翌日に、「日本私立大学連盟」の会計処理を「指導」していたりします。
私立大の方針などを協議する社団法人「日本私立大学連盟」(会長・安西祐一郎慶応義塾塾長)が、文部科学省から「会計処理が不適正だ」と指導を受けていたことが29日、分かった。私大連は会計処理方法を透明化するとともに、予定していた加盟大学から徴収する会費の値上げを見送った。
私大連は事業活動を拡大するため、年間総額約3億4000万円の会費を約3000万円(約8%)値上げしようと計画。昨年11月末、文科省に打診した。
これに対し、文科省は「値上げの目的が不明確だ」とし、今年3月中旬に東京都新宿区の事務所を現地調査した。事務局長の単独決裁だけで経費伝票を処理する例や、懇親会を頻繁に開催して会議費に計上する実態を確認し、「会計処理がずさんで無駄な経費も散見される」と指摘。値上げを認めなかった。
(「『会計処理不適正』 私大連が文科省から指導受ける」(MSN産経ニュース)より。強調部分はマイスターによる)
無駄な経費を見逃さないその姿勢は頼もしい限り。
でもそのわりに、身内が絡んだ、国立大学病院内の壮大な「無駄」には気づいていないのでしょうか。
■「文部科学省所管公益法人一覧[高等教育局]<医学教育課>」(文部科学省)
↑この通り、冒頭の記事で取り上げられた財団法人の財務状況や事業実態、事務所の所在地から、文科省OBの誰がどの法人の理事をやっているかまで、文科省は全部把握しているはずなので、気づいていない訳はないのですけれど……うーむ。
冒頭のニュース、実際に大学病院で働いておられる方々などは、どう思われるのでしょうか。
関係者の方々から、ご意見をいただきたいところです。
以上、冒頭の記事を読んで、うーん……とうなりっぱなしの、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
財団法人 和同会では、競争入札ではなく、いまだに随意契約を行なっています。
来年度の入札にむけ、いろいろ和同会にしかならないよう、画策していますが、これでは、なんの為の競争入札なのでしょうか?
以前の入札金額は、病院側の提示金額より一円しか違わない物でした。
また、和同会を辞める際には、有給休暇を認めず、沢山の人達が涙を流しています。
これは、労働者の権利を無視する事ではないでしょうか?
滋賀医科大学では病院の再開発計画において、職員から食堂経営者の変更、ローソンなどのコンビニの導入、スターバックスなどのコーヒーチェーンの導入などが申し入れられました。位置的に周囲に全く飲食する所がなく、なおかつ医療現場には夜も昼もないため、医者の食生活は全く酷いものです。しかし、大学側はそういった外食産業との交渉までをも和仁会に丸投げしたため、再開発後も同じ食堂、同じ喫茶、同じ売店です。また、大学内へは数社の弁当配達業者が入っていますが、売り上げの一定割合を喝上げされているとのことです。まるで、ヤクザ。信じられないでしょう?そんなだったら意見など聞かなきゃいいのに、期待していた職員はまったくバカを見ました。このままだったら、医者不足どころか現職までもが栄養不良で倒れますよ。