マイスターです。
大学には、多くのサークルがあります。
スポーツ系だと、高校までと同じように「○○部」と呼ぶこともありますね。
そして毎年、新しいサークルができては、消えていきます。サークルが創設されてから廃部になるまでの「寿命」は、全サークルを平均すれば、おそらくそれほど長くはないでしょう。
そんな中でも、長い伝統を持っているサークルはあります。「創部40年」とか、「大正○年に創部」とか、そこらの大学より古いサークルも見かけます。
(歴史がありそうだということで、六大学野球のチーム公式サイトを見てみたところ、一番古い慶應の野球部で今年、創部120周年だそうです……)
しかし、長い伝統を誇るサークルであっても、時代の変化にともない、環境が変わり、廃部の危機を迎えることもあります。
学生の関心を集めなくなったのだから、そのサークルの役目は終わったのだと考えることもできますが、一方で、数多くのOB・OGを輩出しているサークルは、社会の中にタテヨコの人的ネットワークを形成しているという意味において、大学の隠れた財産でもあります。関係者には、思い入れもあるでしょう。
さて、今日は、そんなサークルを巡るニュースをご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「『休部の合唱団救え』 白髪のOBたち、新入生勧誘に汗」(Asahi.com)
出会いの季節、4月。西南学院大(福岡市早良区)のキャンパスは、新入生と、サークル勧誘の先輩たちであふれていた。そのブースの一つに、ひときわ目立つ白髪の紳士たちがいた。彼らは大正期創立の男声合唱団「西南学院グリークラブ」のOB。伝統あるクラブなのに部員が入らず、2年間休部となっているクラブの危機を見かねて、孫ほどの年の新人を獲得しようと奔走している。
同グリークラブは旧制西南学院中の創立から3年後、1919(大正8)年に誕生した。戦後、大学のサークルとして発展。入学式、卒業式での校歌演奏などを担当し、宗教曲から邦人作品、民謡など幅広い合唱曲に取り組んできた。一時は100人を超す部員がいたが、女子が増えて学生の男女比が逆転した03年から新入部員が途絶え、06年3月に最後の部員が大学を去って休部を余儀なくされた。
そこで立ち上がったのが、団員約70人、平均年齢60代半ばのOB合唱団「西南シャントゥール」。伝統ある男声合唱団の灯を消してはならないと昨年から活動を始めた。
(上記記事より)
西南学院大学の男声合唱団、「西南学院グリークラブ」。
90年近い歴史を持つ伝統あるサークルですが、しかしそのサークルに、現在公式webサイトはありません。
上記の記事にあるように、現役の部員がいなくなり、休部状態となっているからです。
この窮状を見て立ち上がったのが、同合唱団のOB達です。
■西南学院グリークラブOB会
■西南シャントゥール
2006年3月最後の1人のメンバーが学窓を巣立ち、私達の西南学院グリークラブは 大正8年以来87年に亘って連ねてきたその歴史と伝統ある活動に終止符を打たざるを得な くなりました。しかし、大学時代の青春の全てをグリー一筋に過ごしてきたOBの立場から すれば、このような現実は正に驚きや疑問以外の何物でもありませんでした。「グリークラ ブは永遠なり」という思いが、当たり前の事だったからです。
(略)2007年春、OB合唱団である西南シャントゥールの皆さんは、大学の卒業式、入学式 そしてオリエンテーションと出演し、新入部員の勧誘に動きました。しかし、私達OBの 切なる望みはまだまだ叶えられそうにありません。OB会としても地道に根気よくグリー 再興への活動に取り組んでいく方針です。
(「西南学院グリークラブOB会」サイトより)
大学の入学式には、OBが集まって歌うなど、懸命のPR。
しかし、現状は芳しくないようです。
さて、「平均年齢60代半ばのOB」が、母校のキャンパスで新入生の勧誘を行ったという時点で、既に珍しいニュースなのですが、驚くべきはここからです。
それでも、OB会はあきらめていない。最高齢の刀根亨一会長(79)は3月、宮崎市に飛び、宮崎学園高校など合唱の実力校4校を回った。合唱部員の進学先に西南学院大を勧めてもらうためだ。大学の運営母体である西南学院には、合唱推薦枠の創設をかけ合った。刀根会長は「同じ目標を持って何かを頑張る4年間は卒業後の宝になる。OBとして長期戦略で部の復活をめざしたい」と話す。
(冒頭記事より)
同合唱団のOB達が、なんと独自に高校まわりを始めてしまいました。
訪問を受けた高校側も、最初はびっくりしたことでしょう。
その熱意や行動力には感心させられます。
おそらく、本当に心から、母校と合唱団を愛しておられるのでしょう。
ただ同時に、ここまでくると、正直言ってちょっと心配にもなってきます。
大学側の了解を得た上で、こうした高校まわりを行っているのであれば良いのですが、そうでないのだとしたら、高校側と大学との間に、混乱を招くかもしれません。
大学の広報活動には、それなりの戦略があるでしょう。統一されたブランドイメージや、アピールすべきポイントなども、ある程度は取り決められていると思います。決められた枠組みのもとで、大学として組織的に高校向け広報を行っているわけです。
そんな中、全然違うポイントを打ち出しながら、「西南学院大学に来て欲しい」と独自に語ってまわる人が現れたら、高校側は「あれ?」と思うんじゃないでしょうか。
「合唱推薦枠の創設」というのも、実際には難しいかも知れません。
特定の分野での活動実績で入学させるというのであれば、入学後に、その学生が活躍できる相応の場がなければいけません。そうでないと、大学にとっても、入学する学生にとっても、意味があまりありません。
いかに伝統があろうと、廃部直前のサークルを復活させるために推薦枠をというのは、個人的には、少々強引であるようにも感じます。
これだけの熱意をもったOBを持つサークルなのですから、個人的には、廃部は惜しいと思います。
先ほど述べたとおり、こういったサークルの存在も、大学の財産だからです。
ただ基本的には、やっぱり在学生に対してアピールをしていくしかないのではないかな、とも思います。
大学側は、どのように対応されるのでしょうか。
気になるところです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。