「Googleブック検索」に慶應義塾大学が参加 蔵書12万冊の内容が検索可能に

ネット業界出身のマイスターです。

このブログでは、大学関係者の方に、ネットの新しい動向をお伝えしてまいりました。

(過去の記事)
・「ロングテール」を捕まえろ(2005年11月11日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50093005.html
・『ウェブ進化論』は大学関係者にとっても刺激的だ(2006年04月12日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50181186.html
・YouTubeで大学をPRしてみる?
https://unipro-note.net/wpc/archives/50239750.html
・動画投稿サイトでUC Berkeleyが授業の配信を開始(2006年10月04日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50250345.html
・仮想社会の中で、リアルな動きを起こそうとする人々(2006年11月02日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50259424.html
・日本大学が、Googleのオンラインアプリケーションサービスを導入(2007年04月04日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50303225.html
・「Second Life」内にキャンパスを建設する大学、増加中(2007年02月21日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50291733.html
・大学関係者向け、Googleの新サービス紹介(2007年06月08日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50318924.html
・公式サイトでYouTubeを積極的に活用 明治学院大学(2007年06月16日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50320816.html

「youtube」、「Second Life」など、その時々で話題になっているワード。
実は結構、大学も絡んでいたりするのです。

さて、ネット業界の話題の中心にいる会社と言えば、やはりGoogle。
そのGoogleが、数年前から世界中の大学と進めている大プロジェクトがあるのは、ご存じでしたでしょうか。

■「米Google、大図書館の蔵書のほとんどを検索可能にするプロジェクト(2004/12/15)」(INTERNET Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/12/15/5796.html

「世界中の書籍の全内容を検索可能にしてしまう」という、知の検索の究極を目指すプロジェクトの、スタートにあたる事業です。
Google社のミッションは、世界中のあらゆる情報を編集し、利用可能な状態にすること。そのためにまずは、大きな図書館と提携し、著作権の切れた書籍を検索可能にしていこうという訳です。

その名も「Google Book Search」。

上記のニュースは2004年のものですが、その後、欧米の大きな公立の、および大学の図書館が、このプロジェクトへの参加を表明してきました。
著作権保護の観点などから、色々と議論も呼んでいる取り組みですが、特に学術的な活動に貢献する面は大きく、その主旨に賛同する図書館は順調に増え続けています。

そして2007年7月5日、Googleはついに、「Google Book Search」の日本版「Googleブック検索」をスタートさせました。

■Googleブック検索
http://books.google.co.jp/

その翌日、早くも、このプロジェクトへの参加を発表した大学が現れました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「Google、ブック検索で慶応義塾大学図書館と連携–図書館はアジアで初の参加」(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20352355,00.htm
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Googleは7月6日、書籍検索サービス「Googleブック検索」において、慶応義塾大学と提携すると発表した。日本の図書館でGoogleブック検索の図書館プロジェクトパートナーに加わるのは初めて、またアジアでも初の参加となる。慶應義塾大学図書館の蔵書のうち著作権保護期間の切れた書籍約12万冊を対象として書籍のデジタル化に取り組む。
(略)
慶応義塾大学では、蔵書の中から明治から昭和初期の日本語の書籍約3万冊と御伽草子などの和装本約9万冊の計約12万冊を提供し、Googleとともに電子化に取り組む。特に福沢諭吉の文書などを電子化するという。

慶応義塾大学では、1996年からさまざまなプロジェクトでデジタルコンテンツの共有化に取り組んでいる。2008年に創立150年を迎えるにあたり、記念事業の一環として今回のGoogleブック検索との提携を決めたという。

慶応義塾長の安西祐一郎氏は「デジタル時代のグローバルな知の創造、流通、利用、構築をリードしていきたい」と語る。

現在、Google ブック検索には全世界で1万社以上の出版社、25の図書館が参加している。
(上記記事より)

というわけで慶應義塾大学が、ハーバード大学やスタンフォード大学などに続き世界で26番目、アジアでは初の、Googleブック検索プロジェクトの提携図書館となりました。

慶應義塾大学の蔵書数は、日本の大学でもトップクラスに入ります。
そういった大学が最初に名乗りを上げたことのインパクトは大きいはずです。

(慶應義塾大学は、以前からグーテンベルク聖書のデジタルアーカイブ化などに取り組んでいましたから、こういった事業には積極的なのかもしれません)

各メディアの報道によると、現時点ではGoogle社には、他の図書館と提携する予定はないようですが、別に排他的な姿勢をとっているわけではなく、参加図書館を求めているようです。
慶應に限らず、大学の図書館はいわゆる稀覯本や、学術的に貴重な資料などを所蔵していることが多いと思います。そういった資料を世のためにデジタルアーカイブ化し、公開しようということに前向きな図書館は、Google社に申し出てみるといいのではないでしょうか。

試しに、実際にGoogleブック検索を使ってみましょう。

「Googleブック検索」で「福沢諭吉」と検索

「福沢諭吉」という文字列が含まれた書籍は、2007年7月6日現在、77件出てきます。
慶應義塾大学の蔵書が反映されていくのはこれからでしょうから、今後、このヒット数がどんどん増えていくのでしょう。

しかしこの「Googleブック検索」、使ってみるとやはりすごい。
本の内容までが全文検索できてしまうというのは、すさまじいです。
大げさではなく、学術活動、執筆活動などのあり方に、大きなパラダイムシフトをもたらす存在になりそうな予感がします。

「Googleブック検索」で、「Fukuzawa Yukichi」と検索

ちなみに「Fukuzawa Yukichi」と英語で検索してみると、669件のヒットがあります。
「Google Book Search」プロジェクトの取り組みは、これまで欧米の大学中心で進められてきましたから、現時点ではこういった結果になるわけですね。
そのうち、和文の書籍や資料も、どんどんヒットするようになるのでしょうか。

慶応義塾大学全体では約427万冊の本が収蔵されているが、三田にある慶応義塾図書館にはそのうちの244万冊が収蔵されている。このうちデジタル化されるのは、慶応義塾図書館の12万冊以上。内訳は、明治から昭和にかけての日本語図書が約3万冊、『御伽草子』などの和装本が約9万冊となる。なお、一番古い書籍は江戸中期頃のものになる予定とのこと。デジタル化の作業は同大学の創設者である福澤諭吉の著書や同大学の書籍を中心に、今年から開始される。12万冊すべての書籍がデジタル化される時期については未定だという。

「慶應義塾大学が“Googleブック検索”で12万冊をデジタル公開!」(ASCII.jp)より)

慶大の12万冊は上記のような内訳だそうです。

他の大学も、「本学にはこんな貴重な書籍がある!」というものを持ち寄ってみてはいかがでしょうか。
提供するのがたった1冊だったとしても、それが「世界に数冊しかない書籍」のうちの1冊だったとしたら、人類にとって大変な貢献になりますよ。

以上、マイスターでした。