外国人を正社員人材として採用する取り組み

マイスターです。

不況で、学生の就職活動も厳しい状況にあるそうです。
例年の同時期と比べて、内定を獲得した学生の割合が半分だとも。
中国や韓国でも大学生の就職が厳しいという話を聞きますし、改めて、世界的な不況であることを実感。

さて、今日は2つ、就職に関する話題をご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「【オランダ】オランダ、求む高学歴外国人」(IBTimes)

オランダは、高学歴で能力のあるプロフェッショナル人材を増やすため、移民政策を変更することを決定した。アメリカ合衆国やイギリスでは、昨今の金融危機で外国人労働者を排除し自国民を優先させる政策を取り始めているのとは対照的である。
米国と英国では、労働者だけでなく留学生や科学者の入国も限定している。これまで、低開発国の優秀な学生や研究者は、オランダを素通りしてアメリカやイギリスで博士号や研究職を得ていた。しかし今回の政策変更は、「オランダにとって優秀な人材を得るまたとないチャンスである」と王立オランダ学術科学学会の代表であるダイクグラーフ氏は語る。
オランダ政府は、外国人を雇う企業や大学が優秀な外国人の人材を解雇せざる得ない状態になった場合に、人材確保のための資金として2億8000万ユーロの基金を設立した。通常、職を失った外国人は即刻国外退去となるが、この基金により次の仕事が見つかるまでの間は滞在許可を保持できるようになった。
(上記記事より)

一般論ですが、不況が長引くと、社会は不安定になっていきます。

特に影響が大きいのは、若者の失業。
一般に、若者の失業率は全年齢の平均値より高いとされています。
で、何しろエネルギーが有り余っていますから、荒っぽい抗議行動が増えたりするとも。

例えば2005年、フランス・パリの郊外で起きた暴動の報道は、記憶に新しいです。
あれも、若者の失業者増加が原因の一つだと言われていました。
(パリでは、2007年にも大学が占拠されたりと、しょっちゅうデモや暴動、抗議行動が行われています。さすが革命の国?)

加えてヨーロッパの場合、移民をたくさん受け入れている国が多く、これが不況時にしばしば、ややこしい対立を引き起こします。
というのは、失業した方々の中で、「移民が仕事をとってしまうから、自分は失業したのだ」といって、不満の矛先を移民に向けてしまう方が出てくるのですね。

なんだか悲しくなってしまう話ですが、失業した方も生活を抱えて必死なのでしょう。
経済がうまくいかないときには、排他的なナショナリズムが拡大する。その背景には、職を巡る対立もあるのだと思います。
世の中が国際化していく中で避けて通れない、難しいテーマではあります。

その一方で、「優秀な人材なら、どの国の出身者でも欲しい」と考える人も、世界には大勢いたりします。同時に逆の動きが起きているわけですから、世の中、面白いものですね。

そんなわけで上記は、オランダのニュース。
オランダ人よりも、外国人労働者を優遇するという政策です。

他の諸国が、自国民を保護するために外国人を閉め出そうと動いている中で、逆の方向性を打ち出したのですから、目立っていることでしょう。
国境を越える知識や技術を持ったプロフェッショナル達の中には、オランダを意識する人も出てくるかもしれません。
「学生や研究者」も、その中に含まれています。

(過去の関連記事)
■「留学生採用に関心を持つ企業は多い、けれど」

日本が、本当に留学生を30万人にするのなら、いつかこういう視点も必要になるのかもしれませんね。
というか、「留学生30万人計画」といった計画を立てるのなら、その前提として、まずこういう発想があって然るべきなのかもしれません。

「日本の大学に学びに来ると良いよ。優秀な学生は大歓迎だよ。日本の優れた教育を受けて、世界に羽ばたきなさい。
でも日本の企業じゃ使わないよ」

……なんてのは、あり得ないですからね。

そんなことを、↓こちらの記事を読んでさらに思いました。

■「飽和市場で外国人正社員を大量採用 ローソンが“純血主義”を捨てた理由」(ダイヤモンドオンライン)

ローソンでは、大卒の新入社員も全員店頭業務からスタートするが、今年は「新入社員122人中、実に3割にも上る39人が外国人」という異例の多さとなった。
国籍は、中国が33人と大多数を占める。その他にベトナム、台湾、韓国、インドネシア、バングラデシュの出身者がいる。男女比は約半々だ。皆日本の4年制大学を卒業し、日本人の大学生と全く同じ条件でローソンの採用試験に合格して入社して来た。入社後の待遇もすべて日本人と同じだ。
筆者はたまたま4月の研修の模様をテレビで見ていたが、彼らの日本語の受け答えはほぼ完璧。それどころか、全体的に日本人よりもしっかりしており、ハツラツとした印象を受けた。
彼らは昨年入社した外国人社員10人(全採用者数は115人)と同様、各地の店舗で店長代理などの業務に当たり、その後スーパーバイザーを経て、各部署に配属されて行くという。
「外国人は店頭業務だけ」という従来のイメージとは違い、彼らはローソンの将来を背負って立つことを期待されている社員たちなのだ。
(上記記事より)

以前のニュースクリップでもご紹介しましたが、コンビニ大手のローソンでは、今年の新入社員のうち3割が外国人。
日本人社員と変わらず、ゆくゆくは会社を背負って立つことを期待されています。

同じコンビニでも、セブン-イレブン・ジャパンは457名の新卒採用のうち外国人新入社員の採用ゼロ。ファミリーマートでも5%未満ということですから、3割という数字は際だっています。

ローソンが外国人社員を多く採用した理由が、記事には書かれています。

ローソンが外国人社員の正式採用に踏み切ったのは、2008年から。きっかけは「私たちは変わらなければいけない。混沌から変革が生まれるのだ」という新浪剛史社長の力強い決断だった。
(略)氏が口をすっぱくして発言し続けて来たのが、「“変わるため”に最も大事なのは社員一人ひとりの意識改革」というキャッチフレーズである。
「外国人社員の採用に踏み切ったのは、若い頃アメリカでMBAを取得する際に社長自身が異文化に触れた経験が、かなり生かされているのでは」と、同社広報担当者は説明する。
それは、従来日本企業が採用して来た海外事業を遂行するための“ブリッジ要員”とは全く異なる存在であり、「内なる国際化」に向けた第一歩に他ならない。
つまり、新浪社長が目指す「考える人材を育てる」ためには、“純血主義”にこだわっていてはいけないというわけだ。あえて外国人社員を入れ、混沌(カオス)を引き起こし、そこから変革していくことが必要だった。
(略)従来、コンビニは若年層(20~30代)の男性を主なターゲットにして来た。ローソンはそこから目を転じ、ここ数年は中高年や女性をターゲットにして“個性”を出して来た。
前述の「ナチュラルローソン」や生鮮野菜を扱う「99プラス」などは、そのよい例だ。全国一律ではない店作りを行ない、地域に住む人々の年齢やライフスタイルに合った商品・サービスを提供して行こうと考えたのだ。
ところが、これまでの社員構成は、理想に遠く及ばないものだった。「社員の9割が男性、女性は1割程度だった」(ローソン)のである。さまざまな形態の店舗作りをして行こうというのに、その担い手となる社員のほとんどが男性で、しかもライフスタイルにも出身にも大きな変化がなかった。これでは、商品開発をする彼らの発想も画一化してしまう。
こういった危機感が、冒頭のような外国人社員の本格採用に結びついたというわけだ。
(上記記事より)

数年前から「ダイバーシティ(多様性)」という言葉がよく使われるようになりましたが、これがまさにその事例でしょう。

個人的には、このローソンの考え方にとても共感します。

留学生や、海外大学卒の日本人学生を、まだ「国際業務」のための人材として見ている企業は少なくありません。
そういう部署で力を発揮できる資質があるのは確かですが、日本だけで学んだ日本人にはない視点や発想、それに自国を飛び出し海外でマイノリティとして過ごした行動力や経験値など、語学以上の価値を彼等はたくさん持っています。
単純に、学力を含めた能力全般を見ても、とんでもなく優秀な留学生は少なくありません。
人材として、魅力的です。

こういう考え方は、他の企業にも徐々に拡がっていくことでしょう。
そうしてはじめて、大学関連の留学政策も、本当の意味で拡大していくのかな、という気もします。

ちなみに余談ですが、マイスターのいる「早稲田塾」も、海外からの留学生や海外大学卒生など、多様な人材を正社員として抱えています。
これ、マイスターはとても良いことだと思っています。

高校生が日常的に接している大人は、だいたい自分の家族・親類と、学校の先生くらい。とても狭い範囲です。それに高校生の行動範囲は、大学生以上の方と比べると、そんなに広くもありません。
どんな学校に通おうと、触れられる価値観の幅には限界があります。
でも、多感な時期なのですから、本当は、それまでの固定観念を良い意味で壊してくれるような大人にたくさん出会えるような環境が望ましいのではないかと、マイスターは考えるのです。

教育産業ですから、「人」がつくる環境は何より大事。「首都圏出身で、東京の大学を出て、そのまま東京の会社に就職した」みたいな社員も悪くはありませんが、同じようなタイプの社員ばかりでは進路指導ひとつとっても画一的になってしまうでしょう。
そういう点で、多様な価値観を持った人材、例えば外国人のスタッフなどが身近にいるのは、高校生にとっても悪くない環境なのではないかな、と思います。

「留学生30万人」が進められていうる間は大学のキャリア指導関係者の方々も、少し視点を変えていく必要に迫られるかもしれませんね

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • 日本へ来る留学生に対する就職促進は、文科省と関係するJASSOも手がけていますが、厚生労働省も(少なくとも)5年程前から行っており、次のようなWEBページなどもあります。
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin.html 
    (下の方に「日本で就職しようとする留学生の皆さんへ」)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin08/index.html 
    (基本は中国出身の留学生向けの動画です。
    留学自体のことから、就職のことまで説明しています。
    留学生30万人計画と連動しているかはわかりません)
    また、現在の各大学の就職部・就職課・キャリアセンターなどでは、既に留学生向けの就職支援をしているところも多いと思われます。