マイスターです。
「オープンコースウェア(Open Cource Ware)」という取り組みがあります。
マサチューセッツ工科大学、通称MITが最初に始めたもので、
「誰でも視聴できるように、大学の授業を、インターネットを用いて無料で公開する」
というもの。
最先端の高等教育に誰でも簡単にアクセスできる社会をつくる、という目的と同時に、「これだけ魅力的な授業をやっている大学なんだぞ」ということを広くアピールするという狙いもあるようです。
■「OpenCourseWare」(MIT)
当初は、「無料で」という点に賛否両論が集まったものの、徐々にその意義が浸透。
今ではアメリカや日本など、多くの大学で同様の取り組みが行われています。
■日本オープンコースウェア・コンソーシアム
■「正会員(50音順)」(日本オープンコースウェア・コンソーシアム)
現在、東京大学や東京工業大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学などなど、多くの大学の講義が(全部ではありませんが)オープンコースウェアとして公開されています。
大学によっては、こういった授業コンテンツを、さらに色々なメディアで展開する試みも進めています。
例えば東京大学などでは、一部の授業をPodcastingで配信。iTunesでダウンロードした授業映像を、iPodで視聴することが可能です。
ノーベル賞受賞者の小柴教授の授業など、人気を集めている講義もいくつかある模様。みなさん、興味津々なのでしょうね。
さて、今日は、こんなニュースをご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「京都大学がYouTubeで講義の動画を配信―『YouTube 京都大学オープンコースウェア』開設」(All-in-One INTERNET magazine 2.0)
4月8日、YouTube(Google)と京都大学はコンテンツパートナーシップを結んだと発表。YouTubeにおける「ブランドチャンネル」の1つとして「YouTube 京都大学のオープンコースウェア」を公開した。ノーベル賞を受賞した湯川秀樹の研究を、九後太一教授が解説したものをはじめ、すでに199の動画が公開されている。
京都大学では、2005年から大学のウェブサイトなどで、「オープンコースウェア」として講義の模様や資料をポッドキャストやPDFで提供してきたが、これらの動画コンテンツをYouTubeを使って公開していくことになる。日本の国公立大学がYouTubeで講義の内容を公開するのは初めて。
通常、一般ユーザーは最大10分までの動画しかYouTubeにアップロードすることはできないが、ブランドチャンネルを活用することで、10分以上の動画も提供される。
また、このコンテンツはケータイ(現在は、NTTドコモの端末のみ)からも利用できる。
(上記記事より)
京都大学が、オープンコースウェアなどで公開していた授業を、動画投稿サイト「YouTube」でも展開し始めたというニュースです。
日本の国公立大学としては、初の試み。
同様の取り組みとして、私立大学では、明治学院大学の例があります。
明治学院大学は、大学公式サイトのトップページに、YouTube動画がずらっと並ぶという凝りよう。
ただ、明治学院大学はどちらかというと、大学を紹介するムービーを配信するためにYouTubeを使っているようです。
授業をYouTubeで、という京都大学の取り組みは、まだ非常に珍しいものだと思います。
■KyoDaiOcw の再生リスト
上記がその講義リスト。
すごいのは、医学部の講義映像。
手術シーンが、そのまま映っています。
通常、テレビなどでは、あんまりダイレクトな映像は放映しないと思いますが、こちらは何しろ医学部の講義映像ですから、全部そのまま。
人によっては衝撃が強いと思いますので、敢えてここには映像を貼りませんでした。興味がある方は上記のリンクからご自身でアクセスしてみてください。
ところで京都大学では、自前のオープンコースウェアの仕組みと、動画投稿サイトを、両方活用しています。
映像を自分のところのwebサイトで公開するのは、結構大変です。大勢がいっぺんに閲覧に押しかけるとサーバに大きな負荷がかかりますから、そうならないようにインフラを整備する必要がありますし。
でもYouTubeなどのサービスを利用すれば、そういった点は心配要りません。
個人的には、映像を配信するだけなら動画投稿サイトの方が、話題性や操作性、アクセスのしやすさといった面では勝っているように思います。
ただ、自分たちでオープンコースウェア用のシステムを構築しておけば、講義資料を配付したり、場合によっては教員に質問したりといったことも行えます。
ですので、
「オープンコースウェアとして授業映像や資料等をアーカイブ化し、それをさらに、必要に応じてpodcastや動画投稿などの様々な手段でも配信する」
というのが現状では一番いいのかな、なんて個人的には思います。
例えば、オープンコースウェアの授業リストにアクセスするときって、たいてい、
「学部 → 学科 → 授業」
っていう、大学ならではの「学問階層」を順に追う形になってますよね。
一方YouTubeなどでは、動画を閲覧した後、タグなどで関連付けられた類似の動画のリストが表示されますよね。あれはあれで、思わぬ関連映像を見つけられたりします。
どちらも、ユーザーにとってはメリットがあるとマイスターは思います。
このように、それぞれのメディアのいいところは享受する形で、試行錯誤しながらあれこれと試していけばいのではないでしょうか。
大学関係者の皆様は、ぜひ様々な形での公開を試してみてください。
そして高校生の皆様は、ぜひ、気になる大学の授業をインターネット上で視聴してみてください。
志望校が変わる(?)、なんてこともあるかも知れませんよ。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。