「図書館設立に憂慮の声 ブッシュ地元の大学」

マイスターです。

アメリカには、

「退任した大統領が現職当時の公文書などを展示、管理する記念図書館を設立する」

……という制度があるって、皆様はご存じですか?

こうした記念図書館、大統領の出身地である州の大学に建てられることが多いのだそうです。
「地元の英雄」を称え、後世まで記録を残していこうというこのシステム。いかにもアメリカらしい制度だなぁと思います。

さて、そんな大統領記念図書館に関して興味深いニュースを見つけましたので、ご紹介したいと思います。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「図書館設立に憂慮の声 ブッシュ地元の大学」(U.S. FrontLine)
http://www.usfl.com/Daily/News/07/01/0129_001.asp?id=52266
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ブッシュ大統領が退任後に設立する記念図書館の候補地となった地元テキサス州のサザン・メソジスト大学で、教職員の一部から泥沼化したイラク情勢など大統領の「負の遺産」によって、大学の評判が落ちかねないと憂慮の声が上がっている。

米国では、退任した大統領が現職当時の公文書などを展示、管理する記念図書館を設立する制度がある。残り任期2年を切った大統領の図書館立地先の選定にも、イラク情勢が影を落としているといえそうだ。

25日付のワシントン・ポストによると、同大学で24日行われた会合で、一部の教授が「お金や権力を持ち、われわれの価値観に無頓着な人々がキャンパスに入ってくることに懸念を覚える」と表明。

中でも、図書館に併設される政策研究機関が、ブッシュ政権の保守的イデオロギーを唱えるシンクタンクになるのではと疑問の声が出たという。
(上記記事より)

本来なら故郷の英雄を記念する施設として歓迎されるはずのところですが、ブッシュ大統領の記念図書館は、受け入れを拒否されるかも知れません。

同大はローラ大統領夫人の出身校で、昨年記念図書館の候補地に選ばれた。大統領の父、ブッシュ元大統領の記念図書館も同じテキサス州のテキサス農工大に設置されている。
(上記記事より)

と記事にはあります。このほかテキサス大学オースティン校にはリンドン・ジョンソン大統領の図書館もあります。テキサスの主要な州立大学二つには、すでに大統領記念図書館があるのですね。
そんなわけで候補に挙がったサザン・メソジスト大学。しかしながらブッシュ大統領の支持率が低下し彼の政策について批判的な意見が増えてくる中で、大学にもそういったマイナスイメージが影響しないかと心配されているわけです。

また、図書館と同時に様々なイメージやイデオロギーをも背負わなければならなくなるのではないかと心配する声も上がっているようで、こちらはよりシリアスです。

■George Bush Presidential Library and Museum
http://bushlibrary.tamu.edu/
■LBJ Library and Museum Home Page
http://www.lbjlib.utexas.edu/

記事にもありますが、アメリカの「大統領記念図書館」というのはたいてい、リサーチを行うためのスタッフを擁しているのですね。さすがアメリカ……と思わず感心するところですが、そう喜んでばかりもいられません。「ブッシュ政権の保守的イデオロギーを唱えるシンクタンク」としてこの記念図書館が機能する恐れもあるからです。
そうなったら、大学のイメージにも何らかの影響を及ぼすかも知れません。また記事の中で一部の教授が懸念しているような「お金や権力を持ち、われわれの価値観に無頓着な人々がキャンパスに入ってくる」という事態が起きないとも限りません。

日本の図書館のイメージで考えるとなかなか分かりませんが、なるほどこれなら、大学関係者があれこれ悩まれるのももっともです。

調べてみたら、↓反対署名サイトまでありました……。

■「Protect SMU Petition」
http://www.protectsmu.org/

日本の大学も、寄付金集めに長けているアメリカの大学を見習おう!…という意見を良く聞きます。マイスターもまったくそう思うのですが、寄付や寄贈は外部からの影響力を強めるという面があることも忘れてはいけないなと改めて思います。そうそううまい話はないのですね。

以上、マイスターでした。

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(過去の関連記事)
・寄付金で大学を動かす?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50215612.html