世界100箇所「紫式部日本語講座」で、中国「孔子学院」に対抗?

マイスターです。

以前、↓こんな記事をご紹介しました。

・世界100カ所に中国語教育の拠点を : 中国の「孔子学院」戦略とは (2006年09月19日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50245478.html

中国の世界戦略の一環として、ものすごいスピードで世界各国につくられている中国政府公認の中国語スクール「孔子学院」。

日本語でも、その動きに対抗しようという動きがあるようです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「日本語学習、海外に100拠点…外務省方針」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20071222ur21.htm
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日本語を世界に売り込め――。外務省は、海外で日本語を教える拠点を今後3年間に、現在の10か所から約100か所に増やす方針だ。来年度予算案に2億1000万円を盛り込み、70か所増やす。

中国が中国語教育の「孔子学院」を次々と設けていることに対抗し、外務省広報文化交流部は「一目で日本語講座とわかる名称を考えたい」としており、「紫式部日本語講座」とするアイデアも検討されている。

海外の日本語学習人口は2006年時点で133か国・地域の298万人となっている。1979年当時の約23倍で、03年と比べても約62万人増えているが、今後は伸び悩むと見られている。

これに対し、中国はこの2年間で「孔子学院」を188か所に設けた。中国経済の拡大で「中国語学習熱」は広がっており、外務省は「日本語人口の多い東南アジアなども中国語に席巻される」との危機感を募らせている。

(上記記事より)

というわけで、日本政府も海外に日本語学校を100箇所、設立するのだそうです。
アイディアとして、「紫式部日本語講座」なんてものも出ているとか。
数といい名称といい、中国の動きを意識したものであることがはっきりと分かりますね。

無理もありません。経済成長を背景に、中国語の学習者は増える一方。
対する日本語も、増えてきてはいるのですが、中国語ほどではありません。

(過去の関連記事)
・アメリカの大学で人気なのは、どの国の言葉? (2007年11月14日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50387568.html

語学学習者の人数は、その国の国際的な影響力の大きさにも関わってくる問題です。
(中国がいま「孔子学院」に力を入れる理由もそこにあるわけです)
そこで日本も負けていられない……というわけですね。

しかし、↓こういったニュースを見つけると、「まだまだ、日本語には可能性があるんじゃないか?」と思えてもきます。

■「フランス人「日本熱」 来日者数10年で倍 漫画で関心」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/update/1205/TKY200712050217.html

フランス人の日本の大学などへの留学生は、06年で417人(文部科学省調べ)にとどまるが、「予備軍」は急増中だ。フランスでの日本語学習者は、06年には1万5534人(国際交流基金調べ)と84〜85年の約5倍。ヨーロッパ諸国では最も多い。近藤安月子(あつこ)・東大教授らが日本語を学ぶ動機などを尋ねた05年の調査では、「漫画・アニメ」が最多の30%で、専攻学生の8割が留学を希望していた。

漫画は旅行者数にも影響しているようだ。06年のフランス人の来日者数はここ10年でほぼ倍増の12万1310人。フランス人向けに、秋葉原や宮崎駿監督が館主を務める「三鷹の森ジブリ美術館」、コスプレイベントなどを巡るツアーを企画する会社も登場した。

フランスで日本アニメの放映が本格的に始まったのは80年代後半。91年には「ドラゴンボール」が出版された。これらで育った世代が成人になりつつあることが背景にある。京都精華大マンガ学部の牧野圭一学部長は「日本の漫画は政治から歴史、囲碁など幅広い対象を扱い、日本文化のカタログの役割を果たしている。19世紀、浮世絵を通じて日本に関心を持ったことに似ている。新しいジャポニスムですね」と話している。

(上記記事より)

今や日本語は、欧米などの方々にとっては、ビジネスで活躍するためのツールである以上に、漫画やアニメといった「新しい日本文化」を楽しみ、理解するためのツールであるのかもしれません。

国の経済的な評価は、その都度変わっていきますが、文化が得た評価はそう簡単には凋落しないように思います。
そう言う意味では、あながち悪い状況というわけでもないのではないでしょうか。

冒頭の記事には

外務省は、世界的に人気を集めている日本のアニメやポップカルチャーを紹介できる日本語教師を、こうした日本語普及拠点に派遣する。来年度はハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ルーマニアに30人を派遣する。

(冒頭記事より)

とあります。
この辺りから、日本が他の国とはまた少し違った形で日本語の普及を進めていく可能性を、個人的には少し感じたりします。

以上、マイスターでした。