3つの大学の同窓会に組み込まれているマイスターです。
そのうち1つは、日本有数の熱心さを誇る同窓会です。
入学前から噂には聞いていましたが、まさかこれほどアクティブだとは。何しろ他の3大学と比較すると、同窓会がこちらにアクセスしてくる頻度が違うのです。
卒業後、マイスターは2回引っ越しましたが、その同窓会に対してだけは、なんだか常にこちらの居場所を伝えている気がします(web上で住所登録の変更をするシステムも用意されています)。
また、そこでは同窓会と連携して、大学も様々なアプローチをしてきます。
卒業生向けのメールマガジンがあるのは当然で、最近では、卒業生向けの情報をRSSでも配信してきます。ホーム・カミング・デイの専用サイトも非常に充実しています。
(社会人OBが郊外のキャンパスに来るのは大変だろうということで、年によってはホーム・カミング・デイ自体が都心の施設で開催されたり、よりアクセスの良いキャンパスと合同で行われたりしています)
3つも同窓会を掛け持ちしているだけに、その熱心さの差が、マイスターにははっきりとわかってしまうのです。
今、マイスターが大富豪だったとして(悲しい妄想ですが……)、どこかに寄付をしようと考えたら、多分一番多くの金額をその大学に出すと思います。
寄付のことだけではありません。働いていると、たまに母校を同じくする人達と仕事で知り合うことがありますが、一番「同門!」という意識を感じるのは、同窓会の印象が強い学校であるように思います。
そんな経験もあり、日本の大学にとって、これからとても重要になっていくものの一つに、同窓会のマネジメントが挙げられるだろうとマイスターは思っています。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「東大解剖(5) 同窓会 企業からも注目」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20060930us41.htm
■「京大、全学同窓会発足へ 11月に設立総会」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1005/009.html?ref=rss
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東大が全学的な同窓会の整備に乗り出した。企業も注目する。
校歌、校旗、校章、同窓会。1877年(明治10年)の東京大学創立以来、いずれもなかった。
卒業生は、良く言えば「群れない」、悪く言えば「斜に構えた」タイプが多いと言われる。医学部の鉄門倶楽部、工学部建築学科の木葉(もくよう)会など、学部や学科単位の集まりはあったが、大学全体の同窓会組織はなかった。
校章は2004年4月の法人化と同時にできた。その半年後、大学の音頭で、個別の同窓会組織を束ねる形の学友会が発足した。大学本部には、学友会を支援する卒業生室もできた。最も身近な応援団や、社会とのパイプ役として、同窓生に期待するからだ。
毎年秋には、卒業生が母校を訪れる「ホームカミングデー」も開かれるようになった。今夏には、同窓生専用のホームページもできた。
新制大学になって以降で20万人と言われる卒業生のうち、住所が把握できたのはまだ約9万人だ。卒業生30万人の9割を把握する慶応大などには及ばないが、学友会ニュースと一緒に創立130周年の寄付を呼びかけると、800人近くが申し出るなど、同窓会効果は現れている。
(略)
同窓会に熱い視線を送るのは大学ばかりではない。富裕層向け情報サービスを手がける「アブラハム・グループ・ホールディングス」社は昨年8月、東大同窓生限定の「東大OBネット」を作った。会員の紹介で入会を認める「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の一つだ。
東大本体との直接のつながりはないが、提携した旧帝国大系の同窓会組織「学士会」が東大卒業生かどうか確認する。これまでに2万人が登録した。
「東大の卒業生は、幅広く社会で活躍している。企業にとって魅力的な『知的富裕層』と言える」と、OBで、三井物産を経て起業した高岡壮一郎社長(32)が力説する。
このネットにはすでに、航空、不動産、英会話、求人情報など、有名企業の広告も流れる。仲間意識を共有する同窓会が、新しいビジネスの場としても注目されている
(読売オンライン記事より)
京都大は5日、全学を対象とした同窓会を設立すると発表した。これまでは学部や研究科単位で、卒業生全体を把握していなかった。旧7帝大のうち、全学の同窓会組織がないのは京都大だけだった。尾池和夫総長や近畿日本鉄道の辻井昭雄会長ら59人を発起人に、11月3日に設立総会を開く。
同窓会担当の理事は「自由な校風で、大学が一つに束ねる方向にいかなかったが、これからはネットワークづくりが必要」と話している。
(Asahi.com記事より)
日本を代表する大学である東京大学、京都大学が、同窓会組織を持っていなかったという事実。大学関係者は既にご存じのことと思いますが、一般にはあまり知られていないのではないでしょうか。「霞ヶ関では、東大法学部の学閥が非常に大きな力を持っている」みたいなイメージがありますからね。
ここでいう「同窓会」というのは、全学統一してのOB・OG組織のことです。読売の記事にもありますが、東大にも学部学科単位でのOB組織はあったのですね。ただ、東京大学同窓会と呼べる組織はなかったのです。学部学科での狭いつながりはあっても、大学としてのネットワークは持っていなかったというわけです。
京都大学も、おそらく似たような状況に置かれていたのではないでしょうか。
それが、ここに来て、同窓会組織の整備を進め始めたのです。
背景には様々な要素があると思いますが、今、同窓会を整備しようとする直接的な要因の一つは、寄付金政策の充実ではないかと思います。
■「東京大学基金とは?」(東京大学基金事務局)
http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/gen/gen5/about.html
■「湯川・朝永記念基金への募金」(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/yt100/kikin.htm
国立大学法人化をきっかけにして、東京大学や東北大学、名古屋大学など、旧帝国大学が続々と、基金の設立に動き始めています。
世界の大学と競争するための、強固な財務基盤を構築するためです。
これが、同窓会整備を進める原動力になっているのは間違いないでしょう。
そしてもう一つ、東大や京大が同窓会組織を整備しておきたいと思い始めた理由として、「大学を巡る市場の変化」というものも挙げられるように思います。
簡単に言えば、「何もしなくても東大や京大がトップ集団を呼び込めた社会構造が少しずつ崩れつつあるので、卒業生達の力を借りたい」ということです。
東大や京大を出れば自動的に社会のエリートになれる時代は、もう終わりつつあります。優秀な生徒はいずれ海外に流出するようになるのでは、という声を最近では良く聞きます。どんな業界でも仕事をする際、国際社会を相手にするという機会は増えてきています。それならアメリカあたりの名門大学に進学する方が、東大に行くよりも良いと考える人が出てきても、不思議ではありませんよね。
さて、そういう風潮が強まってきたとき、果たして東大出身の親は、自分の子供に東大進学を勧めるでしょうか。それとも、海外への留学を勧めるでしょうか。これまでは「親子そろって東大」がエリート家族の典型でしたが、今後は、そう考えない親だって増えてくるかも知れないでしょう?
大学側がそんな状況を恐れ、今のうちに卒業生達と大学との結びつきを強めておきたいと考えるのも、当然のことだと思います。
市場の変化という観点で、もう一点。
大学の役割は多様化してきていますよね。例えば、社会人大学院での教育なんてのは、これまで大学が担っていなかった役割の一つです。
これまでの18歳向け学部教育ではトップを取れていても、他の部分ではそうもいかない、という場面が出てくるかも知れません。
・法科大学院 新司法試験に合格した学生は何パーセント?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50247185.html
↑一橋大学法科大学院など、ロースクールの合格者率ランキング上位校のサイトで、法科大学院の入学生を見てみると、東大や京大、名古屋大などの卒業生を少なからず抱えていることがわかります。言い換えれば、「東大や京大の卒業生が、自分の母校ではなく、他の大学を進学先に選んだ」ということです(もちろんこの中には「母校を受けて落ちた人」も含まれていると思いますけれど)。
■「2006年度法科大学院入試の経過と結果について」(一橋大学)
http://www.law.hit-u.ac.jp/ls_admissions/news060112.html
大学院は学部と違う大学に進学した方がいいとマイスターは常日頃から考えていますので、客観的に見て、こうした動きは悪いことだとは思いません。ですが東大や京大にしてみれば、穏やかな話ではないでしょう。
同窓会組織は、こういった社会人向けサービスの宣伝をする際、非常に強力なメディアになるはずです。ですから、今のうちに卒業生達に直接情報を流すシステムを構築しておきたいと当然考えるでしょう。
(OB組織が強力だと、逆に他大学の学部を出てこちらの大学院に進学してきた人を、ガッチリ同窓会に取り込んで「奪って」しまうことだって可能だと思います。マイスターがその例です)
ね、なかなか大きな可能性を秘めていると思いませんか、同窓会。
おそらく今後は、これまでとは違った役割を担う組織になっていくのではないかと思います。
同窓会をどう組織し、どう活用するかは、これまでになく重要なテーマになってきます。私学をはじめ既に同窓会組織を持っている大学でも、従来通りの方法で組織を運営していれば十分なのか、今一度検討し直してみるべきかも知れません。
「今後、自分たちは社会に対してどんな価値を提供していくのだろうか?」
ということを考えながら、既成概念にとらわれない同窓会の役割を考えてみてください。
なおその際、一番気をつけなければならないのはもちろん、個人情報の保護です。
ちゃんと使用意図を説明し本人に許可を得れば、個人情報を収集することは可能です。しかし集めた情報の取り扱いにはくれぐれも注意しなければなりません。活用できる形で同窓会をマネジメントしようと思ったら、就職先などの情報も収集する必要があると思いますが、これが外部に流出などしたら、大学にとっての一大事ですからね。
以上、マイスターでした。
こんにちは 初めまして、
山形市の佐藤と申します。
私の知る限り、過去は湯川秀樹博士から今をときめく中山教授まで素晴らしい活躍の京大ですね。
そこで、お尋ねしたいのですが、こちら山形市へ京都大学の同窓会あるいは支部がありましたら、是非ご紹介お願いしたいのですが。
よろしくお願いいたします。
山形市小荷駄町5-38 佐藤三喜男
e-mail ja7bsd@k5.dion.ne.jp