高卒認定試験の採点ミス 被害が拡大しているのは何故?

マイスターです。

年末から、この問題に関しての報道が相次いでいます。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「高認採点ミス、追加合格者は計80人 文科省が調査終了」(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080102/edc0801021034000-n1.htm
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高校卒業程度認定試験の採点ミスで本来、大学入学資格を得られた受験生が不合格となった問題で、文部科学省は1日、平成17、18年度試験の受験生計60人を新たに合格者としたと発表した。合格漏れの被害者の特定作業は終了。既に判明している19年度分と合わせて計80人が追加合格になった。

この問題は、17年度に旧大検から制度変更した高認の「世界史A」のこれまでの計6回の試験で、コンピュータープログラムのミスにより、一部の選択問題が採点されなくなり合格漏れが続出したもの。同科目だけの追加合格者は、のべ2114人にのぼった。

(略)文科省では追加合格者に合格証書を発送。センター試験受験の希望者には出願期間延期などの措置を行う。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

本来なら大学に進学する権利を得られるはずだった方々に、ミスとはいえ、権利を与えなかったわけですから、大変な問題です。取り返しがつきません。

07年の第2回は計1万3313人が受験し、4819人が高卒程度の認定を受けた。新たに合格が判明した12人には28日付で合格証書を送るとともに、出願が締め切られた大学入試センター試験が受験できるよう対応する。それ以前の試験でも合格者が判明し次第、同様の方針をとる。ただし05年度分に限っては、答案が廃棄済みのため、得点状況を分析し一律加点などを検討するという。

(「高卒認定試験、05年度から採点ミス 12人追加合格」(Asahi.com)より)

問題発覚以降、受験者からは「不合格となったため、予備校に通わざるを得なくなった」といった相談も寄せられている。文科省は「まずは今春の大学受験に支障がないよう対応し、その後はこうした個別のケースへの対応も検討する」と話している。

(「高卒認定、追加合格者80人に 文科省発表」(Asahi.com)より)

……と、可能な限りの対応はされる模様。

ただ、

まずは今春の大学受験に支障がないよう対応し

……とありますが、今から出願を認めたとしても、やっぱり支障はあるでしょう。

何しろ、気持を切り替え来年に向けて再度準備を進めようと考えていたのに突然、1年早まったわけですから。
それも、センター試験実施まで半月程度しかない、このタイミング。
このミスによって大きな被害を受けた、被害者の方々が憤るのは無理のないことでしょう。

「履修逃れ」問題が発覚したとき、規程の学習内容をクリアさせていない高校のことを文科省は強く批判していました。
でもその文科省は、結果的には規程の学習内容をクリアした方々の進学を阻んでいたわけですから、同様の批判を免れ得ないと思います。

不具合があったのはマークシート方式の採点プログラム。大検から移行した際、世界史Aの一部の問題を自動的に採点から排除する誤った仕様となり、100点満点で、06、07年度は最大6点、05年度は最大12点の得点が反映されなくなった。

直接の原因は、採点プログラムを作成した日立製作所の作業ミス。文科省も「チェックプログラム」で採点が正しいか確認していたのに、なぜ間違いを見抜けなかったのか現在調査している。

(「高卒認定試験、05年度から採点ミス 12人追加合格」(Asahi.com)より)

この通り、原因はシステムを受注した日立製作所のミスだとのことです。

ただ、これは率直な疑問なのですが……。
大学入試センター試験と同じで、受験者は通常、正式な結果が送られてくる前に、「自己採点」をするんじゃないでしょうか?

高卒認定試験の場合、「100点中40点以上なら合格」と、基準も明確です。

「あれ、合格点は取れたはずなのに、どうして不合格になってるんだろう?」

……という疑問を、受験生の側は感じていたんではないでしょうか?

点数のズレに関する問い合わせがこの3年間に一件も無かったとは、どうもマイスターには思えないのです。

一件も無かったとしたらそれは、こういった疑問に対する明確な問い合わせ窓口が設けられていなかった場合でしょう。

■「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/index.htm

↑実際、文科省のwebサイトを見ても、高卒認定試験に関する問い合わせ窓口の案内は見つかりません。
試験の要項などは、各都道府県の教育委員会などでも配布しているようですが、そういった機関が試験に関する質問に答えてくれるとも思えません。

こうして考えると、日立製作所のプログラムだけではなく試験運営側、つまり文科省の体制にも少なからず問題があったのではないかと思えます。

文部科学省はこの年末年始に、東京・丸の内にある仮庁舎から虎ノ門の新庁舎へと引っ越す。今回のミスは、庁舎移転と時期を同じくした省全体の情報システムを変更する作業で見つかった。切り替えがなければ、さらに多くの受験生が不利益を被った可能性が高いという。

(「高卒認定試験、05年度から採点ミス 12人追加合格」(Asahi.com)より)

……と報道にありました。

中央省庁は人員も少なく、多忙だと聞いています。なるべくなら直接のお問い合わせを受けたくない、という考え方があるのかもしれません。

しかしどのような仕組みにも欠陥はあるもので、内部テストの段階では気づかないような細かな欠陥を指摘してくれるのは、実際にサービスや製品に触れるユーザーです。

日立製作所と自分達がつくったシステムを過信せず、きちんと試験に関する疑問や苦情を集約できる仕組みを整えていれば、ここまで被害は拡大しなかったのではないかと、マイスターは思います。

卒業試験や入学試験というのは、受験する側にとっては非常に大きなイベント。
絶対にミスが起きないようにしたいところです……が、しかし試験というのは問題作成から実施、採点まで人が行うものですから、ミスは完全にはなくせません。
ですからミスが起きても被害を最小限にできるよう、試験の実施者には、謙虚な姿勢が求められるように思います。

しかし実際には、試験を実施する側は「試す側」「採点する側」という意識からか、勘違いをし、しばしば傲慢な姿勢になります。その結果、問題の発見が遅くなることもあるように思われます。
今回の高卒認定試験の問題の背景にも、そんな意識がありはしなかったでしょうか。

教育に関わる我々にとって、今回の件から学ぶところは多そうです。

以上、マイスターでした。