ニュースクリップ[-11/9] 「岩手大で宮城県が就職セミナー 戸惑う岩手県、企業」ほか

マイスターです。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【隣の県が。】
■「岩手大で宮城県が就職セミナー 戸惑う岩手県、企業」(河北新報)

セントラル自動車の本社・工場移転などを控える宮城県が、18日に岩手大で初めて開く就職セミナー「みやぎものづくり企業セミナー」が、岩手県で「人材を奪いに来る」「県には事前通告がない」などと波紋を広げている。同大で学ぶ宮城県出身者のUターン就職を促す作戦に、技術者の首都圏流出を防ぐ試みと評価する声がある一方、産業界からは「人材育成の努力なしに囲い込みに走れば、隣県の反発を招くだけ」との指摘も出ている。
盛岡市で開かれるセミナーは岩手大工学部3年生らが対象。セントラル自動車やトヨタ自動車東北、東京エレクトロンATなど宮城関係の有力9社が会社説明を行う。村井嘉浩知事が「皆さんの力が必要」と呼び掛けるビデオも流す。
担当の宮城県産業人材・雇用対策課は「宮城でもやってない試み。岩手大も全面的に協力している」と説明。年度内に山形大でも開くほか、「一関高専でも行う」と鼻息が荒い。
寝耳に水だったのが岩手県で、労政能力開発課は「知らなかった」。科学・ものづくり振興課も「最近、大学からチラシを見せられて分かった」と戸惑う。
宮城県の準備は周到だった。岩手大卒の県教委職員の恩師を通じ、岩手大で宮城出身学生と意見交換を実施。「故郷で就職したいが、情報がない」との声を基に大学に開催を働き掛けた。
(略)実は岩手側も昨年、県南の市町村でつくる組織が仙台市で就職セミナーを開いた。だが、ホテルでの企業同士の交流会がメーンで、学生の参加はほとんどなかった。
(上記記事より)

宮城県が、岩手大学で就職セミナーを開催するということで、岩手県の関係者を中心に波紋を広げているようです。
「人材を奪いに来る」という岩手県関係者側の表現は、その通りではあるのですが、「少しでも優れた人材を獲得するために宮城県は努力をしている」、という言い方もできます。
岩手大学には、宮城県出身者も多く通っていると思われますが、少なくともそんな宮城県出身の学生にとっては、とてもメリットのある話でしょう。

地方大学は、地元に人材を供給するという役割も期待されていますから、岩手県の企業や行政がこうした動きを批判するのも、わからなくはありません。
ただ、県境を越えた採用活動はけしからんと言うだけでは、岩手県側の悩みは何も解決しないでしょう。
隣県が合同しての就職セミナーを企画するとか、岩手県企業も隣県で採用活動を展開するとか、今の時代にあった、建設的な案を進める方が良いような気はします。

【学食も工夫。】
■「関西16大学、学食にフードマイレージ 地産地消を意識」(Asahi.com)

京都、奈良、滋賀の3府県の16の大学生協は4日から、食品の輸送にどれだけ二酸化炭素(CO2)を出したかを示す「フードマイレージ」を学生食堂のメニューに表示する。普段の食生活を通して、学生の温暖化防止対策への関心を高め、輸入ものから国内産への食材の切り替えを進めるのが狙いだ。
食品の重さ(トン)に原産地からの距離(キロ)を掛け、数値が大きいほど「環境に負担をかけた食品」となる。数値を記入したカードを、値札と一緒に食堂のショーケースに表示する。例えば、メニューの一つ国内産ダイコンのおでん(100グラム)ならマイレージは0.05だが、フィリピンバナナ(180グラム)は0.69といった具合だ。
京都市の環境NPO「地域環境デザイン研究所エコトーン」の大学生5人が、各生協の共通メニュー約400品を1週間がかりで計算した。
(上記記事より)

トレーサビリティなど、食材の流通に関しては社会の中で色々な試みが進められています。
そんな中、京都、奈良、滋賀の大学生協は、学生が計算した「フードマイレージ」を表示。
学食も教育の場になるという好例です。
地域をあげての取り組みというのがいいですね。全国に拡がるかも知れません。

ちなみに学食を巡っては、↓こんな記事もありました。

■「江別市内の4大学2短大 「百円朝食」利用率、8割以上」(北海道新聞)

朝食の大切さを知ってもらうため、市内の四大学・二短大が百円朝食を提供する「秋の食生活改善運動」(十月二十八-三十一日)は用意した朝食の八割以上が売れ、前回の「春の運動」よりも学生に浸透した。大学側は「『朝食で体調が良くなった』『早起きで生活リズムが変わった』という学生が多く、食を含めた生活改善に効果が出た」と受け止めている。
幹事校の札幌学院大によると、用意した朝食は計二千九百食。うち85%の二千四百五十一食が売れ、ほぼ同じ二千九百三十食を用意して、「利用率」が71%だった五月の同運動を大きく上回った。
参加校別の利用率は札学院大が68%、酪農学園大・同短大が97%、北翔大・同短大が84%、北海道情報大が99%。前回100%だった酪農大以外、各校がそれぞれ利用率を上げた。
(上記記事より)

こちらも市内の大学が連携しての取り組み。
ちゃんと利用率を測り、先に繋げようとしている点がポイントです。

【宇都宮大学のフリーペーパーが人気。】
■「宇大生のフリーペーパーが好調 1000部から3500部に増え、今日第5号」(下野新聞)

宇都宮大の学生が発行している学生向けフリーペーパー(無料誌)「晴れときどき宇大」が好調だ。主に学内の話題を紹介、周辺の飲食店などから広告を募り、昨年末の創刊からこれまで四冊を発行。千部から徐々に部数を増やし、きょう四日発行の第五号は三千五百部を予定している。原動力はメンバーの「宇大を元気にしたい」との思いだ。
(上記記事より)

様々なものが出回るフリーペーパー。
企業のものも決して安泰とは言えない中、部数を増やしているのは見事だと思います。

【学生寮の部屋、学生の要望で個室化を中止。】
■「室工大明徳寮の大規模改修 個室化やめ、3人部屋へ」(北海道新聞)

室蘭工大は、来年度に行う学生寮「明徳寮」(定員・男子のみ五百人)の改修について、現在の全室四人部屋を個室にする計画を改め、三人部屋とする見直し案をまとめた。寮生アンケートで七割が相部屋を希望したためで、個室を好む若者の風潮に反する結果に、大学側も「予想外」の方針転換となった。
明徳寮は一九七三年完成の鉄筋コンクリート四階建て。二棟に四人部屋百二十五室があり、現在は一年生から院生まで二百九十一人が住む。大学は当初、寮に入らない学生に個室希望が多いことから、建て替えに合わせて個室化を計画。一室を壁で二室に分け、二百八十室にする予定だった。
これに寮生が反発したため、大学側が寮生にアンケートを実施。回答者二百三十二人のうち、二-四人の相部屋希望が71%に上り、個室希望は29%にとどまった。相部屋の理由として「集団生活が楽しい」「連帯感が強まる」などが挙がった。
(上記記事より)

学生寮を整備する大学が増えています。
留学生誘致や、学生の経済的な支援というだけでなく、「寮生活を、教育の一環として位置づけよう」という取り組みであるのがポイント。「集団生活」というのが肝のようです。

(過去の関連記事)
■「寮生活」を教育に活用する!

学生のことを考えて個室化を計画した大学の思惑に反し、実際には寮生達は相部屋を望んでいる、という結果が出た室蘭工大。
寮生活というのは、経験のある人はみな、集団生活から様々なものを得られたと言います。
始める前はちょっと抵抗があるけど、やってみたら満足する、という種類のものなのかもしれません。

【最高額更新。】
■「卒業生がシカゴ大に約294億円を寄付、史上最高額 」(CNN)

シカゴ大は6日、卒業生が同大のビジネススクールに約3億ドル(約294億円)の寄付を申し出たと発表した。AP通信によると、米大学に対する個人の寄付金としては史上最高額となった。
米国の大学は、国際金融危機、景気停滞で寄付金が先細りすることを懸念している。
3億ドルを寄付したのは、投資ファンド顧問を務めるデービッド・ブース氏(61)と家族。同大はこれを受け、ビジネススクールを「ブース・スクール・オブ・ビジネス」に改名する。ビジネススクールの学生は現在約3100人。卒業生は世界規模で約4万2000人となっている。
シカゴ大はまた、寄付金を海外進出の拡大などに使う方針。
(上記記事より)

アメリカでは、大学がみな寄付金戦略に熱心です。
社会全体の文化的なバックグラウンドや、大学に寄付しやすい税制の仕組みなどもあり、ビジネスでの成功者が大学に巨額の寄付をすることは珍しくないようです。

今回の「史上最高額」の寄付に対し、寄付者の名前をビジネススクールに冠することに決めた大学の決定の早さもまた、寄付を促す要因のひとつかと思われます。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。