「8、9月の間、5日間を好きに選んで休んでよい」というのが、マイスターがいた会社の夏休みでした。ただ、実際には仕事が忙しく、5日間をすべて消化するのはほとんど不可能でした。
会社の中でも特に、マイスターは某企業の「総合学習支援サイト」の企画・プロデュースを担当していましたからなおさらでした。以前にも書いたと思いますが、そういうサイトは、夏休みの間にアクセスを集めるのです。ユーザーの皆様の反応を見ながら、自由研究コンテンツや夏休みの工作コンテンツを随時制作・アップロードしていくというのが、マイスターの夏でした。
(小中学生の皆様が楽しく夏を謳歌する間、それを裏方からひっそり支えているような感じでしょうか)
しかしマイスター達がそんな夏を送る一方で、クライアント企業の皆様は休みまくるのですね。マイスターがいた会社のクライアントは、超がつくほどの大企業ばっかりでしたから、どこも福利厚生が非常に充実していたのです(労働組合の力も強かったみたいです)。そんなわけで夏休みは、2週間くらいクライアント企業の担当者と連絡がとれなくなるようなこともありました。
クライアント様
「……じゃあ、この夏はそんな感じでいきましょう。あ、ところで私、明日から8月22日まで夏休みで、その間は出社しませんから、夏休み明けまでにコンテンツの制作を進めておいてくださいね。公開予定日は24日です。いやぁ、ムダがなくていいスケジューリングだなぁ。」マイスター
「ソウデスネ(T_T)」
もちろん実際にはこんなダイレクトな言葉は使われませんが、意味合いとしてはおおよそこんな感じでした。当然、お盆もマイスター達は出勤です。「お盆休み」というシステムがありませんでした。
したがって「夏休み」とは、マイスターにとっては、メリットよりもデメリットの方が大きな仕組みだったのです。
学生の頃はあんなに待ち遠しかった夏休み…一体なぜこんなことになってしまったの…? って感じです。
さて時は流れ、大学職員に転職したマイスター、もうすぐ夏休みです。
大学職員の夏休みは、他業種に比べると長いです。
大学にもよりますが、8月中、10日くらいしか出勤していないという人も珍しくありません。学生時代の友人などに、夏休みのスケジュールを言うと、「ふざけんな」と怒られるのが普通です。年末年始の休みも長いので、なんだかあんまり出勤していないように思われてしまうんですね。
ただ、これには訳があります。
大抵の大学では土曜日も授業が行われていますから、大学職員は土曜日もけっこう出勤しているのです(マイスターの職場は、隔週で出勤です)。
従って、年間の休日日数を計算すると、長い夏休み&年末年始の分を差し引いても、完全週休二日制の一般企業より働いていることになるんです。
ですので、「どっちが楽か」という比較は難しいです。
どっちが良いのかは、人それぞれでしょうね。
なお、かつては大学職員の夏休みは今よりももっと長かったようです。
今はオープンキャンパスや公開講座など、数々の大学主催イベントがあります。高校生向け進学説明会などもあります。インターンシップなど、夏休みの間に行われる教育活動もあります。こうしたイベントがあるため、大学も、夏休みだからといってそうそう休んでいられないということですね。
どこの大学も今では市場の変化に対応しようと必死ですが、そうした取り組みが、大学職員の、夏休みのあり方を変えているというわけです。
そんなわけで、大学と「夏休み」ということで、色々と気づいたことや思いついたことをメモ代わりに書いてみます。
<社会人向けの大学や大学院では、夏期休暇中も事務室を開けているところが結構ある>
大学によって夏期休業期間は異なります。当たり前ですよね。
そこで、各大学の事務室の閉室期間を比較してみようと思ってネットで調べてみました。あんまり面白い結果ではなかったのですが、
「通信制課程を持っているところや、社会人大学院などは、夏休み中も事務室が開いていることが多い」
ってことは、なんとなくわかりました。
社会人学生は、夏休みを利用してスクーリングに出たり、まとまった時間を使って修士論文を書いたりするわけです。ですので、大学の方もそういったことに対応してきているんだなぁ……と感じることはできました。
<お盆休みのビジネスチャンスを捉えようとしている大学はとても少ない>
上述したように、通信制大学院を持っているところはともかく、大抵の大学は、お盆にはすべての窓口を閉じてしまっています。だからなのか、社会人向けの夏休みプログラムって、全体からしたらやっぱりまだまだ少ない気がします。
「普段は大学と距離を置いているけれど、短期に集中して学びたい」なんて社会人に対応する教育プログラムが、大学にはあまりないのですね。
英会話スクールや資格スクールなどは大抵、お盆を使った夏期集中プログラムを展開しています。なぜならその時期に大きなニーズがあり、企業として見逃せないビジネスチャンスだからです。それに比べると大学は、全員で一斉休暇を取って休むことにこだわっているわけですから、まだまだ本当の意味での、崖っぷちの危機感からは遠いのでしょう。
お盆期間を使ってキャリアアップを図りたい社会人。そのニーズに、大学教育は応えきれていないのです。ぜひとも、ここは強化したいところですよね。
ただし、現状のまま夏期の教育プログラムを拡張するのは大変です。
教員にとっては、授業がない夏期休暇中は、研究を進めるための貴重な時間です。この時間まで奪われてしまうと困る、という方は少なくないでしょう。
夏期の教育プログラムをしっかりやるのであれば、それらも教員の正式なコマ数として認め、その分、春学期や秋学期のコマ数を減らすなどしてあげるなど、工夫をして計画した方が良さそうです。
<大学職員向けのイベントや研修を行うなら、夏休み中が良い>
考えてみれば当たり前ですが、以外と見落とされがちである気がします。
いくつかの新人向け研修などは、夏休み期間中に行われていますが、それ以外はあんまり充実していません。普段仕事が忙しい時に限って面白そうなシンポジウムやセミナーが開催され、歯がゆい思いをしているマイスターとしては、大学職員向けの内容なら、夏休みにやればいいのにと思うわけです。
特に、中堅から管理職にかけての研修は手薄です。この方々は普段忙しいですから、夏休みに充電をはかるといいんじゃないかな、と思います。
大学アドミニストレーターを養成する大学院も増えてきていますよね。
そういった機関は、夏休みにまとまった教育プログラムを提供してみてはいかがでしょうか。企画や広報、国際交流などのテーマを決めて、一週間程度、合宿形式でみっちり学ぶのです。結構、参加を希望される方はいるような気がします。
あるいは夏休みの比較的ヒマな期間を利用して、提携大学の職員同士が「合同の企画立案合宿」をする、なんてのも面白いのでは。
数日間をかけて、共同の広報企画やイベント企画を練り上げるのです。例えば「京都市内の大学を全国にアピールするための広報戦略案」とか。
このように、夏休みは様々なイベントを行える可能性を秘めていそうですが、問題は、「休暇を利用して学びに行こう、と考える職員が果たしてどのくらいいるのか」という点です。
もちろん、探せば少なからずおられると思いますが、年齢が上がれば上がるほどその数は少なくなりそうな気がします。
考えてみれば、世の中、「海外の大学のサマープログラムを受講したいけれど、仕事が忙しくてそれどころじゃない!」なんて悶々としている社会人は、少なからずいるわけです。
職を辞さずにこんなことを実行に移せるのは、学校関係者くらいでしょう。他業種の方々に差を付けるせっかくのチャンスですから、ここはひとつ、夏に大パワーアップしたいところですよね。
以上、つらつらと、思いついたことを書きました。
多分、実際に夏休みに突入してから気づくことの方が、多いんじゃないかと思います。(「あ! この時期、こういうプログラムをやったらよかったじゃん!」とか)
夏休みというまとまった時間には、大きな可能性があります。
ついつい、受験生向けのイベントだけを考えてしまいがちですが、少子の時代だからこそ、新たな市場を開拓するために、夏休みの活用法を考えてみるのも手です。
受験生の相手ばかりではなく、自分自身のキャリアアップのために夏を利用するのも手です。
「社会人として休みをどう活用するか」という視点と、
「世の中の人々は、休みをどう活用したがっているか」という視点、
その両方が、これからの大学関係者には必要なのかも知れません。
いずれにせよ、せっかくの夏休み、有意義に活用したいものです。
以上、マイスターでした。