マイスターです。
高校生の時、センター試験では5教科7科目を受験しました。
工学系である建築学科を志望していたのですが、もともと数学よりも世界史や国語が得意だったので(こういう人、たまにいますよね)、勉強は楽しかったです。
大学に入ってみると分かるのですが、建築を学ぶためには世界史・日本史を知らないと話になりません。
またどんな学部学科に進学しようと、論理の通ったレポートを文章でまとめる能力は必要不可欠です。
最終的に入学したのは私大でしたが、歴史や国語を勉強していたことは大いに役立ちました。
ところで、どうして私立大学の入試は3教科で、国立大学は5教科なのか、誰か納得できる説明ができる方、いますでしょうか?
【今日の大学関連ニュース】
■「センター試験 国立大、科目絞る動き 個性を重視」(Asahi.com)
毎年1月に行われる大学入試センター試験で、科目数を減らす動きが一部の国立大で出てきている。学力低下を防ごうと、国立大学協会(東京)は幅広く5教科7科目を受験生に課すよう提言し、04年度以降このルールに従う大学が増加。だが、特定の才能を重視したい大学や志願者を増やそうとする大学が、違う路線を取り始めた。「全入時代」を前に競争が激化する中、動きが広がる可能性もある。
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08年度のセンター試験は今月19、20の両日に実施される。90年から始まったセンター試験は年々利用大学が増え、今回は国公私立合わせて過去最多の622大学(国立82、昨年9月末現在)が利用予定。私大は3科目前後が多いが、国立大は00年の国大協の提言に従い、国語、数学、外国語、理科、地理歴史・公民(国大協は1教科とみなす)の5教科から7科目を課すところが増えてきた。
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(略)国大協関係者は「志願者が集まりにくい地方の国立大を中心に、5教科7科目を続けるのは難しくなっている」。
(上記記事より)
国立大学は、センター試験において多くの科目の受験を要求する。
だから、バランス良く色々な科目に強い受験生が有利――。
……というのが、昔から受験の「常識」とされていました。
しかしここに来て、国立でも、私大のように3教科で受験することを認めるケースが出てきています。
上記の記事では、大学の回答として
「(絞る分)特定の科目に強い受験生が欲しい」
……というコメントが紹介されています。
ただ、上記の最後に紹介されているように、「受験生獲得のため」という理由も大きいのだと思います。
皆様もよくご存じの通り、少子化により、大学間の受験生獲得競争は激化しています。
そして、いち早くそういった状況の変化を感じ取った一部の大学は、財政を整え、教育体制を強化し、研究力を高め、他大学との連携を整備しながら、着々と競争に勝ちぬくための準備を進めています。
「社会から選ばれる大学」になるために、学内で激しい議論をし、ときには血を流すような改革を進めながら、新しい姿へと生まれ変わる準備を進めています。
一方、「今まで通りで大丈夫だろう」とか、「あそこの大学はまだ動いていないみたいだから、うちも焦る必要はないだろう」とか、のんびりと構えていた大学は、ここに来て、一気に厳しい環境に追い込まれて来ているように思います。
そんな風に早めにスタートダッシュをきった大学も、出遅れた大学も、あれやこれやと改革に追われています。その最後の砦が、受験科目ではないでしょうか。
国語の受験を必須にした京都大学工学部のように科目を増やしたところもありますが、多くは上記の報道のように、科目を減らして受験生の負担を軽減させようと考えているようです。そうすれば、私大受験を考えていた層をも、受験生として取り込めるというわけです。
うむ、国立大学も競争に追われているのですね……と結論を出してしまいたいところですが、それではちょっと安易です。
今回のこの報道には、実は結構、重要な問題が隠れています。
せっかくの機会なので、もうちょっと考えてみましょう。
上記の報道の2行目に、
学力低下を防ごうと、国立大学協会(東京)は幅広く5教科7科目を受験生に課すよう提言し
とありますよね。
「3教科」とか、「5教科7科目」とかいったこの数字には、一体どのような根拠があるのか、ご存じですか?
どうして1科目とか10科目とかではないのでしょう? 3科目ではなく、5科目にすると、「学力低下」が防げるのでしょうか?
そもそも、ここで言われている「学力」とは、一体どのようにして測られる、何のための学力でしょう?
(こうしてちょっと考え直してみただけでも、実は結構、私達が普段はあまり意識していない疑問点が浮かんでくると思いませんか)
順々に考えてみましょう。
冒頭で述べた質問に戻りますが、どうして大学入試は、「私立大学は3教科、国立大学は5教科」なのか、わかりますか?
いや、国立大学でも二次試験では私大と同じように科目を絞りますよね。どうして絞るのでしょう?
具体的な例を挙げてみます。
私立大学の理工学部を受験する場合、受験科目は「英語、数学、理科」の3教科ですよね。これは、どうしてでしょうか。
例えば、国語が入っていないのは何故でしょうか。
理工系の学部に入ったら、国語力は要らないのでしょうか?
そんなことはありませんよね。確かに、古文漢文は直接必要はないかも知れませんが、文章を正確に読み解いたり、それをもとに論旨をわかりやすくまとめたりといった能力は、どんな学部でも必須です。
評論文の読解力などは、基本中の基本スキルになるはずです。
では、どんな学部でも必須なはずの国語力を、どうして入試で問わないのでしょうか。逆に、どうして国語は問わないのに、英語は問うのでしょうか。
人文科学系、社会科学系を受験する場合でも同じです。
大学にもよりますが、文系では、数学の受験を求めないケースが少なくありません。しかし実際には、経済学や経営学、商学、心理学、社会学などを始め、下手な理工系以上に数学を駆使する学問は、山ほどあります。
そもそも大学には「研究者を養成する」という機能もあるわけで、研究者なら数学ができないなんて言い訳はできません。なのに、「文系だから」というだけで、大学入試では数学を問わない。これ、何故でしょう。
英語や数学、理科、社会、国語。こういった科目が大事だというのは、何となくわかります。
でも大学受験の科目の「絞られ方」にどういう根拠があるのかということを、自信を持って語れる人は、あんまり世の中にはいません。
じゃあ、大学受験って、いったい、何でしょう?
高校生は、いったいどういう理由で、こうした科目の点数を問われているのでしょうか?
……と、ちょっと長くなってしまったので、この話、続きます。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。