ソフト購入費ゼロで大学インフラを構築 嘉悦大学の試み

マイスターです。

大学にとって、ITインフラをどのように整備するか、というのはとても大きな課題です。
メールシステムや大学ポータルサイト、SNSの構築、大学ブログの開設……。
内外への情報告知・PRをおこなったり、あるいは学生を手厚くサポートしたりと、様々な局面でITが活用されるようになってきました。

そこで考えなければならないのが、コストです。
ITインフラを充実させようとすると、どうしてもまず設備投資としてお金がかかります。さらに、構築したシステムを運用するために、その後も何かと人手や運用コストがかかったりします。

いわゆるベンダーと呼ばれる企業は、どこも今、大学向けのソリューション開発・販売に力を入れています(ちなみに大学職員専用SNS「大学職員.network」には、各製品のコミュニティがそれぞれ立っていたりします)。
どの製品にも良い点はあるのですが、価格が高いと、やはり導入には二の足を踏んでしまいます。お金をどかんとかけて整備しても、その後どのくらい活用できるかわかりませんし。

そこで注目されているのが、無料のサービス。
少し前には、日本大学がGoogleのオンラインアプリケーションを導入し、話題になりました。

(過去の関連記事)
・日本大学が、Googleのオンラインアプリケーションサービスを導入(2007年04月04日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50303225.html

無料の、それもオンラインのサービスについては、「データの保証をしてくれるのか」「何かあった場合のサービスサポートがないのでは」といった心配をされるところもあるでしょう。
有料のソリューションはやはり細かなところが充実していたりしますし、安心感もあります。その辺り、大学によって考え方は違うと思います。

ただ、無料サービスを活用する事例は、少しずつ増えています。
無料のサービスと、ベンダーが開発する有料のサービスとが、それぞれの強みやメリットを競い合うような状況が、これから続くのでしょう。

というわけで、今日はこんな事例をご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「ソフト購入費ゼロ、嘉悦大学がOSSでITインフラ構築」(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/200710/15/oss.html
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オープンソース・ソリューション・テクノロジは10月15日、学校法人嘉悦学園嘉悦大学(東京・小平市)の情報インフラ基盤を、オープンソース・ソフトウェア(OSS)でリプレースしたと発表した。ソフトウェアの購入費はかかっていない。同社は「一般的な大学の情報インフラをOSSのみで構築できることを実証した」としている。

(上記記事より)

「オープンソース」というのは、情報技術の世界でよくつかわれる言葉です。
あらゆるソフトは、プログラムによってつくられています。そのプログラムの設計図(ソースコード)をインターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布を行えるようにしたソフトを、「オープンソース・ソフトウェア」なんて呼びます。
簡単に言ってしまえば、「自由に使ったり、改良したりしても良い、無料のソフト」です。

ただ、販売されているわけではないので、どこかのメーカーが内容を保証してくれるなんてことは当然ありません。そのあたりのリスクマネジメントを工夫しつつ活用すれば、何かとメリットも大きいわけです。

上記の記事は、嘉悦大学が、あらゆるITインフラをこのオープンソース・ソフトウェアで構築した、ということを報じています。
ソフトウェア購入費ゼロです。

どのようなソフトが使われているかは、以下の記事で紹介されています。
情報システムに関わる方なら耳なじみがあるであろう名前が並んでいます。

■「嘉悦大学がWindowsファイル・サーバーをCentOSとSambaでリプレース,『ソフトのライセンス料はゼロ円』」(ITPro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071015/284582/?ST=oss

大学のプレスリリースは↓こちら。

■「Windowsから、無償の『オープンソース+Google』による情報基盤へ移行
http://www.kaetsu.ac.jp/news/07-11-05.html

嘉悦大学とオープンソース・ソリューション・テクノロジ株式会社(東京都品川区、代表取締役:小田切耕司)は、11月5日よりオープンソース・ソフトウェアのみで構築した情報基盤 とGoogleが無償提供する「Google Apps Education Edition」を独自開発のツールで自動連携させた大学情報システムの運用を開始したことを発表いたします。これにより特定の製品や企業に依存したベンダー・ロックインからの脱却を達成しました。

(上記記事より)

日本大学のケースと同様か、それ以上に、Googleのサービスも徹底活用されているようです。

プレスリリースに名前が挙がっている「オープンソース・ソリューション・テクノロジ株式会社」は、サポート付きオープンソース・ソフトウェア製品をウリにしている企業のようです。オープンソースの最大の心配点である「保証・安心」については、こうした会社を入れることで解決しようということでしょう(ですから、当たり前ですが、システム構築・運営のコストが完全にゼロというわけではありません)。
様々な無料サービスのメリットをうまく組み合わせ、極力コストを抑えつつ、リスクマネジメントも行える仕組みを目指したわけです。
なるほど、こういう発想もありますね。

大学のプレスリリースを読むと、なかなか野心的な試みだなと思います。

嘉悦大学では今回の構築事例が、情報システムの効率化とコスト削減が求められる他の中小規模大学にとっても適用可能なものであると考え、今後積極的に関連技術情報を公開していく予定です。

なんてことまで書かれています。

嘉悦大学の学生数は約1,400人。比較的、小規模な大学です。これが数万人の学生・教職員を抱えるような大学だと、また状況は違ってくるでしょう。
しかし逆に、インフラにコストをかけられない小規模の大学にとっては、これはちょっと気になるニュースだと思います。

こうして競争が起きると、大手のベンダーも触発され、サービスをさらに洗練させて来るでしょう。色々な知恵が競い合いながら、大学のITサービス全体が、より良くなっていくわけですね。
5年後、どうなっているのか、楽しみです。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 嘉悦大学の担当者です。
    記事に取り上げていただき、まことにありがとうございました。
    > 日本大学のケースと同様か、それ以上に、Googleのサービスも徹底活用されているようです。
    これはちょっと違っていて、我々はもっともお金をかけずに、単純にやりたいことを実現したという感じでございまして、開発ということですと日本大学様のほうがいろいろと作り込まれておられます。
    あと本学では、同窓会向けにOpenPNEで開発されたSNSサイトも運営しております。