マイスターです。
ここ最近、公立大学に関する報道をよく目にします。
↓最近では、県立高知女子大学が共学化されるという報道を目にしました。
■「高知女子大が共学へ 23年4月に移行」(MSN産経ニュース)
高知県立高知女子大の山根洋右学長は4日、同女子大永国寺キャンパス(高知市)で記者会見し、平成23年4月から全学部で男女共学化を実施すると発表した。学校名については「名実ともに一致させるべき」と述べ、変更する方向で検討していく考えも明らかにした。
共学化に踏み切る理由について、山根学長は「大学を取り巻く社会状況が変化し、県内大学への進学率が低く、公立大学として地元の男子学生にも門戸を開く必要があると考えた」と説明。
(略)同女子大の共学化を巡っては、有識者らでつくる県立大改革検討委が16年10月、「共学化の方向が妥当」と提言。尾崎知事は昨年9月の定例県議会で来年4月の共学化実施に向けた意欲を示していた。
(上記記事より)
建学時からの、社会状況の変化ももちろんあるでしょう。
ただ、この不況で学費の捻出に苦しむ家庭も少なくない中、地元からの、共学化の要望も強かったのではないかと想像します。
公立大学は、地方自治体が、自分たちの予算からかなりの費用を支出して設立・運営する大学。ですから常に「地元にとっての」存在意義が問われます。
現在は政府から地方自治体、そして各家庭の家計まで、どこもかしこも財政危機。
だからこそ、逆に、限られた税金を何のためにどう使うか、真剣に考えなければならないのでしょう。
さて、今日はこんな話題をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「大阪府立大買収、複数の私大が意欲…橋下知事明かす」(読売オンライン)
大阪府の橋下徹知事は10日、抜本的な見直しを指示していた府立大(堺市)を視察した。橋下知事は報道陣に、「(府立大の経営に)私立大から声が上がっている」と、複数の私立大が府立大の買収に意欲を示していることを明らかにしたうえで、「それだけすばらしい大学ということ。広報活動に力を入れていきたい」と述べた。
(上記記事より)
■「橋下知事が大阪府立大を視察 メタンガス車にも試乗」(MSN産経ニュース)
橋下知事は視察後、私立大から運営引き受けの打診があることを明らかにした上で「なぜ府が運営主体となっているのか議論しないといけない」と述べ、私立大への移管も視野に検討する意向も示した。
(上記記事より)
大阪府立大学をめぐっては、以前から橋下知事と大学との間で、緊張感を伴う駆け引きが行われている様子。以前の記事でも少しだけご紹介させていただきました。
(過去の関連記事)
■大阪府立大学 入学式での橋下府知事の「あいさつ」が話題に?
今回、大阪府立大学を視察中の橋下知事から、上記の驚き発言が飛び出したようです。
似た事例として最近では、公立である「京都市立看護短期大学」が、私立の佛教大学に統合されるという報道がありました。
(過去の関連記事)
■京都市立看護短期大学、佛教大学に統合 公立から私立へ?
高知工科大学のように、私大から公立大に移管して受験生を集め生き残りをはかるケースが出る中、この京都市立看護短大のケースは大学業界にちょっとした衝撃を与えました。
四年制の看護系大学・学部が増える中、京都市立看護短大も4年制化を決断。ただ市立のままでは、京都市が大きくなる財政負担を支えきれなくなるため、外部の学校法人に統合してもらうことになった、というのがことの顛末。
ただ、学費の増額を心配する学生達や、経緯が不明確だと考える市議および同短大教職員の方々、そして「なぜ佛教大学なのか」と考える私大関係者の間から、批判や疑問の声も上がっているようです。
■「市立看護短大廃止に批判相次ぐ 経緯不明と市会委員会」(京都新聞)
■「公私格差が課題 京都市立看護短大、佛教大に『統合』 京都」(Asahi.com)
実際、誰もが納得する公平性という点では、不明瞭な部分が残る気もします。
異論・反論や疑問が出てくるのも無理はありません。
このように、自治体の財政負担が大きいとはいえ、公立大学を私立大学として移管させるというのは、大変なこと。
1学年の定員が数十名程度の、小規模な短期大学ですら、このように異論噴出なのに、大学院を含め学生数8,000人程度、教職員も1,000人近くいるという大阪府立大学では、いったいどんなことになるやら。想像もつきません。
というか本当に、府立大まるごと別の私大が引き受けるなんて可能なのでしょうか。
大阪府立大学は、理工系や医療系の学部がとても充実している大学。研究費も含め、予算規模は相当なものだと思うのですけれど。
「複数の私立大が府立大の買収に意欲を示している」と記事にはあります。そんなことができる法人って、そうとう限られてくるような気が……。
とりえず現状では、そうした可能性をにおわせつつも、「大学改革を進め、広報などでもがんばれ」というのが知事の考えのようですが……さて、どうなのでしょうか。
以上、マイスターでした。
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(追伸)
ちなみに大阪府は、府立大に対する支出を見直す一方、高校に関しては公立校の定員を増加させる方向で今のところ話がなされているようです。
■「希望者は全部受け入れ 知事、公立高定員増に意欲」(大阪日日新聞)
大阪府内の公立高校の定員を増員する方針を打ち出している橋下徹知事は、5日の定例記者会見で「検討が進まないなら、公立で(希望者は)全部受け入れるようにしたい」と述べ、新たな枠組み作りに強い意欲を示した。
府内高校の受け入れ比率は、1998年からは公立7に対し私立3となっている。ただ、2008年度は公立高校定時制課程の2次募集で志願者が急増。不合格者も増え、急きょ異例の補欠募集を行った。景気悪化や府の私学助成削減に伴う私学の授業料アップの影響とみられている。
(上記記事より)
どこに税金を投入するかという、大阪府としての戦略が出てくるところでしょうか。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。