DARPAロボットカーレース

マイスターです。

理工系学生のためのものづくり大会と言えば、日本では「鳥人間コンテスト」と「ロボコン」がよく知られています。いずれも、テレビ放映される人気イベントですね。

このほか、アメリカでは、ちょっと変わった大会が行われていますので、ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「DARPAロボットカーレース、優勝はカーネギー・メロン大学の『Boss』」(ロイター通信 ITMedia News掲載)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/05/news067.html
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米軍基地跡をコースに使った今年のロボットカーレースでは、11台中6台が完走。優勝したのはカーネギー・メロン大学チームのシボレー・タホ「Boss」だった。

パワーアップされ、意思を持ったシボレー・タホが11月4日、人間の助けなしでカリフォルニア州のゴーストタウンを6時間、60キロ走行する旅を終え、ロボットカーレースで勝利を収めた。

米カーネギー・メロン大学が作った「Boss」というニックネームのこの車は、米国防総省主催のレースで200万ドルの賞金を獲得した。このレースは今年3度目で、ロボットが運転する軍用補給車を実現する狙いがある。

このレースにエントリーした車は、フラッシュライトや警報、回転するレーザー照準機、カメラを搭載したステーションワゴンや大きな緑の軍用トラックなどで、米国中の競技場で耐久レースに参加している「モンスター」トラックのミニ版のように見える。廃墟になった軍基地をコースに使った3日の決勝戦では、完走したのは11台中6台だけだった。

勝者はスピードと安全性を基に、一晩かけて決めた。2005年のレースで優勝したスタンフォード大学は2位、バージニア工科大学は3位だった。

「昨日は歴史的な日だった」と国防総省の研究局長トニー・テザー氏は4日、賞金を渡した後に語った。Bossと製作者たちは勝利のスピンを始めていた。

この大会のため、重大な技術的挑戦に取り組もうと米国の大学と企業の優秀な人材が集まった。科学愛好家はロボットカーの進歩を熱心に追ってきたが、最大のメリットは将来もたらされる。

米軍は、兵士を危険にさらさないためにロボットで補給車を操縦することを目指し、2015年までに補給車の3分の1をロボット制御にするという目標を掲げている。自動車メーカーは安全性と快適性を向上させるために、人間の運転を支援し、最終的には運転作業をすべて引き受けるインテリジェントカーを考えている。

このロボットカーレースの目標は難易度が高い。参加車両はカリフォルニア州の交通ルールを守り、6時間以内に傷ひとつなくゴールすることを目指す。ちょっとした衝突事故――3日に起きた最悪の事故だった――が起き、ロサンゼルスの北東80マイルの基地跡に集まった数百人のファンが一斉に息をのんだ。

(略)「ハンドルが動いているのに、運転席には誰もいない。仰天する」とスタントドライバーのタミー・ベアード氏は語る。同氏は参加車両の運転スキルをテストするために併走していた。

衛星ナビゲーション、カメラ、レーダー、レーザーを使って、人工知能システムは車両の現在地と目的地を判断し、運転システムに経路を示し、ハンドル操作や加速を指示する。

参加大学は、自分たちの技術が交通事故を減らし、運転方法を改善する役に立つことを期待している。

(上記記事より)

というわけで、DARPAロボットカーレースです。

自動車に人工知能や各種のセンサー類を搭載し、無人運転の状態でレースを行うという、なんとも豪快なコンテストです。
自動車の制御はもちろん、人工衛星と連携しての位置判断など、かなり高度な技術が要求される競技で、MITやスタンフォード大学、カーネギー・メロン大学など、アメリカを代表する工科系大学が参加しています。
工科系の名門で、辛い銃乱射事件が起きたばかりのバージニア工科大学も、好成績を残しています。

この大会、純粋に教育・研究のことだけ考えれば、非常にいい内容だと思います。

が、何しろ実際の自動車に、各種のハイテク機器を積み込んで走らせるわけですから、各チームの自動車開発には非常にお金がかかりそう。
大会が実現できる背景には、各大学の研究資金の多さもさることながら、この大会の主催者も大きく関係しているように思います。

主催者の「DARPA」は「米国国防総省高等研究計画局」のこと。
そう、本文中にもありますが、この大会の研究成果は、軍事的に利用されることを期待されているのです。

もちろん「参加大学は、自分たちの技術が交通事故を減らし、運転方法を改善する役に立つことを期待している」とあるように、実際には軍事利用以外の分野にも様々な進歩を促すでしょう。

ただ、この大会の競技ルールからして、既に軍事利用を想定したものです。
(ちなみに今年の競技は「市街地でのレース」という想定で行われましたが、昨年は砂漠でした)

DARPAは大会で好成績を残したチームのために、1位が200万ドル、2位は100万ドル、3位が50万ドルと、高額の賞金を用意しています。
公的な機関がこれだけの賞金を用意してでも大会を続けるのは、この大会によって、将来的に軍事行動のコストやリスクを抑えることにつながる研究成果が各大学に蓄積される、と考えているからに他なりません。
通常なら委託研究などにするところを、敢えて大会形式にしているのでしょうか。

色々な意味で、日本では実現が難しそうな競技だと思いますが、どうなのでしょうね。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • こんにちは。
    欧米では宗教的な理由もあり「人が人をつくる」という発想が受け入れられにくいそうなので、ヒューマノイドロボットよりも無人自動車などの開発の方が盛んなようです。ヒューマノイドも日本のように福祉や介護用でなく、軍事用ということを全面に出すところが文化の違いですね。