マイスターです。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【直接の移管は困難?】
■「立命館への直接移管困難 市岐阜商高問題で県教委が判断」(中日新聞)
学校法人立命館(京都市)が中高一貫校設立のため岐阜市立岐阜商高の土地や建物の移管を提案している問題で、先例である滋賀県守山市と同じ移管の手続きは県内では認められない状況であることが9日、分かった。岐阜市の安藤征治教育長が市議会有志の勉強会で明らかにした。
立命館は2006年に滋賀県守山市から市立守山女子高を直接引き継ぎ、設置者を変更する形で「立命館守山高」を開校した。岐阜市からも市岐阜商を引き継ぎ、09年度の立命館岐阜高の開校を目指している。
安藤教育長は勉強会で「岐阜県内では設置者の変更は難しい。(市岐阜商を)廃止して立命館が高校を新設することになる」と発言。会合後も「守山市と同じ形は取れないと聞いている」と述べた。
県教育委員会によると、設置者の変更には教育内容の同一性を保つことが必要になる。県教委は文部科学省にも相談した上で、商業科から普通科への変更に適用するのはふさわしくないと判断した。
立命館側は「(設置者の変更だけでなく)廃止・設置もあり得ると考えている。県や市と協議したい」とこれまでの提案に変更はないとした。
(上記記事より)
以前の記事でご紹介した動きの続報。
将来的に廃止や統合が予想される岐阜県の市立高校を、立命館の附属校にしませんか、という提案を立命館側が市に対して行っていたのでした。
■ニュースで見かけた関西私大の動き
立命館守山高校のときとは違って、直接の運営移管は難しいとのこと。
「廃止→新設」ですと、在校生達を一度、全員卒業させてからということになるのでしょうか。
一方で、
岐阜市の安藤征治教育長は9日、超党派の市議らの会に出席し、「市民の中に、立命館に対し大きな期待があるのは事実だ。移管について市議会で取り上げてもらい、議論していく必要がある」と述べた。
(「市岐阜商移管問題:教育長「市議会も議論を」 超党派の会で発言 /岐阜」(毎日jp)記事より)
なんて発言も。
【柔軟な労働システム。】
■「変形労働時間制:事務職員に導入…青森県立保健大」(毎日jp)
青森県立保健大(青森市)は7日、業務の繁閑によって事務職員の勤務時間を変える「変形労働時間制」を今年度から導入したと発表した。実労働時間は従来と同水準ながら、1日の勤務時間を月ごとに5~9時間の範囲で変動させ、時間外勤務を削減する。こうした制度は公立大学では珍しいという。
4月の公立大学法人化に伴って勤務体系を見直した。▽卒業式や入学式などがある3~7月は勤務時間が9時間▽夏休みの8月は5時間▽9月は6時間 ▽10~2月は8時間にする。同校はこれまで事務職員二十数人について、年間約5000時間の時間外勤務に対して約1900万円の手当を支給していたが、全員の実際の総労働時間は現在のままで、時間外手当を半分近くまで減らしたい考えだ。
全国75の公立大を会員とする公立大学協会(東京都)の中田晃事務局長は「全職員対象というのは聞いたことがない。かなり先駆的な事例だ」と話している。
(上記記事より)
大学の中には、繁忙期とそうでないときがはっきりしている部署がいくつかあります。
例えば教務系の場合、学期の始めと終わりが繁忙期。この頃は深夜まで残業をすることもしばしばです。その一方、まったく残業をする必要がない時期も。
年間のスケジュールに合わせて繁忙期がわかっているのであれば、確かに、それにあわせて労働時間を調整した方が効率的ではあります。
ただ、人によっては100万円近く、年収が下がる結果になるかもしれません。
個人的には、実情に合わせて無駄を無くす画期的な試みだと思いますが、当事者の皆様のご意見もちょっと聞いてみたいところです。
【大学のサーバーにフィッシングサイト。】
■「札教大サーバーに偽サイト 不正侵入、個人情報盗む目的」(北海道新聞)
道教大は一日、札幌校の研究室のパソコンのウェブサーバーに、個人情報を盗み取る目的で米国のインターネット決済サービス会社をかたった偽サイト(フィッシングサイト)が開設されていたと発表した。決済会社によると、現段階で被害は確認されていない。
ウェブサーバーはホームページを作成するのに必要な機能。同大によると、決済会社は「ペイパル」で、何者かがペイパルの利用者に偽メールを送り、クリックすると偽サイトにつながるようにし、決済時のIDやパスワードを入力させる手口とみられる。
IDなどを入手してその人になりすまし、各種の決済をするのが目的らしい。
偽サイトの設置者が判明しないよう、同大のサーバーに不正アクセスし偽サイトを開設したとみられ、偽メール、偽サイトとも全文英語だった。
同大は、四月二十六日にペイパルの指摘で偽サイトを確認した。このサーバーにアクセスできない措置を取り、他のサーバーについても調査を開始した。道警に被害届を提出するか検討している。
(上記記事より)
北海道教育大学札幌校のwebサーバーに、米国のフィッシングサイトが開設されていたそうです。
海外から不正アクセスをし、開設を行ったものと見られています。
セキュリティの強化が必要ですね。
■「不正アクセスによる偽サイトの開設について」(北海道教育大学)
もしかすると、「日本の大学はセキュリティが甘い」なんて話が、こういった偽サイトを運営する方々の間で広まったりしているかも知れません。
他の大学の皆様も一度、自校のサーバーを精査してみることをオススメします。
【とばっちり?】
■「神戸大、遺伝子実験を停止」(読売オンライン)
神戸大医学研究科の久野(くの)高義教授(57)の研究室が、遺伝子を組み換えた大腸菌や酵母を違法に廃棄していた問題で、同大学は11日、学内のすべての研究室に、遺伝子組み換え実験の停止を命じた。広範囲の科学実験を差し止めるのは極めて異例で、大学は「疑惑がある以上、万一を考えて全学的な調査が必要と判断した」としている。
実験の停止は、野上智行学長名で、医学、理学、農学、工学、自然科学などの研究科と各種センター、付属病院など計12部門に電子メールで通知された。
マウスなど遺伝子組み換え動物の飼育継続は認めたうえで、「全学における全(すべ)ての遺伝子組み換え実験を本日から直ちに停止することを命じます」とし、解除の時期は示していない。
同時に、学生まで含めた研究関係者全員に、これまでの処理の実態を問う調査票を配った。〈1〉遺伝子組み換え実験の経験の有無〈2〉実験内容〈3〉廃棄する時の不活化処理の有無〈4〉封じ込めレベルに従った実験室で行ったか――の4項目で、署名と押印も求め、16日午前10時までに提出しないと、実験停止を解除しない場合もあると警告している。
(略)突然の命令に、生物学系の教授の一人は「とばっちりに怒っている教員も多い。実験停止が長引くと、国の研究費の一部を返したり、新たにもらえなくなったりするかも」と苦い顔。
理学部の教官は「当面は別の研究をするが、1か月以上になれば大問題で、研究成果を出せなくなる」と心配する。農学部の教官は「学生の教育にも影響が出るだろう」と話した。
(上記記事より)
神戸大学で起きた、遺伝子組み換え大腸菌の違法廃棄問題。
神戸大では、全学的な調査と、その間の実験停止を決定しました。
事件を受け、調査を行うことはとても大事です。
社会に向けて、大学の毅然とした態度を示すことにも繋がるでしょう。
ただ、記事でもコメントが紹介されているように、適切に実験を行っていた教員にとっては、大変な痛手。
いつ実験を再開できるのかわからない状態では、教育・研究の面で不安もあるでしょう。
こういったことが起きたときのために、何か起きた場合の実験停止・調査・復旧の流れを明確にしておくと良いかもしれませんね。
【キャンパスの中に麻薬。】
■「大学内で麻薬密売、学生など約100人逮捕」(CNN.jp)
米当局は6日、カリフォルニア州のサンディエゴ州立大学で潜入捜査を行い、コカインやエクスタシー、マリフアナといった違法薬物を密売目的で所持していた疑いで、学生を75人を含む100人近くを逮捕したと発表した。
逮捕された学生の1人は刑事裁判が専攻で、複数の銃やコカインを所有していた。別の学生は国土安全保障を研究していたうえ、学内警察に関与しており、修士課程修了まであと1カ月だった。
同大関係者によると、学内警察は昨年5月、薬物を過剰摂取した学生が倒れた事件を受けて捜査に着手し、麻薬取締局(DEA)に支援を要請。DEAは潜入捜査の結果、薬物の購入や押収に130回以上成功した。今年2月には学生会館で、2件目の薬物過剰摂取事件が発生した。
容疑者の学生らは刑事罪で起訴される可能性があるほか、停学や学生寮からの強制退去といった処分を受ける見通し。
(略)当局が学生クラブ7つを潜入捜査したところ、一部ではメンバーの大半が薬物密売に気付いていたという。
(上記記事より)
近年、キャンパス内での銃乱射事件などが立て続けに起こった米国。
ただ、こういった麻薬事件の方が、留学生を送り出す側にとってはリアルな心配事かもしれません。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
アメリカの大学生の六割は麻薬を経験していると私が専攻していた犯罪学の教授は話していました。
日本の大学生における飲酒に当たるのかもしれませんが、みんなでわたっても赤い信号はやはり赤に他ならないのではないかと。
学生をみていても、付属校同士の友人関係でよくカンニングをしているという現場も知っています。
管理の厳しい家庭・学校に抑圧された受験環境から一気に解放されることで、見つからなければいいという、法治主義のゆきすぎた国家にみられる心理現象がおこるのであるとすれば、昔はよく言われた大学の教育の柱である「知育」「徳育」「体育」を見直してもいいかもしれませんね。最近では体育の必修化の動きがありますが、さて徳育はどのような手段があるか議論の余地が大きそうです。