「『歴史は暗記』イメチェン、大阪大が高校教師向け研修会」

マイスターです。

中等教育と高等教育をどう接続するかという問題は、大学&短大への進学率が上昇していく今後、非常に重要なテーマになってきます。高校の必修逃れも、AO入試に対する議論も、つきつめていけばここの問題ですよね。

「中等教育と高等教育の接続」というと、真っ先に思い浮かぶのはおそらく、「高大連携」という言葉でしょう。

・大学の教員が高校で出張授業を行う
・大学の授業を高校生に開放する

……などですね。主として入試課が担当しておられる取り組みです。

現在のところ日本における高校と大学の連携というと「高校生に大学を知ってもらい、入学をスムーズにするための努力」が中心であるように思います。もちろんこれは大事なことです。
ただ、実際には、中等教育と高等教育とが連携できる場面は、他にもけっこう色々あるとマイスターは思うのです。

これまでは「高校生をいかに大学生にするか」ばかりが重要視されてきたように思います。でも今、議論されなければならないのは、「高校レベルの学びと大学レベルの学びをどのようにつなぐか」ということなのではないかな、といつも考えています。
そのように考えると入試関係部署だけでなく、教学部門や個々の教員も、高校と色々連携する余地があるような気がしてきませんか?

そんなわけで今日は、↓こんな報道をご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「『歴史は暗記』イメチェン、大阪大が高校教師向け研修会」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20061123ur01.htm
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高校世界史の必修逃れなど歴史離れが深刻化する中、大阪大学が3年前に始めた高校の歴史教員向け研修会が、教師ら有志による勉強会に発展した。

(略)……研修会は、2003年から毎年夏休みに、2泊3日の日程で開催されてきた。歴史の暗記科目化に危機感を募らせた桃木教授と大学の同僚たちが「まず、高校の先生たちから変わってもらおう」と企画した。これまでの4回で、43都道府県から計約270人が参加。口コミで人気が広がり、複数回の受講は断らざるをえないほどだ。

近年は歴史学自体が多様化している上に、グローバル化とIT化によって、手軽に世界史の現場に出かけたり、インターネットで最新の情報を手に入れることもできる。「こんなに歴史が楽しい時代はない。なのに、高校生はそう思っていない。このギャップを埋めるには、ワクワクする話を面白く伝えるしかない」と強調する。

こうした発想に基づいた指導によって、高校生たちが歴史の授業に積極的に取り組むようになったと語る教師も少なくないという。昨年11月からは、これまでの参加者の中から有志が集まり、月例の勉強会も開かれるようになった。毎回、20~30人が集い、効果的な教え方についても議論している。

この会で高校側から世界史未履修の情報が寄せられたのをきっかけに、阪大は全国でも例のない、不完全履修者向けの高校世界史の講義を来年から実施することにもなった。

「履修逃れ問題ではっきりしたように、歴史教育の地位の低下は日本の教育システム全体の問題で、改善は容易じゃない。でも、我々は微力ながら各地域で中核になる先生を支援していきたい」と、桃木教授は意気込んでいる。
(上記記事より)

大学が組織として公式に行っている取り組みではないようですから、「高大連携」とは言い難いです。ただ、中等教育と高等教育をどうつなぐか、という問題意識に基づく取り組みには違いありません。

高校生に大学の学びを直接伝えるのではなく、高校の教員に対して、学びのおもしろさを伝える。
それによって高校の教育に刺激を与え、高校教育のあり方を少しずつでも変えていこうという主旨の活動です。

↓こちらの記事と併せて見ていただくと、この取り組みの主旨がよりわかりやすくなるかと思います。

・「阪大が未履修者に“高校世界史”、一般教養で来春開講」
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50264351.html

高校の学びが(暗記に)偏っていると思えば、高校の教員に世界史の楽しさを伝える。
入学してきた大学生の知識や考え方が不十分だと思ったら、それが高校で学ぶ範囲であったとしても、大学で世界史を教える。

こうした取り組みは、非常に地道な作業ではありますが、大切です。
中等教育と高等教育との関わりを考える上でとても参考になる事例だなぁと、マイスターなどは思います。

ところで、世間的にあまり知られていないだけで、全国で他にもこうした取り組みを行っている方々って、実は結構おられるのではないでしょうか?

ただそれらの多くが個人的な勉強会のレベルにとどまっているため、「日本全体の教育システムを補完するために、組織だててこうした活動を行っていくべきだ」という議論がなかなか拡がっていかないのかな、と思います。

そこで、大学として組織的に、

「意識の高い教員が自主的に行っている勉強会」

を、

「中等教育と高等教育を接続するための、組織だった企ての一つ」

として位置づけ直してみてはいかがでしょうか。
勉強会ひとつひとつは、少数の教員達による小さな活動でいいのですが、そういった勉強会活動を大学が公式に支援するのです。

活動場所提供、情報提供、活動資金援助などの面での支援もあります。大学の公式webサイト上で活動をPRしてあげることもできます。地元の教員達に声をかけ、大学が積極的にネットワーク作りの手助けをしてあげることもできます。

それでもやっぱり地道な仕事であることには違いありませんが、高校と大学が、入試のとき以外にコミュニケーションの機会を持っておくことは重要です。
今は、まだまだコミュニケーション不足です。高校の先生方の悩みを大学はあまりよく知らないし、高校も大学のことをよく知りません。普段からこうした会合で意見交換をしていれば、問題の解決に向けて、色々とお互いにできることもあるというものです。

そんなわけで冒頭の報道は、参考になりそうな気がします。

以上、マイスターでした。

5 件のコメント

  • 高大連携を研究しようとしている大学院生です。いつも面白く読んでます。
    定義としては大学が組織として関わっていなくても、高大連携という立場もありますよ。(というか組織的にやれている方が少ない感じがします。まだまだ大学教員の面子があるみたいで。)
    http://benesse.jp/berd/center/open/kou/view21/2005/04/01toku_02.html
    勝野頼彦著『高大連携とは何か』(学事出版)も参考に。

  • 中山さま:
    マイスターです。コメントありがとうございます。
    なるほど、もとはCOEの研修会だったのですね。不勉強でした。
    ご指摘、ありがとうございます。
    今後ともお気づきの点がありましたら、教えていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

  • きわ ださま:
    マイスターです。コメントありがとうございます。
    高大連携には、確かに色々なとらえ方があるかも知れませんね。大学職員が考える場合、どうしても組織だった活動、それも入試関係のものに限定されてしまいがちなのかな、なんて思います。
    教えてくださった本、読んでみます。
    ありがとうございます。

  • ごめんなさい。忘れてました。
    月例会の方も「魅力ある大学院教育イニシアチブ」の一環であり、公式行事です。修士課程以上の学生は正規の授業として登録できます。