ニュースクリップ[-11/26] 「(中国)就職率の低い大学と学科、募集数削減へ」ほか

今日は、某・日本で一番来場者を集める学園祭に行ってきたマイスターです。

4日間で大体20万人を集めるそうです。うーん、すごい。実際に行ってみると、やはり活気が違います。学術系の発表も多種多様で、数が多い上に内容のレベルも高い……。
そんなわけで自分の勤務校はもちろんですが、この大学の学園祭には毎年行ってしまっています。

さて、日曜日ですので、ニュースクリップをお届けします。
今日はいつもと趣向を変え、海外のニュースばっかり集めてみました。

就職実績が大学の命運を(ダイレクトに)左右する。
■「(中国)就職率の低い大学と学科、募集数削減へ」(人民網日本語版)
http://japanese.china.org.cn/japanese/276045.htm

教育部は22日、就職率の低い大学および学科について2007年から募集人数を削減すると発表した。

2007年の大学卒業生は495万人で、2006年より82万人増える。社会全体の就職状況が厳しく、都市部の人材枠増加にも限界がある中、大卒生の就職へのプレッシャーは大きい。

教育部などの関係部門は大学卒業生の就職事業を徹底させるため、学生への就職指導とサポートを重要課題に位置付けている。
(上記記事より)

計画経済!って感じです。

かつては「分配制度」といって、国家が大学生の進路を全部決めていた中国。しかしこの分配制度、1989年の頃(つまり天安門事件の前後)を境に徐々に撤廃されていき、現在では、就職先は学生が自分で選べるそうです。
それはいいのですが、中国ではここ数年の間に、大学進学者が急増。その結果、就職先を見つけられない卒業生が出てきて、ちょっとした問題になっています。

そこで上記のように、国家が就職先を提供できない大学の定員を削減するという強硬手段がとられるわけです。こうなると大学は、「就職斡旋機関」としての役割が強くなってきますね。
でも行き先のない若者が大量に出るというのは、中国の政情を考えれば確かに、避けたい事態なのかも知れません。

(参考)
・悩み、暴れる、中国の大学生達 (最近の報道から)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50212258.html

ちなみに、学生のほとんどは都市部の企業への就職を希望するのだとか。貧しい農村部に行っても、学費で投資した分を取り返せないというわけですね。その結果、農村部が発展せず、地域格差が埋まらないのだと聞きます。
「農村戸籍」「都市戸籍」といって、戸籍で移動の自由を制限するという中国特有の制度もあります。問題はなかなか複雑です。

家庭教育も専門家が指導する時代?
■「(中国)『家庭教育指導師』、中国で新しい職業に」(人民網日本語版)
http://japanese.china.org.cn/japanese/276187.htm

全国初の「家庭教育指導師」の職業資格認定養成講座がこのほど上海で始まった。「家庭教育指導師」の仕事は家庭教育についてアドバイスをすることで、来年初めには第1期の指導師が誕生する。これから中国の新しい職業となるだろう。

「家庭教育指導師」は労働・社会保障部から認定される資格。今回の職業資格認定養成講座は胎教、創造教育、愛情教育など22科目ある。学生は合格後、全国統一の「家庭教育指導師職業資格証書」を得る。

調べによると、中国の家庭の80%近くに何らかの教育問題が存在している。試験のプレッシャーや就職の悩み、深刻なものでは子供の家出、インターネット依存、少年少女の恋愛・妊娠などがあるという。指導師の役目はこうした家庭の教育問題に専門的な回答を与え、保護者の間違った教育方法を正すことだという。
(上記記事より)

ソーシャルワーカーの、家庭教育版みたいなものでしょうか。

指導されなきゃ正しい家庭教育ができないのか、嘆かわしい……などと言えたのは以前のこと。
今の日本人であるマイスターは、このニュースを見て、うむむ、と唸ってしまいました。国家資格にするかどうかは別としても、専門家の指導を求めている家庭が増えているのは日本も同じです。
現在は、学校の教員がこの役割を担っている気がしますが、教員にもできることとできないことがあります。日本にもそのうち、こういうスペシャリストができるのかも知れません。

ガバナンスに弱点が?
■「(中国)一流大学が株で大損、学長を処分」(中国情報局)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=1124&f=national_1124_001.shtml

理工系の名門として知られる天津大学の副学長が大学の資金を株式市場で勝手に運用、最終的に3750万元(約5億5500万円)の損失を出していたことが分かった。同大学長は天津市人民代表大会代表(市議会議員)の職を解かれた。23日付で第一財経日報が伝えた。

教育部などの調べによると、天津大学の副学長が2000年9月から01年8月までに学校に無断で1億元の運用を広東省・深セン市の投資会社に委託。投資会社は株式を購入して担保に差し入れ、信用取引を行った。ところが03年下半期の株価下落の際、担保の株式は証券会社が強制決済で売却。証券会社による清算後、投資会社関係者は失踪した。流用資金が大学の収入か教育部の予算かは不明。
(上記記事より)

中国ネタ3連発です。

この副学長は運用で出た利益をこっそり自分の懐に収めるつもりだったのだと思われます。名門大学での出来事ということですが、ガバナンス的に、こういうことができてしまうのでしょうか……? 投資会社関係者も失踪するし、なんだかグレーなものを感じさせます。

あと、学長は市議会議員と兼任していたのですね。自動的に兼任になるのか、たまたまこの人がそういう立場にいたのかはわかりませんが、どちらか一方は名誉職みたいなものなのでしょうか……?

病気に苦しむ子供達を笑いで救うプロ、大学で育成。
■「(イスラエル)『臨床道化師』の学位を新設 イスラエルの大学」(CNN.co.jp)
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200611260004.html

小児病院などに出向いて患者を楽しませる「臨床道化師」の技術と理論を学び、学位を取得できるプログラムが、イスラエルのハイファ大学にこのほど新設された。臨床道化師は、患者の心をケアする専門家として、近年、欧米や日本での活躍が注目を集めている。

同大の報道担当者によると、臨床道化師を目指す学生は、演劇の基礎などとともに、専用の看護学コースを履修。修了者には文学士(BA)の学位が与えられる。「看護者と患者の関係や、病に苦しむ患者の心理状態など、演劇学校では学べないことを習得することができる」と、同担当者は強調する。

臨床道化師の仕事は1970年代、米バージニア州のハンター・アダムス医師が提唱したのが始まりとされる。病棟でのユーモアや人間性の重要さを訴えた同医師の半生は、1998年の映画「パッチ・アダムス」で詳しく紹介された。米国では、ニューヨークを拠点とするビッグアップル・サーカスの創立者、マイケル・クリステンセン氏が過去20年間にわたって、臨床道化師を派遣する活動を続け、これまでに90人以上の専門家を育成してきた。同氏はハイファ大学の試みを歓迎し、「学位が設けられるのは世界で初めてだろう」と語った。

同大で学位取得を目指す男子学生は、「このプログラムによって、臨床道化師が一時の流行ではないとの考え方が広がり、専門性が尊重されるようになることを期待する」と話している。
(上記記事より)

子供達の病室をまわって、子供を笑わせ元気づけるプロ道化師のことを「クリニクラウン」と言います。欧米で少しずつ知られてきている仕事ですが、日本ではまだ認知度は十分ではありません。

さて、イスラエルの大学が、このクリニクラウンを養成する専門のコースを用意したとのこと。

マイスターは以前、イギリスのクリニクラウンの女性を紹介する文章をどこかで読んだことがあるのですが、彼女は医者から相談を受けたり、治療経過のミーティングに加わっていたりと、完全に医療チームの一員という位置づけでした。難病に苦しむ子供に寄り添い、励ますという行為を通じて、治療に貢献しているのですね。

パフォーマンスのプロとしてのスキルに加え、医療チームと協働するための知識を問われるわけですから、道化師なら誰でもいいという訳ではありません。そこで、こういった専門課程も生まれるというわけです。
かなり特殊な専門技能ですから、大学レベルで教育プログラムを持つのは、悪いことではないんじゃないでしょうか。クリニクラウンの活動を研究して、その医療効果を科学的に解明することにもつながるでしょうし。

なお日本にも、「日本クリニクラウン協会」という組織があります。

■日本クリニクラウン協会 NPO CliniClowns Japan
http://www.cliniclowns.jp/index.html

個人的には、日本では欧米に比べ、パフォーマンスのプロがいまひとつ社会的な評価を受けていない気がしますので、クリニクラウンの活動は応援したいです。
例えば大学でも、医学部や大学病院の協力を得て、芸術学部の学生達がクリニクラウンの活動を実践するといった取り組みができるかもしれません。

企業への就職が約束された大学院(そりゃそうだ)
■「(韓国)『三星より入りにくい』成大携帯電話学科」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=81754&servcode=400&sectcode=410

卒業後、三星(サムスン)電子入社保障及び学費全額と月100万ウォン(約12万5千円)ほどの生活費支援など破格的な条件を掲げた成均館(ソンギュングァン)大携帯電話学科修士、博士過程に多くの志願者が集まり、10対1近い競争率を見せた。

13日、成均館大によると10日、2次入学願書受付を締め切った結果、28人を選ぶ修士課程に266人が志願、9.5対1の競争率を記録した。
(上記記事より)

企業と大学の結びつきが強い韓国では、企業が大学に教員として社員を大量派遣したり、カリキュラムを共同開発したり、卒業生を優先的に就職させたりといったことがあるようです。
そんなわけで、大人気の携帯電話学科(大学院)です。

ただ、よく読むとこんな記述も。

入学選考も三星電子入社試験と同様に多段階で進行される。受験者たちは書類選考と教授陣面接など大学選考を経た後、三星電子が進行する三星職能試験(SSAT)、面接などをパスしなければならない。SSATなどは実際一般三星電子志願者が受ける試験と等しいということだ。
(上記記事より)

もしかして、これって単に大学入学前に就職採用試験を受けているだけなのでは……?

以上、海外の話題ばっかり集めた、今週のニュースクリップでした。

学園祭の雰囲気は、その大学の学生気質をよく表しています。パンフレットに表れない情報ですね。
志望校の学園祭に行って、その大学に惚れ込む受験生もいると思います。逆に言うと、ガッカリするケースも山ほどあるんじゃないでしょうか。
いくつかの大学の学園祭に出かけた結果、志望校の順位が変わりました……なんてことも起きているかも知れませんよ。
大学の教職員の方は、ぜひ、ライバル校の学園祭を訪れてみることをオススメします。たかが学園祭、されど学園祭です。

今週も、本ブログを読んでいただき、ありがとうございました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

マイスターでした。