早い段階で専門を決めさせることには反対の、マイスターです。
かつてマイスターが通っていた高校では、高校2年の4月から文系・理系に分かれることになっていました。ですから、1年生の秋頃には、どちらかに進学するか、決めなければならなかったのです。
高校生1年生当時のマイスターが興味を持っていたのは、建築学、世界史、考古学、哲学など。建築以外は見事に人文科学系でした。ですから周囲は、マイスターは文系に進学するものと思っていたようです(数学の成績、ひどかったですし……)。
結局、一番興味があったのは建築でしたので、理系コースに行き、理工学部に入学しました。歴史や哲学は、本を読んだり旅行に行ったりして、自分で勉強しました。
期待以上に建築学の勉強は面白く、大学での4年間には非常に満足しています。
ですから高校時の選択は間違っていなかったと思いますが、でもやっぱりできることなら、歴史などについても、大学で体系だった教育を受けてみたかったなぁ……という気はします。建築学と歴史学なんて、相当、親和性が高い分野だと思いますし。
早くから興味を一つに絞れる人はいいのですが、そうでない人も世の中にはいます。
そういった人に対し、機械的に無理矢理ひとつを選ばせるのではなく、
「とりあえずいくつか好きなものを選ばせてから、後で絞っていく」
という選択肢も提示してあげられる社会が、素敵だなと個人的には思います。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「文系・理系、選択は入学後 ICU、来年度から新制度」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/1013/TKY200710130210.html
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国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)が来年度から、新入生全員を特定の学科などに所属させず、2年次の終わりに所属を決める新制度を導入する。「(進路を)決めてから入る」から「入ってから決める」への転換で、文系、理系を問わず幅広く進路を選べるようになる。同大学が売り物とする教養教育を充実させるのが狙いで、全学的に徹底するのは国内の大学では珍しい。
ICUは、学部は教養学部の一つだけで、1学年の定員は620人。現在は人文科学、理学、語学など六つの学科があり、各学科に定員がある。入学試験は教養学部として一本で実施しているが、受験生は第1志望と第2志望の学科をあらかじめ選んでおき、合格時に所属学科が決まる仕組みになっている。
新制度では学科を廃止して文学、経済学、法学、物理学、心理学、言語学など31の専修分野に再編する。入学時には所属を決めず、様々な分野の基礎科目を2年間学んだ後、自分に合った専修分野を決める。分野ごとの定員はなく、学生は希望通りの分野に進むことができる。
(上記記事より)
結構前から、この改革内容自体は発表されていたのですが、受験シーズンを迎えるにあたり一般メディアにも取り上げられるようになっていたので、ご紹介してみました。
開学以来、アメリカ型のリベラルアーツ教育を続けてきたICU。
その個性をさらに際だたせるような改革です。
■「2008年4月に教学改革を実施します」(ICU)
http://subsite.icu.ac.jp/oar/index.html
アメリカのリベラルアーツ・カレッジでは、「専攻は、音楽と化学です」みたいな学生がいても、別に誰もおかしいとは思わないそうです。
日本で同じことを言ったら、高校生の段階ですら、進路指導の先生から「おまえは何がやりたいんだ。将来、何になりたいのか、ふらふらしてないで決めていかなきゃダメだ」と呆れられたり、諭されてしまったりするかも知れません。
ICUは、そんなアメリカ型に、さらに一歩近づいたということでしょうか。
こういったリベラルアーツ教育を行ってきた大学は、日本には、他にもいくつかあるように思いますが、中でもICUは、徹底しています。
個人的には、こういった大学がいくつかあってもいいと思っていますので、この方針には共感します。
「何事にも興味がない、だから一つに決められない」というのは考えものですが、「様々なものに興味がありすぎて一つに絞れない」というのは、必ずしも悪いことではないでしょう。むしろ、長所の一つといえなくもありません。
そういう人には、無理矢理一つの選択を迫るのではなく、むしろ気が済むまで好きな勉強をやらせてみるという方法もあると思います。
それに、大学で専攻を二つ以上学んだり、副専攻を持ったりすることは、「科学知識に疎い法曹や政治家」、なんてのを減らすためにも、いいことだと思うのです。
一番のネックは、高校で進路指導をする教員や、高校生の親たちの世代が、こういった大学の価値を子供に正しく伝えられるか? ということだと思います。
いくら良い教育をしていても、世間にそれが知られていなければ、受験生は集まりません。
ただこれも最近は、早稲田大学が新設した国際教養学部を始め、大きな総合大学にも明らかにICUのようなリベラルアーツ+国際教育を志向した学部が増えてきています。
また立命館アジア太平洋大学、そして国際教養大学など、小規模でユニークな教育環境を持つ大学も出てきています。こういった大学の卒業生達が、これからどんどん世の中に出ていきます。
その点で今は、こういったリベラルアーツ系大学・学部も、知名度や存在感をアピールする良いチャンスかも知れません。
以上、マイスターでした。
リベラルアーツ花盛りですが、そもそも教養学部あるいは教養課程を解体して、リベラルアーツを放棄したのが大学だったような……。学芸大学を教育大学に改称したかと思ったら、ゼロ免課程を作ってさも学芸重視の素振りを見せる国立大学も同じですけどね。