そんなマイスターでも、毎年、楽しみにしているスポーツ中継があります。
それが、
「箱根駅伝」
です!
こうして記事を書いている今も、テレビで中継を観ています。
いやー、燃えますね。
大学職員なんて職業だと、どの大学のこともよく知ってますから、通常の5割り増しくらいで放送を楽しめます。
もし、自分の勤務先が出場校だったりすると、3倍くらい白熱して観戦できることでしょう。
それどころか、現地の準備やサポートにかり出されている職員もいそうです。
ライブで楽しめます。(大変ですが)
箱根を楽しんでいるのは、大学関係者だけではないようです。
■「東京箱根間往復大学駅伝競走(日本テレビ) 【関東地区】2005年1月13日現在」(株式会社ビデオリサーチ)
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/04hakone.htm
昨年までの、箱根駅伝の視聴率です。
若者がチームのために必死で走り抜く姿を応援してしまう気持ちが、この高視聴率を支えているのでしょうか。
もちろん、「お正月でみんな家にいてやることない」というのと、「コッテコテに作り込まれた年末・正月番組にもう飽きちゃった」という要素も大きいでしょう。
もし箱根駅伝が「体育の日」あたりに放映されていたら、ここまでの視聴率が出るかどうか。
とまぁ、様々な要素があるのでしょうが、いずれにしても国民的な人気イベントであることは間違いありません。
さて、マイスターは陸上競技の知識ゼロですので、例によって、広報の視点でこの箱根駅伝を見てみます。
(本来は、純粋にスポーツとして存在していてしかるべきですが、現実的に広報効果が発生していますので、今回は開き直ってそういう視点だけで見ます)
今さら言うまでもありませんが、箱根駅伝は、大学の知名度を上げるためには最高のイベントです。
高視聴率もさることながら、
これだけ、全国ネットで大学名を連呼する番組は他にありません。
「そう言えば、この大学、箱根駅伝でしか名前を聞いたことがないなぁ」
って大学、ありませんか?
(どことは申し上げませんが)
新設校が最も効果的かつ確実に知名度を上げる方法、それは箱根駅伝に出ることでしょう。
既に有名な大学であっても、「箱根」にはメリットがあります。
スポーツの強さは大学に活気を与えます。「学生が元気な大学」「活気ある大学」というイメージを付与することができます。
駅伝は、ご父兄や親族一同にもきっと好評でしょう。
以下は、2002年度の各駅伝出場校の大学パンフレットに、どのように駅伝のことが書かれているかということをまとめたページです。
■「『2002年版大学入試ガイド』に見る箱根駅伝」
http://www31.ocn.ne.jp/~ysaijo/ny02-0-main.htm
このように、どの大学も高校生(と、隣にいる親)に対して、駅伝のプラスイメージを活用しています。
しかし、注意すべきことがいくつかあります。
箱根駅伝には、いくつかの特徴があります。
それを把握しておかないと、十分な広報効果は望めません。
まず、箱根駅伝は、関東の大学しか参加できません。
■「平成17年度 加盟校」(関東学生陸上競技連盟)
http://www.kgrr.org/etc/leaguer-univ.htm
箱根駅伝を主催しているのは「関東学生陸上競技連盟」です。
ですので、この関東学連の加盟校しか、参加できないのです。
上記のリンクはそのリストですが、当然のように、関東の大学は含まれていません。
どれだけ陸上競技で成果を上げていても、北海道や関西の大学では、箱根駅伝には出場できません。
(たまに、招待チームとして関東以外の大学も入ることがあるようですが、継続されませんのであんまり大学の宣伝にはなりません)
というわけで、関西の大学は「不公平だ!」と思ってらっしゃるかもしれませんね。
箱根駅伝の選手紹介テロップには、出身高校の名前も出るのですが、関東以外の地区から進学してきた学生さんが結構います。
競合大学は、全国の高校から優秀な選手を関東までスカウトしてくるのです。
このスカウト合戦に勝たなければ、当然、退会に出場することは難しくなります。
次に、大事なこと。
箱根駅伝に出場するためには、走者の10人全員の総合力が問われます。
1月の箱根駅伝に出場するためには、前年の箱根駅伝でシード権を獲得するか、または10月頃に行われる「予選会」のタイムで上位に食い込む必要があります。
新規参加の場合は、予選会を勝ち抜いて参加することになりますが、これは「上位10人のランナーのタイム」で決まるしくみです。ひとりだけズバ抜けて速い選手をスカウトしてきても、それだけでは参加できません。
つまり、「それなりに速い選手を10人」そろえないと、出場もままならないというわけです。
(1/3追記:79回大会以降、上記に加え「関東インカレ」の成績を加味した枠も3校分用意されたらしいです)
また、運良く予選会で上位に入り、箱根駅伝の出場を果たしても、一年きりの参加では広報効果は限られています。
「毎年お正月に聞く名前」となって、はじめて十分な箱根効果が期待できるわけです。
で、箱根駅伝の場合、復路で上位10位に入っていれば、翌年大会のシード権が与えられますので、次は予選会に出なくてもいいのです。
(このシステムがまた、箱根駅伝を面白くしているのですねー)
つまり、広報効果を持続させるためには、「10位以内でゴールする」ことが必要です。
ところが、これがまた難しいわけです。
「常に10位に食い込める選手をそろえている」ということは、大変なことです。
伝統ある強豪校ですら難しいのに、まして新設校では、選手がなかなか揃いません。
じっくり、何年もかけて準備を進めていく覚悟がないと、箱根を広報に使うことはできないのです。
そして最後の課題。
箱根駅伝に参加するには、とにかくお金がかかります。
箱根駅伝コースの沿道に、ノボリがたくさん立っていますね。
あれは、大学の費用で用意しています。
また、沿道では、大学関係者と見られる応援団がいますよね。
選手達の父兄を始め、大学職員や、教員(!)も混じっているそうです。
あの方々をバスで輸送する費用なんてのも、実は大学の持ち出しです。
もちろん、大会規定上、そんなことをする義務はないのですが、
せっかくの広報効果を活かすために、出場校のほとんどはそうした予算をとるのです。
というわけで、大学として本気で箱根を広報に使うのなら、ちょっと考えただけでも、以下のような予算が必要になるはずです。
<恒常的にかかるお金>
○選手のスカウト費
○特待選手の学費
○監督など、指導者のギャラ
○練習施設や備品の整備費(合宿施設や寮なども含まれる)
※これらは、少なくとも数年単位で投資を持続させなければなりません
<大会にかかるお金>
○ノボリや旗などの準備費
○関係者の輸送費(さすがに宿泊費などは参加者持ちだと思います…多分)
○サポートにまわる大学教職員のギャラ
<その他>
○大学webサイトの駅伝コンテンツ作成費
○広報誌に使う記事のための取材費
とある大学ではなんと、教員に「箱根駅伝担当」というポストがあるそうです。
そんな担当者達の労務にかかっているお金も考えると、バカにならない金額が、持続的に必要になります。
以上、なかなか超えるべきハードルは多いです。
もちろん、根本的な問題として、
「選手達の、学業とスポーツの両立をどう成立させるか?」
という問題があります。
どうも、はなから「選手は、スポーツだけやっていればいい」という姿勢をとっている大学もあるようです。
今回マイスターは広報の視点で記事を書くと申し上げましたが、実際に選手達に接する教職員は、やはり「広報だけ」ではいけないと考えます。
大学スポーツには、それなりの意義や教育効果もあるのでしょうが、やはり学生である以上、一般学生と同じように学ぶことが大切です。ですので本当は、過度なスポーツスカウトもどうかと思います。
そこは、教育機関として、節度を守って頂きたいところです。
でも、そんなこんなで駅伝に出場し続け、駅伝で大学を活性化することに成功している大学もあります。
その典型例が、山梨学院大学。
■「山梨学院大学」
http://www.ygu.ac.jp/
webサイトのトップページを見れば、この大学に置ける駅伝の存在感の大きさが、一目瞭然です!
よく見てください。トップページに描かれたイラストのキャンパスマップの中を、駅伝チームが走っています!
彼らにマウスカーソルをあわせると…「箱根駅伝目指してがんばるぞー!」のセリフが。
まさに、大学の顔。
その他、各校とも、陸上競技部のサイトで駅伝コンテンツを用意しています。
↓こちらから、各大学の関連コンテンツに飛べます。
・「Saijo’s 箱根駅伝関係リンク集」
http://www31.ocn.ne.jp/~j_saijo/ekilink.htm」
というわけで、駅伝に関して情報をあつめてみました。
以上、色々と広報的な視点で考えましたが、
やっぱりそれ以上に、箱根駅伝はスポーツとしての魅力が一番。
いちファンとして、毎年楽しみにしているマイスターなのでした。
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(関連記事)
・箱根駅伝と大学広報(2)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50127127.html
明けましておめでとうございます。
以前にマッキンゼーと東大に関する記事にコメントした者です。
今日の箱根のランニングはみてました。
マラソンは人生と重なる部分があるように感じるので好きです。
やっぱり感動しますね。
ところで、もしさしつかえなければ、こちらのブログを私のブログとリンクさせていただけないでしょうか?お返事をいただけますと幸いに存じます。
2006年が素晴らしい年となりますように。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
マサコ。様:
コメントへのご返信をためていたマイスターです。
とんでもなくお返事が遅れてしまいました…大変失礼いたしました。
リンクについて、あれこれと考えたのですが、これまで設けている「大学職員リンク」とは別に、「いろいろ相互リンク」(この名称は変えるかもしれません)という欄を設けて、そこに追加させていただくことにしました。
現在はレイアウト上、リンク欄がかなり下の方になってしまうのが難点ですが、これもそのうち、もうちょっと何とかしたいと考えています。(3列レイアウトにするとか)
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。