学園祭の盛り上がり方いろいろ

マイスターです。

10~11月は、学園祭シーズンでした。
大学が行うPR活動の他、新聞や各ポータルサイトでも学園祭特集を行っていました。

学園祭が終わった後の報告が、ぽろぽろとメディアに掲載され始めています。

伊勢市の皇学館大の学園祭「倉陵祭(そうりょうさい)」が1日、3日間の日程で始まった。今年で47回目。初日は呼び物の樽御輿(たるみこし)を学生たちが担ぎ、威勢良く市内を練り歩いた。
御輿は文学、教育両部5学科の各学年ごとに作った計20基で、源氏物語誕生1000年にちなむ装飾など今年のテーマ「彩」にぴったりの鮮やかな仕上がり。4年生らが「卒業後も頑張る」「みんなのことは忘れん」などと舞台上で思いのたけを叫び、学びやから伊勢神宮外宮付近までの約2キロを御輿とともに往復した。
「威勢良く樽御輿 皇学館大「倉陵祭」始まる」(中日新聞)記事より)

「第44回畜大祭」(実行委員会主催)がこのほど、2日間にわたり帯広畜産大学で行われ、ばん馬リッキー号の馬車など新企画で盛り上がった。
校舎などには、サークル活動を報告する展示会や飲食物販売コーナーが設けられ、学祭ムードを演出。地域のばん馬文化を紹介しようと初めて馬車も登場し、学生たちを乗せて構内道路をゆっくりと周遊した。
「リッキー号の馬車人気 畜大祭 新企画で盛り上がる」(ばんえい十勝劇場)記事より)

大学ごとの個性を感じる企画は、学生だけでなく、市民の方などにも愛されると思います。
高校生などにとっても、大学のイメージを知る上で大いに参考になることでしょう。

大学や学生によると、小室容疑者は芸術情報学部音楽表現学科で「新世紀音楽概論」を担当。内容は、小室容疑者の音楽業界での体験談が主だったという。昨年受講したという女子学生(20)は「裏切られた気持ち。授業は正直面白くなかったけど、大学の顔になってくれると思っていたのに」。
(略)昨年10月の学園祭では150人を集めての公開授業が予定されていたが、体調を崩したとして、当日に中止されたという。
「小室哲哉容疑者:今年度は休講に 尚美学園大」(毎日.jp)記事より)

↑この方の問題は、学園祭の企画にも影響を与えていました。
関係者の皆様の苦労をお察しします。
学園祭とは関係ありませんが、学生さんのコメントが泣かせます。

さて、各種の記事から、昨今の学園祭を巡るテーマがいくつか見えてきました。

【「環境」テーマの学園祭多し。】

様々な記事を見て気づくのは、とにかく「環境」を柱にした学園祭が多いということ。
学園祭自体のテーマが「環境」である場合も多いですし、テーマというわけではないけれど環境対策に力を入れている、というケースも少なくありません。

大学祭のゴミを減らしたい-。7年前に沖縄大学で始まった「エコ学園祭」を他大学に広げる取り組みが始まっている。
沖縄国際大学や名桜大学の学生が、沖大のノウハウを学び、ゴミ減量を目指している。
学生らは「地域の祭りやイベントでも、ゴミ削減を広め、エコに関心を持ってもらう機会にしたい」と意気込んでいる。
二〇〇一年から、食器の再利用やゴミ分別など「エコ学園祭」を始めた沖大。〇一年は二トンあったゴミが、〇七年は四分の一の五百六十キロにまで減った。
同大は先進大学の京都精華大学の学生からゴミ減量法などを学び、毎年徐々にゴミの量を減らす取り組みを続けてきた。
学んだノウハウを県内の他大学にも広げたいと、今年から沖縄国際大学、名桜大学の学生らと提携し、二大学の「エコ学園祭」実施に協力する。沖国大と名桜大の学生は、十月三十一日―十一月二日の沖大祭に参加し、ゴミ分別法や食器洗浄車の使い方などを学ぶ。
「エコ学園祭 学生つなぐ/沖国大・名桜大 分別・再利用 ゴミ4分の1 先駆けの沖大祭で学ぶ」(沖縄タイムス)記事より)

四日市市萱生町の四日市大で25日始まった大学祭で、環境問題を考える「エコ企画」として「私たちからのメッセージ発表会」があった。
同大学祭では「エコ企画」が毎年行われており、発表会は四日市大関係者や県内小中学校教員、自治体職員などでつくる「四日市大エネルギー環境教育研究会」の主催。メンバーの一人が環境教育に出向いている愛知県北名古屋市の宇福寺児童館の小学生による劇の発表や、四日市市海蔵地区で自然環境問題を学ぶ「海蔵しぜんクラブ」の小学生による調査報告などがあった。調査報告では、地元の海蔵川の水生生物を調べた結果を発表し、「ホタルが飛ぶ川になってほしい」と話した。
「明日のために:大学祭エコ企画、メッセージ発表--四日市大 /三重」(毎日jp)記事より)

津市の高田短大で25、26の両日、「環境-エコスマイル」をテーマに学園祭が開かれる。学生たちは、オリジナルのエコバッグや廃材を利用した飾り付けなどで、「環境に優しいことをして、みんなが笑顔になれば」と願いを込める。
エコバッグは縦30センチ、横25センチでまち付きで、コンビニなどでの買い物や弁当入れにちょうどいい大きさ。どの年代でも使いやすいように茶色と白が基調。緑色で描いた「ECO(エコ)」の文字でかわいらしさを出した。当日は、限定100個を来場者にプレゼントする。
秋をイメージした会場の体育館の飾り付けにも、トイレットペーパーの芯やチラシなどを使って、環境に配慮する。実行委員長の子ども学科2年、増田望さん(19)は「ごみでも手を加えれば素晴らしい物になる。ちょっとしたことかもしれないけれど、自然を守る助けになれば」と話す。
「“環境学園祭”来てね 25、26日に津の高田短大で開催」(中日新聞)記事より)

もともと学園祭というのは、食品の販売に使うトレーや割り箸、屋台に用いる木材などをはじめ、大量のゴミが出がち。
このゴミにまで気を配りながらイベントを盛り上げるというのは、大変ですが、とても有意義なことです。
さらに大学同士でノウハウを共有したり、学外の団体と連携した企画を行ったりと、大学生ならではの柔軟性、機動力で環境対策の輪をひろげているようです。

また、環境に配慮した飾り付けを行うなどの活動も重要。
こうした取り組みは、社会全体から見た一日あたりのゴミ削減量で言えば、それほど大きなものではないのかも知れません。しかし、こういったテーマに本気で取り組んだ学生が、この後社会に出て行くということの意味は、とても大きいと思います。

【飲酒の是非。】

今回、様々なところで議論になっていたのが、「飲酒」の扱いです。

以前から、大学生の急性アルコール中毒は大きな問題になっています。
その一方、学園祭にはお酒が欲しい、成人なら問題ないのでは、といった意見もある模様。
大学によって、対応は違っているようです。

日ごろは閑静な学問の府に模擬店が立ち並ぶ、にぎにぎしい大学祭の季節を迎えた。近年は未成年者の飲酒や泥酔によるトラブルを防ぐため、期間中の禁酒を通達する大学が増えている。福岡県内でも福岡大や久留米大などに続き、豪快さとバンカラを旨としてきた九州大もついに今年、全面禁酒に踏み切ることになった。
来春のキャンパス移転に伴い、六本松地区(中央区)における九大祭は今年が最後(21‐23日)。準備が進む先月下旬、学生と教員の代表が本館に集結した。大学側が九大祭の禁酒を打ち出し、学生から反対意見が噴出したことを受けた「禁酒討論会」と「禁酒禁煙会議」だった。
(略)飲酒派の主張「テンションが上がり楽しさが広がる。模擬店は売り上げがアップする。西南や福大は芸能人が来るが九大は呼べない。代わりに酒で(盛り上がりたい)」
禁酒派の主張「周囲に迷惑をかける行為、飲酒運転、急性アルコール中毒の心配がある。何かことが起これば大学側の責任問題になる」
学生からは、飲酒時間を制限することなど罰則を含めた折衷案も出たというが、大学側は「酒に頼らないといけないような九大祭なら、やめてしまえ」と一蹴(いつしゆう)。実行委は「九大祭の存続」を最優先にやむなく禁酒を受け入れた。
「九大祭も「断酒」宣言 大学・トラブル責任回避 学生・盛り上げ役なのに」(西日本新聞)記事より)

学生の飲酒トラブルを防ぎ飲酒マナーを改善しようと、芝浦工業大学(東京都江東区)の学園祭で2日、20歳以上の入場者にリストバンドを配る試みがあった。大学の入り口で身分証明書を提示してもらい、成人には酒専用のコップも提供した。学生自らルールを決めたという。
同大では06年、学生が飲酒後に救急車で運ばれたり、飲酒運転が発覚したりして、学園祭は全面禁酒になった。しかし、「酒がないとさびしい」などの声が上がり、昨年は外からの持ち込みに限って時間と場所を決めて飲酒できるようにしたという。
今年も屋台では酒は提供せず、持ち込みのみ。500ミリリットルの缶ビール1本を持ち込んだ大学院工学研究科2年の目黒佑一さん(23)は「本来なら自由に飲めるほうがいい。ただ、飲酒マナーが悪くなっていることも事実で、当面はこうしたルールも仕方ないのかもしれない」。
芝浦祭実行委員会長のシステム工学部3年大谷隼平さん(21)は「まずは未成年者に飲ませない、無理な飲酒をしないという雰囲気をつくることが重要だった。皆がルールを守れるようになったらまた自由に飲めるようにしたい」と話した。
「飲酒OK?リストバンドで識別 芝浦工大学園祭」(Asahi.com)記事より)

「そもそも以前から飲酒はNG」という大学もあるようですが、近年の急性アルコール中毒問題を受けて全面禁止にする大学も増えているようです。
学園祭というのはたいてい大学ではなく学生側が企画・実施するものなので、学生側の考えと、大学側の考えが対立する場面もあるでしょう。
飲酒問題に対する解決法の違いから、大学それぞれの校風が見えてきます。

ちなみにマイスターもつい最近、「飲酒ナシ」の学園祭に遊びに行ってきましたが、そうでない学園祭と比べて、盛り上がりに欠けるということはありませんでした。
飲酒が認められている学園祭も悪いとは思いません。ただ、「お酒がないと盛り上がれない大学生」と、「しらふでも盛り上がれる大学生」とだったら、後者の方がより魅力的だなぁとは、個人的には思います。

もう一つ、高校生に進路指導を行っている立場からすると、お酒に頼って異様な盛り上がりをしている(盛り上がるのではなく、ハメを外している、という感じ)の学園祭は、あまり生徒に勧めにくいです。
もちろん、お酒が入っても理性を失っていない学園祭なら大歓迎です。

【「ミスコン」の是非。】

大学によっては、「ミスコン(ミスキャンパスコンテスト)」が、学園祭の目玉になっているケースもあるようです。有名大学だと「女子アナウンサーへの登竜門」みたいな扱いを受けている場合もあり、メディアに取り上げられることもしばしば。

ただ近年では、男女共同参画の理念に反するのでは、女性蔑視では、容姿による順位付けは差別的では、といった批判も強く、ミスコンを中止にする大学も多いようです。

福島大(福島市)で1日、第44回福大祭が始まり、学生有志が企画したミスキャンパスコンテスト(ミスコン)「ミス福大2008」が初めて行われた。近年、批判も多いミスコンとあって、大学が事前に企画内容の確認に乗りだすなど一部で物議を醸したが、来場者による初日の審査は混乱もなく終了した。学生らの反応はおおむね好評で、「大学祭を盛り上げたい」との狙いはひとまず達成された形だ。
(略)企画した学生たちは、「容姿による順位付けは差別だ」といったミスコン批判も考慮、審査方式には容姿以外の要素も取り入れるなど当初から工夫して準備を進めた。世論を気にした大学が企画内容を確認するなどの動きもあり、事前に予定していた出場者のお披露目とインターネットでの事前投票は取りやめた。
一部教員は「ミスコンは男女共同参画社会の理念と両立しない」と大学に中止指導を申し入れたが、大学は「学生の自主性を尊重する」と開催に反対しなかった。
「容姿以外も考慮ひとまず盛況 福島大初のミスコン」(河北新報)記事より)

↑様々な議論があった末にミスコンを行った福島大学では、警備を強化するなどの対策を実施。容姿以外の要素を取り入れるなどの工夫を行ったようです。
ただ、容姿以外の要素を取り入れたとしても、基本的な論点はあまり解消されていないようにも思います。
この辺りも、大学それぞれの考え方でしょうか。

ちなみに、ミスコンとは主旨が違いますが、↓こんなニュースも見かけました。

岐阜市立女子短大の大学祭「第59回桃林祭」が同市一日市場北町の同短大で行われ、恵那市明智町出身のトップモデル松井大典さん(40)がゲスト出演した生活デザイン学科のファッションショー(岐阜新聞・岐阜放送後援)があり、プロが放つ迫力で学生の視線をくぎ付けにした。
学生らに岐阜から世界への夢を広げてもらおうと、世界で活躍する松井さんを初めて招いた。松井さんは準備段階から学生とかかわり、ショーの演出も助言。学生と一緒にショーをつくり上げた。
「大学祭に男性トップモデルがゲスト出演」(岐阜新聞)記事より)

トップモデルとしての体験談も聞けるなど、ファッションを学ぶ学生には大いに参考になったようです。
こんな盛り上げ方もある、というご参考に。

このほか、地元の企業や自治体などと連携した取り組みも、今年は目立ったようです。
学園祭で選挙の広報を行ったり、企業の製品PRを行ったりと、学園祭の集客力を狙った企画が多く見られました。

ここでは特に取り上げませんでしたが、作家や政治家、ジャーナリストなどのメディア関係者などなど、多様なゲストを招いての講演会も、学園祭の魅力。
学園祭で招かれている方々は当然、お客さんが大勢集まる(=その大学の学生が日常的に関心を抱いている)人であるわけですから、ゲストのメンツを見れば、(こう言ってしまってはなんですが)その大学の学生の知性がわかります。
逆に芸能人とミスコンだけが目玉、という学園祭をやっている大学は、そういう企画でしか学生が集まらないということでしょう。
教員によるシンポジウムや各種の研究発表などの充実度も同様。

学園祭のパンフレット一つとっても、大学の個性は十分すぎるほどわかります。

(ちなみに「就職に強い大学」かどうかは、学園祭に協賛している企業の質・量からかいま見えたりします。学園祭パンフレットのスポンサー広告を見てみましょう)

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。