マイスターです。
ちょっと前に「JANJAN」に掲載された市民記者の記事を、興味深く読んでおりました。
■「ドイツマスコミスキャン~エリート大学の誕生(上)」(JANJAN)
http://www.janjan.jp/world/0610/0610223194/1.php
■「ドイツマスコミスキャン~エリート大学の誕生(中)」(JANJAN)
http://www.janjan.jp/world/0610/0610293654/1.php
■「ドイツマスコミスキャン~エリート大学の誕生(下)」(JANJAN)
http://www.janjan.jp/world/0611/0611054120/1.php
日本で言うところの「COEプログラム」のような補助金集中配分のシステムが、ドイツにもあるのですね。政治家と学者の投票により、3校がその対象校に選ばれた……まではよかったのですが、それが南部の大学に著しく偏ってしまったのだそうです。
いざふたを開けてみると、学者側は徹底的に政治的判断を排除し、地理的バランスを全く考慮に入れずに―そして文字通り「純粋に学術的な視点」のみから―決定を下し、前回の記事で述べたように南部の大学に偏った選出となってしまった。これでは政治家はおもしろくない。
(「ドイツマスコミスキャン~エリート大学の誕生(中)」(JANJAN)より)
ご承知の通り、政治家というのは各地方の利益代表という任務を背負っているわけです。かくして、審査結果に対し「公的資金をつぎ込むのにこうした偏りがあるのは政治的によろしくない」……という論理を持ち出して決定に反対し出す政治家が登場。マスメディアを含めて議論が起きてしまいました。
(ご興味のある方は、上記の記事をどうぞ)
うーむこれは興味深い、と思って読んでいたら、なんだか似たようなニュースを日本でも見つけてしまいました。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「沖縄科技大予算、“政治圧力”で評価格上げ」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061205it02.htm
■「大学院大学『S』評価 沖縄相、『圧力』を否定 科学技術会議」(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-19457-storytopic-1.html
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国による科学技術施策の「格付け」作業で、国が沖縄振興の目玉として推進している「沖縄科学技術大学院大学」構想の評価が、関係閣僚や内閣府沖縄振興局の強い要請を受けて、公表直前に最高の「S」ランクに“修正”されていたことが関係者の話でわかった。
(略)
関係者の話を総合すると、同大学構想に対する評価の付け替えが行われたのは05年度と06年度予算分。いずれも専門家らの判定は「A」だった。〈1〉開学時期〈2〉研究・教育の組織〈3〉教育カリキュラム〈4〉学則・教務規則〈5〉学生の生活環境――などが不備であることを指摘し、「早急に具体化し、開学までの明確なスケジュールを示すべきだ」と注文を付けていた。ところが、指摘事項はそのままなのに、公表された評価はSに変わっていた。総合科技会議の関係者らは「関係閣僚が政治判断で、S評価維持を強く求めた結果、不自然に覆った」と証言している。総合科技会議の専門家らが下した判定に対し、関係閣僚が直接見直しを求めること自体、極めて異例だ。沖縄振興局も強く見直しを要請していた。
(略)
沖縄振興局新大学院大学企画推進室の板谷英彦次長は「大学構想の予算は一層、増額する必要がある。そのためにはS評価の維持が欠かせない」と話している。
(「沖縄科技大予算、“政治圧力”で評価格上げ」(読売オンライン)より)
この沖縄科学技術大学院大学の構想、評価制度が始まった2002年から唯一5年連続で「S」とされているプロジェクトなのだとか。でも、記事を読む限り、なんだか不透明な感じがしますね。
■「独立行政法人 沖縄科学技術研究基盤整備機構」
http://www.oist.jp/j/index.html
もともと発端は「沖縄振興」から始まったこの構想。色々と思うところはありますが、しかし「もし、何もかもがこの構想通りに実現するなら」すごいプロジェクトだとも思います。世界レベルの研究センターを目指すのであれば、徹底的にやって欲しいです。
本ブログでも、ちょうど一年くらい前に、↓以下のようにご紹介しておりました。
・沖縄科学技術大学院大学とは?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50119391.html
この大学、職員についても「ファイナンシャルディレクター」や「 リサーチリソースユニットディレクター」の募集情報を英語で公開しており、おおっ!?と思わせるものがあります。
なるほど、確かにこれまでにないタイプの研究拠点を作ろうとしているのだなと感じさせます。
と、期待も大きいプロジェクトなのですが……その実現の段階で本当にインチキがあったのだとしたら、これはとんでもないことです。地域振興のためとはいえ、不正な手段を使ってまで予算を引っ張っていい訳がありません。
ドイツでは学者の審査で否決されましたが、日本ではお役人(と敢えて言います)の必殺ウルトラCで、実現に持ち込まれるのかもしれません。
研究成果をあげるために大学を作るのであって、大学を作るために研究するわけではないのですから、なんだか本末転倒です。お役人の世界の論理は、毎度のことながらこういうところがどうにも理解に苦しみます。
っていうか、そもそも「世界トップクラスの科学技術系の大学院大学」を目指しているのに、構想段階で早くもズルしないと成立しない状況なのだとしたら、先が思いやられますよね。
なんというか、「調査の数字をこねくり回して強引に作った道路だが、完成後、誰も使っていない。でも作ったお役人達は自分を納得させて満足。」みたいなことにならないといいなぁ、と、ちょっと心配になります。
構想自体は楽しみでもあるのですが、果たして大丈夫なのでしょうか、沖縄科学技術大学院大学。
沖縄担当相は「圧力」をかけたことを否定している、との報道もあるようですが、そうであることを願います。
というわけで、日本とドイツの話題、まとめてご紹介しました。
マイスターでした。