ニュースクリップ[-2/10] 「東海地方から学生呼び込め 地方の国立大、名古屋で入試」ほか

マイスターです。

先日、仕事でドイツに行く機会があったのですが、帰国後、風邪を引いたらしく、咳が出だしました。
周囲は、この症状に勝手に「ゲルマン風邪」という病名をつけています。スペイン風邪なら聞いたことがありますが、なんですかその怪しい病名は。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【名古屋に熱い視線が。】
■「東海地方から学生呼び込め 地方の国立大、名古屋で入試」(東京新聞)

ラストスパートを迎えている大学の入試戦線。ここ数年、東海地方から学生を呼び込むため、名古屋市に試験会場を置く地方の国立大が目立っている。いずれも工学部で、今年の進出数は最も多い5大学に。18歳人口の減少や理系離れによる志願者減を食い止めようと、国立志向が強くモノづくりへの意識も高い東海地方に狙いを定め、大学間の生き残り競争を勝ち抜こうと躍起だ。
「室蘭の国立大を、名古屋で受験できます」。2次試験出願が始まった1月末、名古屋市営地下鉄車内に室蘭工業大の中づり広告が踊った。北海道の国立大が名古屋市に試験会場を設けたのは初めて。今月6日出願を締め切り、ふたを開けると志願者は昨年の1550人から約200人増えた。入試担当者も「まずは成功」と笑みをこぼす。
地方国立大が都市に試験会場を置く動きは、独立行政法人化で予算執行が自由になった2004年以降に加速した。特に工学部が狙う場所は、東京や大阪でなく名古屋。福井大が06年に進出したのを皮切りに、07年は山形大、今年は室蘭工大のほか富山、山梨大が新たに“参戦”した。
(略)愛知県立豊田西高校(同県豊田市)の進路指導主事、松田昌浩教諭(49)も「もともと私立より公立が強い地域で、入学段階で親子とも『国公立大学を』と望み、高校も要望に応えるよう指導する。中部はモノづくりの拠点で、他地区に比べ理系志望も多い。大学側もニーズを敏感に感じ取っているのでは」と話す。
東海地方の好調な就職状況も地方国立大にとって追い風だ。室蘭工大の就職指導担当者は「東海地方は就職先として関東、道内に次ぐ。『故郷の企業に戻れる』という実績が学生に安心感を与えている」。静岡県の自動車機器メーカーに就職する愛知県豊田市出身の同大4年岡田大輝さん(22)は「東海地方からの求人も多く、就職面で不自由はなかった」と語る。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

「工学部ばなれ」と言われ、受験者集めに苦労している工学部。
そこで地方の国立大学工学部が注目するのが、名古屋です。

日本のものづくりの拠点としても知られ、経済も好調。
その上、国公立志向が強い地域となれば、ここで売り込まない手はないでしょう。
しばらく、隠れた激戦区になるかも知れません。

【親世代との比較結果は。】
■「理系高3の数学力、30年前よりアップ」(読売オンライン)

子どもの理数離れが懸念されているなか、理系高校生の数学力はおよそ30年前よりも上がっていることが、東京理科大学数学教育研究所が1万人を対象に行った学力調査で判明した。
理科大への進学者が多い高校580校から任意に選び、調査協力を呼びかけた。2005年から3年間実施し、31都道府県からのべ146校が参加。「数学3」と「数学C」を履修している高校3年生に問題を出した。
問題のうち約30問を国際教育到達度評価学会(IEA)が理系高校生に行った1980年度の国際数学教育調査(SIMS)と同一の問題にし、比較した。その結果、今回調査のほうが成績が上だった問題が全体の66・3%もあり、同程度が21・7%だった。80年度より成績が下回った問題は11・9%にとどまった。同研究所の澤田利夫所長は「理系の生徒の学力は長期的にみて低下していないことが証明できた」と話している。
ただ、3年間の成績を比較すると、平均正答率は徐々に下がり、特に、図形など記述式で証明を求める問題の成績低下が著しかった。
(上記記事より)

「日本の若者の学力は以前と比べて低下している」、そう語る方は非常に多いです。
特にOECDの「PISA(国際学習到達度調査)」の結果で、「数学的応用力」の順位が下がった事実は、「日本のものづくり産業も凋落か?」といった話題と結びつき、頻繁に引用されます。
ただしPISAの調査は、ここ数年で実施され始めたもの。それも、国際順位の比較に焦点が当てられることがほとんどだったりします。

「以前の日本の理系高校生」と、「今の日本の理系高校生」とを比較してみると実は、今回の方が成績が良かった問題の方が多いのだそうです。

1980年の高校生というのはもしかして、ちょうど今の高校生の親の世代くらいではないでしょうか。
様々なメディアが流す情報の印象で、「ううむ、最近の高校生の数学力は落ちているのか」と心配されている保護者の方にとっては、新鮮な情報かも知れませんね。

ただ、「記述式証明問題の成績低下が著しい」など、気になる点があるのも確かです。
時代によって、そもそも求められる学力の定義などに若干の違いはあるでしょうし、学校を取り巻く社会情勢もまるで違いますから単純比較はできませんが、こうした分析から見えてくることもありそうです。
情報を受け取る側も、つい他の国との比較に目がいってしまいがちですが、学力論議は、様々な切り口で調べることも大事ですね。

【おいしい大学。】
■「大学グルメが大集合 16日から東京で、各大開発品の物産展」(北海道新聞)

大学や大学院の研究室が開発し、地元企業などと連携して商品化した「大学ブランド食品」を集めた初の物産展「大学は美味(おい)しい!!フェア」が十六-二十の五日間、東京の百貨店、新宿高島屋で開かれる。道内の北大大学院水産科学研究院(函館)、藤女子大(札幌)、東京農大生物産業学部(網走)、北見工大を含む全国二十四大学が計約百品目を販売する。
大学ブランド食品は、国立大の独立法人化に伴う研究費減や、少子化時代の大学生き残り競争などを背景に近年急増。また、食品偽装が相次ぐなか、大学の名を冠した商品は消費者の信頼感を高め、市場の注目も集めている。
(略)北大大学院水産科学研究院は「がごめコンブ」入りカレーパンやラーメンなどの加工食品、藤女子大は発泡酒やハンバーガー、北見工大はハマナスのハーブティー、東農大生物産業学部は道産エミュー卵、小麦、牛乳で作ったどら焼きやクッキーなどを出品する。
このほか、北里大学獣医学部は八雲牧場(渡島管内八雲町)で育てた「北里八雲牛」の加工食品を、世界最高水準の水産養殖技術を誇る近畿大は「クエなべ」セット、新潟大は純米吟醸酒などを販売する。
佐々木さんは「消費者は各大学の研究成果を通じて食を考える機会に、大学にとっては研究のモチベーションを向上させる場になってほしい」と期待する。

(上記記事より)

最近、大学発の食品の話題が、メディアでよく報じられます。なんとなくお酒が多い気がしていましたが、こうして見ると色々ありますね。
24大学、100品目ですから、それなりににぎやかになりそうです。

開催機関は2/16(土)~2/20(水)だそうですから、首都圏にお住まいの方は、新宿に立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
高校生向け進学説明会など、大学がずらりとブースを構えるイベントはたくさんありますが、食品を売っているとなると、また違った面白さがあるかも知れませんよ。

【学生の作品、価値を評価される。】
■「オークションで芸術家の卵育て 4大学18人出品」(京都新聞)

京都の芸術系大学で学ぶ学生をオークションを通じて支援する「京都学生アートオークション」(大学コンソーシアム京都主催)が17日に、JR京都駅前のキャンパスプラザ京都(京都市下京区)で開かれる。2回目となる今回は、4大学18人が出品、12日から同プラザで作品のプレビューが行われる。
作家として作品のアピールや売り出し方を体験してもらうとともに、若手作家を育てる市場を広げるのが狙い。日本初の開催だった昨年は、出品77点すべてが落札(総額約516万円、最高96万円)されるなど大きな反響を呼び、東京でも今月に企業主催で学生と若手作家のアートオークションが開催されるという。
今回は京都嵯峨芸術大、京都造形芸術大、京都市立芸術大、京都教育大の学生と大学院生が、日本画や版画、スケッチ、オブジェ、電子回路を用いた立体作品などを出品する。
オークションは17日午後3時から。学生による作品のプレゼンテーションのあと、世界的なオークション会社サザビーズ日本法人社長として活躍した柴山哲治さん(京都造形芸術大客員教授)が進める。プレビュー期間中も会場で学生が作品説明を行う。
柴山さんは「才能があっても若手作家が市場に出て行けないのが日本の現状。芸術は将来の日本の基幹産業の一つであるべきで、大きな損失。学生と語り合い、作品を買うことで支援してもらいたい」と話している。
(上記記事より)

詳細は以下のwebサイトで。
出品作品目録も、写真付きで見ることができます。

■京都学生アートオークション(芸術系大学作品展関連企画)

昨年も同じニュースを見て、「おもしろいなぁ」と思ったのですが、今年も行われるようです。
前回の最高落札価格は、96万円。
どんなジャンルのどんな作品だったかはわからないので、これが高いのか安いのかはわかりかねますが、学生のうちに「自分の制作物に96万円も払ってくれる人がいる」という体験をしたら、少なくとも自信はつくんじゃないでしょうか。

厳しい結果が出る場合もあるということも含め、芸術家養成のための教育として、いい試みだと思います。社会の中に、芸術活動を認知させることにもつながりそうですし。
サザビーズで活躍していた大学教授がオークションを進めるというのも、本格的でいいですよね。読んだだけでわくわくします。

【大学院で留学生が急増。】
■「留学生9400人が学位 大学院、5年で86%増」(MSN産経ニュース)

日本の大学院に在籍した留学生のうち平成18年度に修士号や博士号の学位を取得したのは計9446人に上り、13年度からの5年で86%増えたことが2日、日本学生支援機構の調査で分かった。
専門職大学院の修了者に与えられる専門職学位も、法科大学院の修了者を含め141人が取得した。
日本の大学院で学ぶ留学生は年々増加し、19年度は3万1592人と過去最高を記録。機構は「中教審が15年に留学生の積極的な受け入れを提言して以降、各大学院が制度を充実させてきたことが背景にあるのではないか」と分析している。
調査によると、18年度に修士号を取得した留学生は6900人で、84%が2年の標準年限内で取得した。専攻別では政治学や経済学など社会科学が2637人と最も多く、工学、人文科学、教育が続いた。
(上記記事より)

大学院生全体の数が10年ほど前と比べて大きく増えている、ということはしばしば報道されますが、その中で、留学生の数も増えています。

ただ、記事の続きには、

機構は留学生の進路状況も調査。18年度に修士課程を修了した留学生の62%が日本国内での就職や進学を選択、出身国・地域に戻ったのは27%だった。一方、博士課程の場合、日本国内に残ったのは36%だったのに対し、47%が出身国・地域で仕事に就いたり、研究を続けたりした。
(上記記事より)

という記述も。
この急増が、日本の大学院の教育カリキュラムや研究実績によるものなのか、それとも日本企業での就職に魅力を感じた結果なのかは、この記事からだけでは何とも言えません。

以上、今週のニュースクリップでした。

たまにはちょっとだけ宣伝を。
2/11(祝・月)、つまり皆様がこの記事を読んでいる当日ですが、夜19:00から↓こんなテレビ番組が放映されます。

■【「スーパー フューチャー プログラム」を密着取材したTV番組が放映されます!】

早稲田大学第12代総長の西原春夫先生と、早稲田塾が共同で取り組んだ、「スーパー フューチャー プログラム」。その目的は、歴史を読み解く力を持ったリーダーの養成。

そんなプログラムに密着取材して制作された番組が、「BS-i」で放映されます。
詳細は上記のリンク先をご覧ください。

学校指導要領に制限されない「塾」という機関だからこそ可能な、柔軟な教育の形。
高校生の段階で、社会が行ってあげられる教育のカリキュラムとしては、これが最前線だと言える事例のひとつだと思います。
よろしければ、ご覧ください。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。