マイスターです。
安倍内閣が進める教育改革。その中でも最近では、大学・大学院の改革に焦点が当てられています。
大学改革についての新しいアイディアが、続々と出てくる日々です。
そんなわけで、今日は↓こんな案が報道されています。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「大学交付金、『教育と研究に区分を』 規制改革会議」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/politics/update/0502/TKY200705020373.html
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教育改革の焦点となっている大学・大学院改革で、政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は、運営にかかわる交付金を「教育目的」に一元化し、研究への助成は成果に応じた配分とするよう求める意見書をまとめた。公費の支出目的を教育と研究に明確に区分したうえで、競争原理の導入をめざす狙いだ。近く、政府の教育再生会議や文部科学省などに提出する。
意見書では、「教育」に必要な経費と「研究」に対する助成の区分があいまいな国立大学法人運営費交付金(年間約1兆2000億円)などの配分方法の見直しを求める。「国が一部の専門家の評価に基づき評価し、配分する仕組みはとるべきでない」と記し、文科省の裁量による予算配分をなくすための具体策を示している。
運営費交付金は教職員数などに応じて配分されている。意見書では、これを教育目的の公費として「学生数に応じて配分額を決定」と明記。民間機関による教育内容の評価を踏まえて学生の人気が高いところに、重点配分されることになる。同時に学生の定員数を学校側の判断で決められる制度を設ける必要性も指摘している。
研究目的の公費は、民間学術団体などが研究成果を評価し、それに基づいて研究者個人やチームを対象に配分するよう求める。学校の「格」よりも研究の「成果」に審査基準を定める形だ。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
なかなか大胆な案です。そして、内容は非常に合理的で明快です。
予算関係は専門的な内容を含みますので、マイスターは文字通りの解釈しかできませんが、上記の内容を文字通りに受け取ると、
・学生が多い大学ほど交付金の額が大きくなる。
学生が少ない大学は、交付金はあまりもらえない。
・研究で実績を上げられずにいると、研究費は出ない。
小規模大学でも、実績を上げれば研究費はガンガン出るが、
大規模大学でも実績を上げられなければ研究費は出ない。
……ということになります。
実際には、もうちょっと複雑な仕組みがあれこれ組み込まれるのかもしれませんが、大まかに言えばこういうことです。
(違っていましたら、どなたかご指摘ください)
そして、原則として
教育のための費用は大学単位、
研究のための費用は個人、またはチーム単位、
ということになります。
本当にこれを字面通りにやったら、大学に所属しているというだけでは研究できない、みたいなことになります。
そして、大学から教員に対して支払われている給料は、100%、教育活動に対する対価だということになるわけです。
困ることも少なからず出てきそうです。
研究の評価方法を工夫しないと、
「実学的、応用的な内容は研究費を集められるが、基礎科学の分野は研究費を集めにくく、廃れてしまう」
という、よく指摘されている問題が出てきます。
ですから実際には、大学単位で研究費をある程度プールし、基礎研究費として配分するような独自の仕組みを作る大学も出てくるでしょう。
また、教育のための交付金は学生数次第とのことですが、そうなると当然、できるだけ学生数を増やした方がいいという発想になります。
実際、記事には
同時に学生の定員数を学校側の判断で決められる制度を設ける必要性も指摘している。
という記述もあります。
ただ、定員を増やして人数を集めればいい教育ができるのかというと、そう単純でもなかったりしますから、やっかいです。
……などなど、ちょっと考えただけでも、解決法を考えないといけない点がいくつか思い浮かびます。
課題もありそうなものの、でも個人的には、こういう合理的な考え方は割と好きです。
大学を巡る交付金や助成金には、どういう考え方の元にお金が配分され、それがどのように使われているか、わかりにくいことが多いように思います。
「大学の規模」をもとに算出されたお金が、大学のサイズとは全然関係ない、個別の研究のために集中的に使われていたりすることもあるでしょう。
それを明快に整理し、国民に提示できるようにするのは、必要です。
教育再生会議では今、高等教育に対する予算の増額が議論されていると聞きます。
それならばなおさら、これからは支給額の内訳や使い途について、明快に説明できるようにするべきではないかと、個人的には思います。
教育費と研究費を分けるという大枠自体は、試しに検討されていい内容なのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
さて、いったいこの案、これからどうなるでしょうか。
以上、マイスターでした。